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- 陰の王国と廻りだす歯車 -

『覚えた違和感と不安』

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「ふわぁ… ぁふっ」

ユサユサと揺さぶられて、何かに起こされた僕は寝惚け眼で目を摩る… 

プニッ。

頬に当たる黒い小さな手。

   プモッ!

『あ、やっと起きた!もうっ!いつまで寝てるのさ?とっくに陽は上がってるんだけど』

寝坊にも程があるでしょ、というバクに僕は首を傾げる。

……昨日、兄上の古き友人であり、従者のジークと会話を交わしていたのを覚えいますが、その交わした内容がどうしても思い出せない。それだけでなく、昨日いつ寝てしまったのかさえ、記憶が朧げで。

「僕は… 昨日、いつ寝てしまったんでしょうか?」

ジークとの会話も頭に霞が掛かったように断片的しか思い出せず、その内容さえも頭に入っていないことに不思議と首を傾げる。

 プモッ。

『気がついてたら、寝てたよ?』

    プギュゥ!

『あまり気にする必要ないと思うけど…。今のキミは… 誰から見ても小さな子供なんだから。それもまだ年端もいかない幼い子供。それは普通のことだと思うよ?』

ニコリ、と笑うバクの言葉に… 僕は疑うこともなく、ただそれを信じた。

「……そういうものなんでしょうか?」

プモッ。

『そういうものだよ』

そこで、バクの『今のキミは子供なんだから』という言葉に引っかかりを覚えて、首を傾げる。

  プギッ

『…ルティ?どうしたの??』

子供、その言葉が頭を占めていく…


自分の今までの行動を振り返って違和感を感じて、

「こ、ども…?」

プモッ

『ルティ?本当にどうしたの?さっきから… 少し様子が』

「バク…ッ!僕、僕は… 」

混乱する僕にバクは『大丈夫だから、落ち着いて。』と言って、その小さな手足で僕の頬に触れました。

「ぼく、僕…ッ おかしいんです!この世界に来てから…ッ!!確かに、この世界には不安しかありません。ですが、前にいた世界の僕は高校生で… 確かに、貧弱で根倉な性格でした。

で、でも!それでも… 

ここまで女々しくありませんでした!!小動物とか、小さな生き物とか確かに可愛いとは思いますけど、前の僕はそこまでバクみたいな小さな生き物を見ても撫で回したいとか、抱きつきたいという衝動に駆られることはなかったのに…っ

今の僕は寧ろ、それとは真逆にバクみたいな小さな生き物を撫でたい、抱きつきたいという衝動に駆られるんです… まるで、僕が僕自身じゃないようで…っ!前の僕を忘れるような感じがして… 怖いんです…ッ!」


そう、今の僕はバクを愛でたいという気持ちでいっぱいなのに、前の僕はそこまで小さな生き物を可愛がりたいという気持ちは持ち合わせていなかった。そのことに今さらながら気付いた僕は動揺のあまり、手で口を覆う。

  そんな僕を安心させるように、

バクは『よいしょ!』と呟いて僕の膝の上に乗ると、そのつぶらな瞳で僕を見上げて口を開いた。

  プモッ!

『それは仕方ないよ。だって、今のキミは誰もが見紛うことなく ” 子供 ” なんだから。前のキミは今よりも少し大人に近くて、まだ大人になりきれていない子供だった。

   だけどね、

それは… あくまで前の世界のキミなんだよ。
いい?此処にいる、今のキミはまだ大人になりきれてない… というより、幼子なんだ。確かに、魂をそのままこっちに連れて来たから、あまりキミ自身は実感が無いかもしれないけど。

前の世界では高校生だったキミだけど、その魂がこっちの世界に来て、今は『オーディット』という幼子として生きている。

    つまり、僕が言いたいのはね…

どんな魂も収まる器の大きさによって、性格だって順応されるんだ。そうじゃないと、精神に異常をきたしてしまう。今のキミも、それと同じ理由で、

今は幼い体に順応して、その年相応に魂が順応しているために、前の世界で高校生だったキミとはその人格が意図せず違ったりする。

     だけどね、

あくまで器に合わせているだけであって…

今はまだキミは幼いけど、体が成長するに連れて、その人格も本来の魂と同調するはずだから心配しなくていいよ。それに、今のキミは子供なんだから、精神年齢も子供っぽくても、何ら問題ないと思うけど』

首を傾げるバクに、

「そう、なんですね… 」

すみません、少し動揺してしまって。と口にすると、

『仕方ないよ。今のキミはそれだけ不安定なんだよ』

だから、とバクは続けた。
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