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- 運命の分岐点と守りたいもの -
『メラフィルの思惑と - 迫る危機 - 』
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『正直、あの子には同情するわ。…でも、それだけよ。最初に言ったとおり、神というのは身勝手で気まぐれなものなの。それに、結局は最高神も時の神と同じで甘いのよ!』
「な…っ!」
『───だって、結局は彼らに慈悲を与えたばかりにこんな事態を招いたようなものじゃない』
だから、私は最初から反対していたのよ!と零すメラフィルの瞳には僅かに怒りが滲み出ている…。
『勝手に手を出した上に運命を変えられちゃ、運命を司る神の私に侮辱もいいとこよ!…まあ、だからあの子には同情を覚えつつあるけれど、これとは話が別だもの。……私はあらゆる万物の運命を司る神、歪められた運命を正す道があるのなら、
敵にも味方にもなるの。
今の、私たちの関係は… 敵かしら?』
その瞳はまるで獲物を狙う捕食者の目で、瞳孔は開き、獰猛な瞳が垣間見える───。
『…因みに、あの子には対して怒りも憎しみもないけれど、時の神だったクロノスのことは嫌いよ?たとえ愛し子であろうと、神の地位まで捨てるなんて、バカバカしいったらありゃしない!身内の恥だわ!』
吐き捨てるように言った。
『───だから、私はこの状況が嬉しくてたまらないの!なのに、運命を司る神だからって、そっちもフォローしなきゃいけないなんて… ほんっと!面倒だわ』
『でも、これ以上は私たち神が関わるわけにはいかないのよ。残念なことにね…。せっかく、元の軌道に修正しつつ、やっと前に廻り出した歯車をわざわざ止めようなどと誰も思わないもの。
だから、あんたに教えてあげたのよ。時の神が最期の力を使って作った末端の時の眷属であるあんたに。せいぜい歪みまくった運命に足掻くことね!ああ!それから、大事なことを言うのを忘れてたわ。
私たちはもうこの世界がどんな道を辿ろうと今後、関わらない。
出来ることはもうやったわ。後はあんた達次第ってところかしら?でも、結局はあの子がこの世界の運命を握っている…
あの子の瞳、普段は黒いでしょう?
───気をつけなさい。あの子に絶望が押し寄せたとき、あの子の瞳は本来の黒色から氷のような澄んだ水色へと変わる。そしてそれはこの世界の氷河期へと繋がる───。感情を失くし、雪のような冷たい心に満たされ、生きることに、全てに絶望したとき。
そして、あの子が死を決意したとき、自ら死を望んだとき、本来の黒い瞳から時の力を宿した金色の瞳へと変わる───。そしてそれはこの世界の崩壊を意味する───。
もしも、そうなったとき、手遅れになる前に止めることね…。決して容易ではないと思うけれど。
おいそれと、そう終わりには近付かないとは思うけど、《鐘》の音が3回目を迎えたとき、この世界の終わりを迎えることになる。鐘は《時の鐘》。それは終焉を告げる最期の告知であり、警告よ。
だから、鐘の音が聞こえたら3回目が鳴る前にあの子を止めるが何かすることね。
───私は末端とはいえ。時の眷属のあんたも嫌いよ。……だから、教えてあげたの。
この非条理で残酷な世界を。たとえ、神の力を持ってしても、どうにもならないことはいくらでもあるのよ?それをその身でとことん思い知ればいいわ!』
フンッと鼻を鳴らすメラフィルは途中、時の神クロノスの顔が過ぎったのか、吐き捨てるようにバクに言い放つ。そして、それからニンマリと口角を上げた。
「───ッ!?」
『我が兄ながら時の神も馬鹿だけど、眷属のあんたも揃って馬鹿よねー。ダメじゃない。可愛い可愛いお姫様を一人にしちゃぁ』
まるで、三日月のように嗤うメラフィルにバクはその言葉に嫌な予感が背中を駆ける…
『馬鹿よねぇ、あんたも。もう一人の騎士サマも』
「んな…っ」
『私がなぜ、あんたに教えてあげたと思う?まさか、理由がさっきのあれだけと思って?そんなわけないじゃない!馬鹿ねぇ…。私があんたに長々と話していたのはあんたというナイト様を此処で引き留めるため─。
もう一人のナイト様は今頃、戦闘といったところかしら?神の力を失い、闇の精霊王の本来の力を出しきれていない彼の勝算など、無いに等しいけど… クスッ』
「そ、んな…っ じゃあ今、ルティは…!」
『───だから、言ったでしょう?』
私は運命を正すためなら、敵にも味方にもなると。そして今回は…
「は、放せっ!そんなルティッ」
「ッ!?ぐ…っ!」
暴れるバクはメラフィルの動かした人差し指によって、体の自由を奪っていた蔦がさらに体を巻きつけていく…
『──悪いけど、邪魔されるわけにはいかないのよ』
ああ、それとこれは餞別よと一方的に呪を掛けられる。
「ぐ、はぁ…っ!」
縛の刻印がバクの体に刻まれるー。
「……なに、を…、………つ、」
苦悶の表情に染まるバクをメラフィルは満足げに見下ろす。
『私からの餞別よ。話した事実を他に口外されると困るのよ。だから、その口止めと… 不定期に記憶と身体の幼体化と無力化が訪れるように呪を掛けたの』
「な、ん…!?なんだって!?」
『用心に越しただけよ。だって、そうじゃなきゃ面白くないじゃない』
『そういうわけだから、あんたにはもう少し此処で眠っていてもらおうかしら…』
紡がれる言葉に重くなる体、重くなる目蓋
(……ル、ル…ッテ、ィ…っ!に、げるんだ… はや、く…っ!)
そしてついに視界が、ぐにゃりと歪むと… 全てが真っ暗に染まった──。
「な…っ!」
『───だって、結局は彼らに慈悲を与えたばかりにこんな事態を招いたようなものじゃない』
だから、私は最初から反対していたのよ!と零すメラフィルの瞳には僅かに怒りが滲み出ている…。
『勝手に手を出した上に運命を変えられちゃ、運命を司る神の私に侮辱もいいとこよ!…まあ、だからあの子には同情を覚えつつあるけれど、これとは話が別だもの。……私はあらゆる万物の運命を司る神、歪められた運命を正す道があるのなら、
敵にも味方にもなるの。
今の、私たちの関係は… 敵かしら?』
その瞳はまるで獲物を狙う捕食者の目で、瞳孔は開き、獰猛な瞳が垣間見える───。
『…因みに、あの子には対して怒りも憎しみもないけれど、時の神だったクロノスのことは嫌いよ?たとえ愛し子であろうと、神の地位まで捨てるなんて、バカバカしいったらありゃしない!身内の恥だわ!』
吐き捨てるように言った。
『───だから、私はこの状況が嬉しくてたまらないの!なのに、運命を司る神だからって、そっちもフォローしなきゃいけないなんて… ほんっと!面倒だわ』
『でも、これ以上は私たち神が関わるわけにはいかないのよ。残念なことにね…。せっかく、元の軌道に修正しつつ、やっと前に廻り出した歯車をわざわざ止めようなどと誰も思わないもの。
だから、あんたに教えてあげたのよ。時の神が最期の力を使って作った末端の時の眷属であるあんたに。せいぜい歪みまくった運命に足掻くことね!ああ!それから、大事なことを言うのを忘れてたわ。
私たちはもうこの世界がどんな道を辿ろうと今後、関わらない。
出来ることはもうやったわ。後はあんた達次第ってところかしら?でも、結局はあの子がこの世界の運命を握っている…
あの子の瞳、普段は黒いでしょう?
───気をつけなさい。あの子に絶望が押し寄せたとき、あの子の瞳は本来の黒色から氷のような澄んだ水色へと変わる。そしてそれはこの世界の氷河期へと繋がる───。感情を失くし、雪のような冷たい心に満たされ、生きることに、全てに絶望したとき。
そして、あの子が死を決意したとき、自ら死を望んだとき、本来の黒い瞳から時の力を宿した金色の瞳へと変わる───。そしてそれはこの世界の崩壊を意味する───。
もしも、そうなったとき、手遅れになる前に止めることね…。決して容易ではないと思うけれど。
おいそれと、そう終わりには近付かないとは思うけど、《鐘》の音が3回目を迎えたとき、この世界の終わりを迎えることになる。鐘は《時の鐘》。それは終焉を告げる最期の告知であり、警告よ。
だから、鐘の音が聞こえたら3回目が鳴る前にあの子を止めるが何かすることね。
───私は末端とはいえ。時の眷属のあんたも嫌いよ。……だから、教えてあげたの。
この非条理で残酷な世界を。たとえ、神の力を持ってしても、どうにもならないことはいくらでもあるのよ?それをその身でとことん思い知ればいいわ!』
フンッと鼻を鳴らすメラフィルは途中、時の神クロノスの顔が過ぎったのか、吐き捨てるようにバクに言い放つ。そして、それからニンマリと口角を上げた。
「───ッ!?」
『我が兄ながら時の神も馬鹿だけど、眷属のあんたも揃って馬鹿よねー。ダメじゃない。可愛い可愛いお姫様を一人にしちゃぁ』
まるで、三日月のように嗤うメラフィルにバクはその言葉に嫌な予感が背中を駆ける…
『馬鹿よねぇ、あんたも。もう一人の騎士サマも』
「んな…っ」
『私がなぜ、あんたに教えてあげたと思う?まさか、理由がさっきのあれだけと思って?そんなわけないじゃない!馬鹿ねぇ…。私があんたに長々と話していたのはあんたというナイト様を此処で引き留めるため─。
もう一人のナイト様は今頃、戦闘といったところかしら?神の力を失い、闇の精霊王の本来の力を出しきれていない彼の勝算など、無いに等しいけど… クスッ』
「そ、んな…っ じゃあ今、ルティは…!」
『───だから、言ったでしょう?』
私は運命を正すためなら、敵にも味方にもなると。そして今回は…
「は、放せっ!そんなルティッ」
「ッ!?ぐ…っ!」
暴れるバクはメラフィルの動かした人差し指によって、体の自由を奪っていた蔦がさらに体を巻きつけていく…
『──悪いけど、邪魔されるわけにはいかないのよ』
ああ、それとこれは餞別よと一方的に呪を掛けられる。
「ぐ、はぁ…っ!」
縛の刻印がバクの体に刻まれるー。
「……なに、を…、………つ、」
苦悶の表情に染まるバクをメラフィルは満足げに見下ろす。
『私からの餞別よ。話した事実を他に口外されると困るのよ。だから、その口止めと… 不定期に記憶と身体の幼体化と無力化が訪れるように呪を掛けたの』
「な、ん…!?なんだって!?」
『用心に越しただけよ。だって、そうじゃなきゃ面白くないじゃない』
『そういうわけだから、あんたにはもう少し此処で眠っていてもらおうかしら…』
紡がれる言葉に重くなる体、重くなる目蓋
(……ル、ル…ッテ、ィ…っ!に、げるんだ… はや、く…っ!)
そしてついに視界が、ぐにゃりと歪むと… 全てが真っ暗に染まった──。
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