ザ・兄貴っ！

それは… 過去の忌まわしき惨劇

『…？ 離婚したのが山田のため…？』


意味がわからないと首を傾げる副会長に山田の父はうっすら微笑む‥

『――… まだあの子達が幼かった頃の話です。

あの子達には妹がいました』

え――… ？


『妹… ですか？』

山田や椿に妹がいるという話を聞いたことがない副会長は訝しげに顔をしかめる。


『名前は… 綾(アヤ)。… 従兄弟である哲弥も含めてあの子達はいつも一緒に遊んでいました。

そして… 綾は渚の恋人でした。…幼いながらもあの二人は… 。奈桜や遥、哲弥も本当に綾を可愛がっていました。


しかし、幸せは長く続きませんでした。』


悲しげに影を落とす山田の父に副会長は先を促すように無言のまま、その目は山田の父に向けられている‥

『その頃から奈桜は奴らに狙われるようになりました… あの子の才能を買って。

ですが、僕は世界中を飛び回っていたので雇った護衛に任せていたのが、まさか、あのようなことになるなど…』


涙をつー…と流す山田の父は悲しげに目を伏せる



『…奴ら？』

さっぱりわからないと困惑になる副会長を余所にさらに山田の父は話を続ける-


『……そして、あの日…

遥と哲弥、渚が買い出しに出掛けた隙を狙って、奴らは家を‥ 放火したんです』


『えっ…!?』

『混乱に生じて奈桜を攫うつもりだったんでしょう… ですが、いち早く気づいた護衛… ボディーガードにより奈桜は無事でした。

ですが――…』


   "ですが…"という言葉に副会長も、まさかっ!と顔をしかめた。