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第11章
ビーチバレー
しおりを挟む「最初はっ、とんでもない子が来たなぉあ!?……って、思った………っぞ!」
「あはは………よっと!あれは、自分でもやっちゃったなぁ、とは思ってますぅ………」
両手をそろえて構えたイナリの腕に当たって弾き上がり、ボールは中央のネットを越え俺のコートに入った。
慌てて落下地点になりそうなコートの手前端に滑り込み、ギリギリでレシーブ。
あ、あぶねぇ………。
苦笑いしながら恥ずかしがってるかと思いきや、ちゃっかり上手い場所を狙ってきた。
精神的な攻撃をしてみようと画作してみたが、どうやら効果は無かったらしい。
現在、俺とイナリは絶賛ビーチバレーで勝負中だ。
勝った方にはご褒美を、負けた方には罰ゲームが待っているガチンコ試合。
ここはぜひとも勝ちたいところ。
負けられない戦いがここにある…………と言いたいが、スコアを見て分かる通り、八対二(先に十点取った方が勝ち)ともはや瀕死に近い状態となっていた。
「スマッシュ!ですぅ!」
「ぐはぁ!?」
ちょうど空いたコートの後ろ角にボールが叩き込まれ、また点を取られた。
前後に揺さぶってからの見事なスマッシュである。
おかしいな、イナリはバレーの存在自体をついさっき知ったばかりのはずなんだけど………。
もう既にルールだけでなく、打ち方や勝ち方まで理解していらっしゃる?
さすがフィジカルモンスター。
前世でちょっとかじった程度の俺なんて意に返さずボコボコにしてくる。
まさかもうマッチポイントになるとは。
…………だが聞いて欲しい。
こんな惨状になったのには訳があるんだって。
イナリがボールを追いかけて跳び回る度に、その大きな果実が揺れまくって嫌でも視線が引かれてしまうのだ。
何度ボールに集中しようとも、気づけば視線を持ってかれてた。
そのせいで、先程からまともにボールが取れなかったり打てなかったりで散々。
あれは色々な意味で魔性の凶器だ。
「あっ、ご主人様!?」
「え─────」
突然聞こえたイナリの驚き声で我に返った次の瞬間、もはや回避不能の位置まで迫った何かが視界を覆う。
全体が見えなくても模様で分かる。
俺が用意した弾性バッチリのバレーボールだ。
バチーーンッ!
「ぐあっ!?」
言ったそばから顔面にダイレクトアタック。
思いっきり仰け反って倒れる傍ら、スローモーションのようにボールが弾き飛んでいくのが見えた。
ドサッとぶっ倒れた俺の横で、何回かバウンドしたボールは静かに動きを止める。
ギャグ漫画だったら顔面から白煙が上がっていることだろう。
これ、顔面凹んでないよね……?
めっちゃジンジンする。
「ご、ご主人様!大丈夫ですか!?」
「うん………適切なバチすぎてむしろ心が痛い……………」
「………?」
ぐふっ、その純粋無垢な瞳が胸に突き刺さる。
すまんイナリ、俺は心配してもらうに値しない煩悩の塊なんだ………。
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