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- 其の日常が終わりを告げる時 -

弟秘書の提案と激昂する弟

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「ええ、それはつまり… バグによって思考を汚染されたアリスが管理する【ALIS WORLD】にこちら側から誰かが入ることを条件とした提案ですね」

「そんな、危険なことを承知できるか…!」

「しかし、社長…!今の状況では佐伯さんの話が一番、被害とそれに掛かるコストを抑えられるのではないでしょうか?この件は何れ今回の被害者にまわす賠償金にも関わって来ますし、今後の会社存続にも少なからず影響が…」


社員の男の人が佐伯さんの考えに賛同する。それでも尚、納得いかない弟はその端正な顔立ちを歪めた。

……それにしても、やっぱり引っかかる。そもそもこの件は…


流唯ルイさま、お願いできますか?」

唐突に弟の秘書の佐伯さんに声をかけられて、反応が少し遅れてしまう

「──…え、っ?」

「ですから、流唯さまは先ほど私が申しました提案に異はないと捉えていいのですよね?社長はこの提案に異があるようなので、流唯さまが対応して頂けませんかと言っているんです」


……ぅん?なんか、言葉に棘があるよね?別に構わないけど。そんなに僕が嫌いだったんだ… 

「え、ちょ… !佐伯さんッ!?」

困惑を見せる僕、そして、すぐに答えない僕に淡々と… しかし、そこに苛立ちを見せる佐伯さんに社員の男の人が『えっ』と狼狽した。 


「どういうことだ!自分が何を言っているのか、わかって言っているのか!?佐伯っつ!!!」


佐伯さんの言葉に酷く激昂する弟に社員の男の人は可哀想に顔面蒼白になっていて、かく言う佐伯さん本人はというとしれっとした毅然とした態度だ。……まあ、僕を過保護に心配する弟のことだから、激昂を受けることくらいわかっていただろうに… 

(なんで、悠を怒らせるとわかっていて、嫌われるようなことを言うのか… 理解できないな。それも、あの誰よりも完璧な佐伯さんが… )


気づかないはずないのに、と小さく息を吐いて肩を竦める。まあ、…お陰で助かったけど。過保護で心配性な弟が僕がこの案件を預かるって言ったって反対するに決まってる。だから、会社の人間が僕を、と言ってくれたおかげで少々強引でも押し通すことが出来る。でも……

チラッと佐伯さんを盗み見る。あの・・佐伯さんが、ってところに引っ掛かりを感じるのは確かで、まさか僕の意図に気付いて助け舟のつもりでわざと悠に対して嫌われ役を買って出てくれた…?

(……なわけないか)

頭を横に振って考えを否定する。いや、それはないか。だって、僕、佐伯さんから嫌われてるし。

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