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第8章

冒険者達が来た

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「あっつ……………」
「うぅ………なんなのよこの熱さ………」
「ん……………」


月日は過ぎ、空から降り注ぐ日差しが強くなってきた今日この頃。
春の穏やかな陽気とは打って変わって、身を焼くような暑さがムンムンと漂っていた。

マジでここ最近、一気に暑くなったな…………。
まあ夏に差し掛かってるから当たり前と言えば当たり前なんだけど、まさかこんなにだとは。
そりゃ前世で感じた暑さよりはマシだが、それでもやっぱり熱いものは熱い。


「プラムの背中、冷たくて気持ちいいな~………」
『クルゥ~…………』


俺はうつ伏せに寝っ転がったまま、下で同じように丸くなったプラトスと同時に気の抜けた声を出す。
どうやら先程まで水浴びをしていたらしく、まだひんやりと冷気を保ったプラトスの肌が実に気持ちいい。
あ~、このままずっとここで寝てたい。

ちなみに"プラム"と言うのは、俺が拾ってきたプラトス達のうちの一体に付けた名前である。
この前小屋が完成した時についでに三体とも名前をつけた。
いつまでもプラトス呼びだと分かりずらいし、名前で呼んだ方が嬉しいだろうからね。

実は名前をつける際に〈鑑定〉でだと判明したプラトス達。
まず、長女だが他の二人とは一回りサイズが小さくのんびりした"プラム"。

次に次女で、一番元気かつ天真爛漫な"フラン"。
この性格だからか走るのが一番早い。

そして最後に末っ子の"モモカ"。
姉妹が色々な意味で自由気ままな上に、真面目な性格が祟って苦労人(?)な子だ。


それぞれが俺とクロ、ミリアを乗せて日陰で気持ちよさそうに涼んでいる。
この子達、本当に仲が良くていつも三体で遊んでるんだよね。
寝る時も固まって丸くなって寝てるし。
見てて凄く微笑ましい。
やはり種族は違っても兄弟姉妹の絆に違いはないらしい。


「う~む、こんな日はかき氷でも食べたいな~………」


話を戻すが、そんなプラム達の背中でひんやり癒されていても、やはり暑さを完全には誤魔化しきれなかった。
もちろんクーラーなんて文明の利器は異世界には無いので、完璧に涼しさを保つ事なんて不可能だし、むしろこんだけ涼しかったら十分だ。

駄菓子菓子だがしかし
より快適な空間を求めてしまうのは人間のさが
思わずそんな欲望が口から出た。


「かき氷?」
「あ、そっか。こっちの世界には無いもんな」


ピンと来ていない様子のクロとミリアに、かき氷について大雑把に説明する。
暑い日に食べる、氷を細かく砕いて山盛りにした冷たい食べ物。
色々な味のシロップ………………だと分からないか。
味のついた水?をかけて食べる、など。

思いつく限りかき氷の特徴を上げていく。
ううむ、毎回こんな感じで説明する時に思うんだけど、普段身近なものを言語化して説明しようと思うと意外と難しいよね。
やはりと言うか、あまり氷を食べる文化が無いこっちの世界の住民である二人には理解し難いようだ。


「氷を薄くスライスって…………そのままじゃダメなの?」
「そもそも氷、美味しくない」


ぐっ、この伝わらない時のもどかしさよ!
そういやアイスも見かけなかったし、氷菓子自体が珍しいと言うか無いのかもな。
今度作ってみようかな…………。
実際に作って食べてもらえば、きっと俺が言っていることも分かるはずだ。
ちょっとアイスクリームに関しては文明の利器が欲しいので、作るなら手頃なかき氷からになりそうだが。


「ご主人様ーー!」
「ん?どうしたー?」


家の方から聞こえてきた声で振り返ると、玄関の前でこちらに手を振るアイリスを見つけた。
何やら横には見慣れない顔の冒険者らしき人達が四人居た。


「こちらの方々が、ご主人様と手合わせをしたいそうです~!」
「分かった、すぐ行く!」


どうやら他の街か村から来た冒険者らしい。
このように、俺の家には時々腕に覚えのある冒険者が手合わせをしに訪ねに来ることがある。
だいたいは"草原の剣聖"の噂を耳にした人達で、今までで言うとほとんどがAランクかSランクだった。
たまにSSランクだったり、逆にBランク以下の人も来るけど……………基本はそのくらいかな。
最近の冒険者達は向上心があっておじさんは嬉しいよ、うん。

プラトスの上から降り、何やら興味があるらしいミリアを連れてアイリスと冒険者達が待つ家の方に向かう。
改めてアイリスにお礼を言ってから、冒険者達の方を向いて話を聞いた。

やはり予想通り手合わせのお願いだった。
特にやらなきゃ行けないことも無かったので、そのまま快く引き受けた。



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