7 / 117
- 乙女ゲームの世界観と宿命 -
『 光と闇 迷い人の持つ力 』
しおりを挟む
『そう彼ら二人は小さな子供だった。だけど、彼ら二人は其々に、光と闇の力が備わっていた。彼ら二人は魔神と闇に支配された世界を見渡して、それから示し合わせたように互いに顔を見て頷くと、同時に両手を前に突き出したよ。
女の子からは明るく眩い光が。男の子からは淀みのない純粋な闇が… その身体を包み込んでいた。その身体からは内なる力が溢れて出ていた。眩い光が天を貫き、空を覆っていた闇の力を打ち消し、純粋なる闇は闇を持って制し、魔神の力を抑え込んだ。
――‥そして、激しい戦いの末に魔神の絶叫する声が轟き… 空には青々とした晴天が広がった。
種族を超え、皆で手を取り合って歓喜した。勝利の喜びを…。けれど、魔神に勝ったとは言え、封印が精一杯だった。彼らはまだ子供で力が不安定だったのがその一つでね。でもとにかく、この世界に平和が再び訪れたことは確かだった』
「それじゃあ、その二人の子供も元の世界に…」
戻ったんですか?そう聞いた僕にバクはゆるりと首を振って悲しげに微笑んだ。
『いや、帰したくても帰せなかった。思ったより、魔神があちこちに遺した傷跡が酷くてね。そしてそれはその当時の時空の歪みにも大きく影響を与えたんだ。時空の歪みによって迷い込んだ迷い人を帰すとき、時空の歪みに故郷への道を作ってそこを通って帰ってもらうんだけど、魔神が与えた影響で時空を使って帰郷させるのはとても危険だった。
酷く荒れていてね… 入ったら最後、どこの時代に飛ばされるか。いや、それならまだマシかもしれない。下手をすれば五体バラバラ… なんてこともあり得る話だったから』
そう言って肩を竦めるバクにずっと疑問に思っていたことを口にした。
「そういえば、この世界の神では魔神に対抗できなかったんですか?」
だけど、そのとき見たバクの表情は… 後悔と悲しみ、いろいろ混ざり合ったような思いつめた表情をしてしていた。
『魔神バルディモスは… 元はこの世界の神だったんだ』
・・・え?
『魔神とはね、魔の神と書くだろ?文字通り、魔神は… 魔に堕ちた神のことを指すんだ。そしてキミが今言ったよね?この世界の神ではどうにもならなかったのかって。そのときの魔神バルディモスが当時のこの世界の神だったんだ。バルディモスは… 力の使い方を誤ってしまったんだよ』
「力の使い方を誤った…?」
『そう、最初こそはこの世界の善き神として君臨していた。でもバルディモスは… その力の使い方を誤ってしまったんだ。大き過ぎる力とはね、…諸刃の剣でもあるんだよ』
諸刃の… 剣……。
『そう、善き神として君臨していたバルディモスはその力に驕り、やがて力を乱用するようになった。そのうち、抑えが効かなくなったバルディモスは乱用するうちにその大き過ぎる力は自身をも呑み込み、バルディモスは… 堕ちてしまった。
そして、
この世界の神から魔神へと姿を… 変えたんだ』
力はね… 大き過ぎると、使い方を誤れば自身をも滅ぼす諸刃の剣にもなるんだ。正しく使えば問題ないけどね、そう話すバクに僕は困惑する。
その… バクの悲しげな表情を見ていたら、何も言えなくなった。
女の子からは明るく眩い光が。男の子からは淀みのない純粋な闇が… その身体を包み込んでいた。その身体からは内なる力が溢れて出ていた。眩い光が天を貫き、空を覆っていた闇の力を打ち消し、純粋なる闇は闇を持って制し、魔神の力を抑え込んだ。
――‥そして、激しい戦いの末に魔神の絶叫する声が轟き… 空には青々とした晴天が広がった。
種族を超え、皆で手を取り合って歓喜した。勝利の喜びを…。けれど、魔神に勝ったとは言え、封印が精一杯だった。彼らはまだ子供で力が不安定だったのがその一つでね。でもとにかく、この世界に平和が再び訪れたことは確かだった』
「それじゃあ、その二人の子供も元の世界に…」
戻ったんですか?そう聞いた僕にバクはゆるりと首を振って悲しげに微笑んだ。
『いや、帰したくても帰せなかった。思ったより、魔神があちこちに遺した傷跡が酷くてね。そしてそれはその当時の時空の歪みにも大きく影響を与えたんだ。時空の歪みによって迷い込んだ迷い人を帰すとき、時空の歪みに故郷への道を作ってそこを通って帰ってもらうんだけど、魔神が与えた影響で時空を使って帰郷させるのはとても危険だった。
酷く荒れていてね… 入ったら最後、どこの時代に飛ばされるか。いや、それならまだマシかもしれない。下手をすれば五体バラバラ… なんてこともあり得る話だったから』
そう言って肩を竦めるバクにずっと疑問に思っていたことを口にした。
「そういえば、この世界の神では魔神に対抗できなかったんですか?」
だけど、そのとき見たバクの表情は… 後悔と悲しみ、いろいろ混ざり合ったような思いつめた表情をしてしていた。
『魔神バルディモスは… 元はこの世界の神だったんだ』
・・・え?
『魔神とはね、魔の神と書くだろ?文字通り、魔神は… 魔に堕ちた神のことを指すんだ。そしてキミが今言ったよね?この世界の神ではどうにもならなかったのかって。そのときの魔神バルディモスが当時のこの世界の神だったんだ。バルディモスは… 力の使い方を誤ってしまったんだよ』
「力の使い方を誤った…?」
『そう、最初こそはこの世界の善き神として君臨していた。でもバルディモスは… その力の使い方を誤ってしまったんだ。大き過ぎる力とはね、…諸刃の剣でもあるんだよ』
諸刃の… 剣……。
『そう、善き神として君臨していたバルディモスはその力に驕り、やがて力を乱用するようになった。そのうち、抑えが効かなくなったバルディモスは乱用するうちにその大き過ぎる力は自身をも呑み込み、バルディモスは… 堕ちてしまった。
そして、
この世界の神から魔神へと姿を… 変えたんだ』
力はね… 大き過ぎると、使い方を誤れば自身をも滅ぼす諸刃の剣にもなるんだ。正しく使えば問題ないけどね、そう話すバクに僕は困惑する。
その… バクの悲しげな表情を見ていたら、何も言えなくなった。
42
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~
志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。
舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。
そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。
次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――?
「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」
ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!?
□
・感想があると作者が喜びやすいです
・お気に入り登録お願いします!
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
七彩 陽
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる