ザ・兄貴っ！

あの子を引き取りに来たんです

『綾が死んだときの… 精神的なショックと、麻薬と同じ成分を持つ脱法の植物の影響が大きかったのだと… そう医者は言っていました。

だから、あの子は三日に一度、薬を飲ませています。あの日の放火を連想させる赤いモノを見たとき、あの子は… 。

薬を渡していたのですが、そろそろ薬が切れる頃かと思いまして此処へ来たんですが…


どうやら、遅かったようです』



『………というと…？』

恐る恐る訊く副会長に山田の父は困惑した表情でーー


『赤いモノを見てしまったのかと…。でなければ、このような状況に置かれることは――… ふぅ… しかし、これでよかったのかもしれません』

『………え？』

『僕はあの子を引き取りに此処へ来たのです』


困惑した表情から真剣な表情に変える山田の父に副会長は驚きを隠せない


『!?ど、どうして…

そんないきなりっ！？ 椿 遥は反対するんじゃ…』


『…反対するでしょう。しかし、遥に止める権利はありません。薬が切れたとはいえ、早々に奈桜に症状が出ることはないんです。

…… 恐らく、奈桜自身も気付いてないのでしょう。深く深く自身が傷ついてることに… まだ、その傷が癒えていないことに。


あの日を連想させる赤はあの子にとってタブーだったんです。

……… だから、あの子を引き取った僕はずっと側に置いておくつもりでした。ですが、渚君が――……


いえ、まぁ… それで、あの子をこの学園へ入れたのですが、この状況で言うのもあれですが… 今日 来てよかったと思います。遥と哲弥がこの学園にいると最初から知っていたら、あの子をこの学園に入れることもなかったのですが』

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