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プロローグ
『ただならぬ焦燥感と既視感』
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「うーん。ゲームの説明って言われても… 俺、5歳児なんだけど」
「中身の年齢は違うでしょう?なにを今さら…」
「うーん… っていうか、ゲームを説明しろって難しくない??大雑把に説明すると、架空のゲームなんだよ」
それはさすがに大雑把過ぎるでしょう… と促せば、弟は頭を悩ませる。
「もうざっくり説明すると、電子機器を使って架空の世界のキャラクターに成りきって、その世界を擬似体験するようなものって思ってくれたらいいんだけど。大体の説明はこれで合ってるはずだよ?」
「この世界は… 『麗しき騎士達と憩いの薔薇-』っていう乙女ゲームの世界で城から異世界召喚を受けた転生者が勇者となって、イケメンの騎士達と恋を育みながら…」
途中から音が、声が聞こえなくなる───。
『もうすぐ、もうすぐよ…』
『やっと、私の願望が叶うのよ!あと少しで!!』
聞き覚えのないキィーキィーと騒ぐ声が煩わしく聞こえる。
『あなたもこの私の役に立てるのよ?光栄に思いなさい!!この世界は全て私のために在るのだから!うふふっ』
視界に入るは金髪の美女。誰もが綺麗だと可愛いと思われる容姿、けれどその姿にも嫌悪感を抱く───。
「ぉ、ぉ… ぉにぃちゃぁぁん!!!ひっく、やだよぅ!僕を置いてかないでよぉ!!にいちゃん…ッ 兄ちゃんんっっっ!!!」
泣き喚く小さな子供の声がする。彼女は目に入るのも不快だったのに。不思議と… 悲痛に泣き喚くその男の子には全く苛立ちを感じなかった。
だけど、何故だろう?
あそこで泣き喚く小さな男の子に初めて会う気がしないのは…。
泣くな、そう一言告げたいだけなのにその声は届かない。伸ばしかけた手も… 空を切る。それはあまりに残酷な現実で。
赤いサイレンがくるくると回り周囲を照らす。
そこには泣き喚く男の子が必死に手を握って呼びかける… 少年がいて、だらりと力無くぶら下がる腕からは赤い血が伝って… ポタッポタッ!と下に赤い水溜りを作っていた。
『あなたも馬鹿よねぇ、人間の子供なんかに情を入れるばかりか、あの子を庇って死ぬんだもの… 』
不快な声だけが、頭に響き渡った。
────────
───…
「───ちゃんッ!にいちゃん…ッッ!!!目を覚ましてよっ!兄ちゃん…っ また、また…ッ僕を置いてくの…っ?」
「――っそんなわけないでしょう!まったく、またも何も、一体なにを言っているんですか」
心配そうに声をかけるハイドを手で制し、ずびびび…っと鼻水を吸う弟に眉を少し吊り上げる。まったく、何なんですか。今の映像といい、弟といい…。
「私は私です。…それから、少し目眩がしただけなので問題ありません。わかったら、その顔面をどうにかしなさい。見るに耐えません」
男の子が泣いてどうするんですかと窘めれば、弟は… 『だって、』と小さく漏らした。
「また、兄ちゃんが…」
首を横に傾げる。
「?一体何なんですかさっきから。私がどうかしたんですか?」
夢の中の男の子と弟の声が… 少し重なるように感じた。けれども、きっと気のせいだと思って頭を振る。
「んーん… 何でもないよ」
それは少し悲しげで、
そんな弟の表情に何故だか、既視感を覚えた。
「リ…」
伸ばした手は空を切って、
「リル…?」
「ごめん、ちょっと疲れちゃったから部屋で休むね」
一言、一言… 告げる度に傷つき、悲しげに見つめる弟に… どうしようもない焦燥感を感じた。
「中身の年齢は違うでしょう?なにを今さら…」
「うーん… っていうか、ゲームを説明しろって難しくない??大雑把に説明すると、架空のゲームなんだよ」
それはさすがに大雑把過ぎるでしょう… と促せば、弟は頭を悩ませる。
「もうざっくり説明すると、電子機器を使って架空の世界のキャラクターに成りきって、その世界を擬似体験するようなものって思ってくれたらいいんだけど。大体の説明はこれで合ってるはずだよ?」
「この世界は… 『麗しき騎士達と憩いの薔薇-』っていう乙女ゲームの世界で城から異世界召喚を受けた転生者が勇者となって、イケメンの騎士達と恋を育みながら…」
途中から音が、声が聞こえなくなる───。
『もうすぐ、もうすぐよ…』
『やっと、私の願望が叶うのよ!あと少しで!!』
聞き覚えのないキィーキィーと騒ぐ声が煩わしく聞こえる。
『あなたもこの私の役に立てるのよ?光栄に思いなさい!!この世界は全て私のために在るのだから!うふふっ』
視界に入るは金髪の美女。誰もが綺麗だと可愛いと思われる容姿、けれどその姿にも嫌悪感を抱く───。
「ぉ、ぉ… ぉにぃちゃぁぁん!!!ひっく、やだよぅ!僕を置いてかないでよぉ!!にいちゃん…ッ 兄ちゃんんっっっ!!!」
泣き喚く小さな子供の声がする。彼女は目に入るのも不快だったのに。不思議と… 悲痛に泣き喚くその男の子には全く苛立ちを感じなかった。
だけど、何故だろう?
あそこで泣き喚く小さな男の子に初めて会う気がしないのは…。
泣くな、そう一言告げたいだけなのにその声は届かない。伸ばしかけた手も… 空を切る。それはあまりに残酷な現実で。
赤いサイレンがくるくると回り周囲を照らす。
そこには泣き喚く男の子が必死に手を握って呼びかける… 少年がいて、だらりと力無くぶら下がる腕からは赤い血が伝って… ポタッポタッ!と下に赤い水溜りを作っていた。
『あなたも馬鹿よねぇ、人間の子供なんかに情を入れるばかりか、あの子を庇って死ぬんだもの… 』
不快な声だけが、頭に響き渡った。
────────
───…
「───ちゃんッ!にいちゃん…ッッ!!!目を覚ましてよっ!兄ちゃん…っ また、また…ッ僕を置いてくの…っ?」
「――っそんなわけないでしょう!まったく、またも何も、一体なにを言っているんですか」
心配そうに声をかけるハイドを手で制し、ずびびび…っと鼻水を吸う弟に眉を少し吊り上げる。まったく、何なんですか。今の映像といい、弟といい…。
「私は私です。…それから、少し目眩がしただけなので問題ありません。わかったら、その顔面をどうにかしなさい。見るに耐えません」
男の子が泣いてどうするんですかと窘めれば、弟は… 『だって、』と小さく漏らした。
「また、兄ちゃんが…」
首を横に傾げる。
「?一体何なんですかさっきから。私がどうかしたんですか?」
夢の中の男の子と弟の声が… 少し重なるように感じた。けれども、きっと気のせいだと思って頭を振る。
「んーん… 何でもないよ」
それは少し悲しげで、
そんな弟の表情に何故だか、既視感を覚えた。
「リ…」
伸ばした手は空を切って、
「リル…?」
「ごめん、ちょっと疲れちゃったから部屋で休むね」
一言、一言… 告げる度に傷つき、悲しげに見つめる弟に… どうしようもない焦燥感を感じた。
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