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- 陰の王国と廻りだす歯車 -
『冷酷王の悲しき過去』
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「くっくっ… いや、本当にアイツが心配する気持ちもわからなくもないな」
え?
不思議そうに見えたのかもしれない。ジークは僕の頭をぽんぽんと叩く。
「何がって?すぐに表情に出るな。…わかりやすくて結構だが、俺としては少し心配だ」
クシャリ、と撫でられて… 擽ったい気持ちを隠すように身を捩った。そんな行動さえも、ジークの目には微笑ましい光景としか映っていないことを僕が知るはずもありませんでした。
「…アイツも、今では冷酷王なんて ああ呼ばれるが、昔はそうでもなかったんだぞ?」
やや、言葉を置いて昔を振り返るジークはそのときのことを思い出してか、憂いた表情がより濃くなる。それが少し悲しげに見えて… あまり詮索するのは無粋なのかもしれない、そう感じた僕は止めようとしましたが、ジークは僕の意に気づいてか、ほくそ笑むと… また僕の頭をクシャクシャと撫でました。
「大丈夫だ」
「ジキルドもお前と同じで抱え込むタイプでな、そうだな… 昔は特に酷かった。王の正統なる後継者として生まれたときから厳しくそのレールに沿って育てられたジキルドは… 子供ながら甘えられる環境ではなかった。泣くことは許されず、王の後継者として、常に孤高さを求められた。
まあ、それが原因で今の『冷酷王』が誕生したわけだが、とにかく、その少々過激に出た部分がそこの言われになったんだが、そのことで前王妃と前国王陛下はその育て方の過ちに気付き、修復を試みた。
当然、そんな簡単に受け入れられる話じゃないが、早い段階だった故に仲がいいとは言えないが、一般の家族並みに会話を交わすくらいには家族の関係とジキルドの心の改善はできた。
その頃のジキルドは冷酷王と囁かれる一方、一人になったときはよく部屋に閉じこもっていた。泣いたかどうかは知らないが… 泣きたくても泣けない。それがあの頃のアイツを取り巻く環境だった」
今はそれ以前に酷薄な笑みで冷ややかに対応するだろうが昔はアイツもまだ若かったからな。今も若いが。と苦笑いするジークに僕はあれ?と首を傾げる。
「兄上は… 父上が病に伏せた後、国を立て直すのに それまで私腹を肥やしていた貴族や横領していた家臣を捕らえ、一掃したことで『冷酷王』と呼ばれるようになった、と僕は聞いていたのですが」
首を傾げる僕にジークはゆるりと首を横に振る…。
「それは後からのこじ付けに過ぎない。アイツが冷酷王と密かに呼ばれるようになったのは… アイツがまだお前ぐらいの小さな子供の頃のことだ」
今の僕ぐらいのとき…?
「アイツは… その頃、信頼していた唯一、気を許せた相手がいてな?そいつがジキルドの… 乳母だった。だが、その乳母は… 幼いジキルドを突然手にかけて… 殺そうとしたんだ」
え…?
驚愕に目を見開く僕にジークは『未遂で済んだが』と言葉を付け足した。
「だが、未遂とはいえ、幼いジキルドの心に大きな傷を付けるのには十分だった。赤子の頃からずっと側にいた人間が… 唯一自分を年相応の子供として甘やかしてくれる人間が… 全信頼を寄せていた相手に裏切られると誰が思う?
ジキルドは乳母に殺されかけたが、持ち前の反射神経で逆に手を掛けた。唯一の理解者を自ら手に掛けてしまったことと、全信頼を寄せていた人間の裏切りに… アイツはただ愕然としていた。血濡れた剣にまだ乾いていない血を滴らせながらーー。
幼いジキルドが心に深い傷を負うのにはそれは十分過ぎる出来事だった」
信頼を寄せていた乳母の裏切り… ジークから話を聞いた僕でも衝撃的なのに、当事者だった当時の兄上の心境を思うと… 苦しく感じた。
え?
不思議そうに見えたのかもしれない。ジークは僕の頭をぽんぽんと叩く。
「何がって?すぐに表情に出るな。…わかりやすくて結構だが、俺としては少し心配だ」
クシャリ、と撫でられて… 擽ったい気持ちを隠すように身を捩った。そんな行動さえも、ジークの目には微笑ましい光景としか映っていないことを僕が知るはずもありませんでした。
「…アイツも、今では冷酷王なんて ああ呼ばれるが、昔はそうでもなかったんだぞ?」
やや、言葉を置いて昔を振り返るジークはそのときのことを思い出してか、憂いた表情がより濃くなる。それが少し悲しげに見えて… あまり詮索するのは無粋なのかもしれない、そう感じた僕は止めようとしましたが、ジークは僕の意に気づいてか、ほくそ笑むと… また僕の頭をクシャクシャと撫でました。
「大丈夫だ」
「ジキルドもお前と同じで抱え込むタイプでな、そうだな… 昔は特に酷かった。王の正統なる後継者として生まれたときから厳しくそのレールに沿って育てられたジキルドは… 子供ながら甘えられる環境ではなかった。泣くことは許されず、王の後継者として、常に孤高さを求められた。
まあ、それが原因で今の『冷酷王』が誕生したわけだが、とにかく、その少々過激に出た部分がそこの言われになったんだが、そのことで前王妃と前国王陛下はその育て方の過ちに気付き、修復を試みた。
当然、そんな簡単に受け入れられる話じゃないが、早い段階だった故に仲がいいとは言えないが、一般の家族並みに会話を交わすくらいには家族の関係とジキルドの心の改善はできた。
その頃のジキルドは冷酷王と囁かれる一方、一人になったときはよく部屋に閉じこもっていた。泣いたかどうかは知らないが… 泣きたくても泣けない。それがあの頃のアイツを取り巻く環境だった」
今はそれ以前に酷薄な笑みで冷ややかに対応するだろうが昔はアイツもまだ若かったからな。今も若いが。と苦笑いするジークに僕はあれ?と首を傾げる。
「兄上は… 父上が病に伏せた後、国を立て直すのに それまで私腹を肥やしていた貴族や横領していた家臣を捕らえ、一掃したことで『冷酷王』と呼ばれるようになった、と僕は聞いていたのですが」
首を傾げる僕にジークはゆるりと首を横に振る…。
「それは後からのこじ付けに過ぎない。アイツが冷酷王と密かに呼ばれるようになったのは… アイツがまだお前ぐらいの小さな子供の頃のことだ」
今の僕ぐらいのとき…?
「アイツは… その頃、信頼していた唯一、気を許せた相手がいてな?そいつがジキルドの… 乳母だった。だが、その乳母は… 幼いジキルドを突然手にかけて… 殺そうとしたんだ」
え…?
驚愕に目を見開く僕にジークは『未遂で済んだが』と言葉を付け足した。
「だが、未遂とはいえ、幼いジキルドの心に大きな傷を付けるのには十分だった。赤子の頃からずっと側にいた人間が… 唯一自分を年相応の子供として甘やかしてくれる人間が… 全信頼を寄せていた相手に裏切られると誰が思う?
ジキルドは乳母に殺されかけたが、持ち前の反射神経で逆に手を掛けた。唯一の理解者を自ら手に掛けてしまったことと、全信頼を寄せていた人間の裏切りに… アイツはただ愕然としていた。血濡れた剣にまだ乾いていない血を滴らせながらーー。
幼いジキルドが心に深い傷を負うのにはそれは十分過ぎる出来事だった」
信頼を寄せていた乳母の裏切り… ジークから話を聞いた僕でも衝撃的なのに、当事者だった当時の兄上の心境を思うと… 苦しく感じた。
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