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ムスコと私
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どういう理屈でできるようになったのか知らないが、私が十代の頃にはちんこを自分の身体から外すことができるようになった。
私だけではない。全人類が、だ。
友人のドイツ人は毛を剃りやすくなって便利になったと言っていた。
医療や介護の現場でも便利になった。ダダ漏れするちんこはトイレに並べておいて管理をすれば良い。
新しい事にはなにかと保守的なご老人たちはちんこを外す事に不快感を示すが、便利なものごとというのはいつしか世間の常識になるものだ。
スポーツの世界では外す事が一般的になった。試合中についていない方が不幸な事故が起きづらいし、なにより動きやすい。
ちんこのポジションに納得しなくて競技に集中しづらいということも無くなった。
男にとっては暮らしやすい時代とも言える。
いまやちんこをぶら下げたまま外出するような男は少数派となった。わざわざぶら下げたまま外に出る男は、大きさでも誇示したいのだろう。
しかし並のものしか持っていない男はだいたい家に置いていく。持ちものが減るし、排泄の手間も省けるし、大切なものは大事にしまっておくものだろう。
盗んだりいたずらされることが気になるのであれば、鍵付けの専用ケースに入れておけば問題ない。
だが、変化というものは良い側面ばかりじゃない。
今日も何事も無く仕事を終え一杯飲んでいたら、なかなか魅力的な女性と盛り上がった。私への印象も悪く無さそうに思える。
うまくいけばどこかで休憩ということもできそうなのだが、おあいにくというかいつも通りと言うべきか、私は自分のちんこを自分の部屋のトイレに置いて仕事に出かけていた。仕事で使わないものを普段から持ち歩いたりしないからだ。
数十分の移動は彼女の気持ちを冷めさせるし、ましてや初めて会った男の部屋について行く程の熱量でも無い。
また飲みたいからと連絡先を交換したが実際にもう一度会う事は無いだろうと思っている。連絡も数回往復したら途切れるだろう。
今日の彼女の気分と私への印象というのは、お酒が入っている今、この瞬間限りのものなのだ。明日には私の鼻のかたちも服装も忘れられている。
オールドファッションであることを良しとは言わない。しかし新しい物事というものは、なにかを失うことでもあるのだと思う。
ついさっきの、あまり無いような特別な出会いみたいに。
自室のトイレで排泄しづらい形態をとっているもう一人の私も同じ思いだ。
私だけではない。全人類が、だ。
友人のドイツ人は毛を剃りやすくなって便利になったと言っていた。
医療や介護の現場でも便利になった。ダダ漏れするちんこはトイレに並べておいて管理をすれば良い。
新しい事にはなにかと保守的なご老人たちはちんこを外す事に不快感を示すが、便利なものごとというのはいつしか世間の常識になるものだ。
スポーツの世界では外す事が一般的になった。試合中についていない方が不幸な事故が起きづらいし、なにより動きやすい。
ちんこのポジションに納得しなくて競技に集中しづらいということも無くなった。
男にとっては暮らしやすい時代とも言える。
いまやちんこをぶら下げたまま外出するような男は少数派となった。わざわざぶら下げたまま外に出る男は、大きさでも誇示したいのだろう。
しかし並のものしか持っていない男はだいたい家に置いていく。持ちものが減るし、排泄の手間も省けるし、大切なものは大事にしまっておくものだろう。
盗んだりいたずらされることが気になるのであれば、鍵付けの専用ケースに入れておけば問題ない。
だが、変化というものは良い側面ばかりじゃない。
今日も何事も無く仕事を終え一杯飲んでいたら、なかなか魅力的な女性と盛り上がった。私への印象も悪く無さそうに思える。
うまくいけばどこかで休憩ということもできそうなのだが、おあいにくというかいつも通りと言うべきか、私は自分のちんこを自分の部屋のトイレに置いて仕事に出かけていた。仕事で使わないものを普段から持ち歩いたりしないからだ。
数十分の移動は彼女の気持ちを冷めさせるし、ましてや初めて会った男の部屋について行く程の熱量でも無い。
また飲みたいからと連絡先を交換したが実際にもう一度会う事は無いだろうと思っている。連絡も数回往復したら途切れるだろう。
今日の彼女の気分と私への印象というのは、お酒が入っている今、この瞬間限りのものなのだ。明日には私の鼻のかたちも服装も忘れられている。
オールドファッションであることを良しとは言わない。しかし新しい物事というものは、なにかを失うことでもあるのだと思う。
ついさっきの、あまり無いような特別な出会いみたいに。
自室のトイレで排泄しづらい形態をとっているもう一人の私も同じ思いだ。
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