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- 運命の分岐点と守りたいもの -

『闇堕ち魔法使いの始祖と - 影の復活 - 』

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…まさか、あのときに思い立った自身の戒めの為に立てた誓いと父の言葉に窮地を救われるとは───。

いや、と首を傾げる。

あのとき、何か・・に噛まれた気がしたが、その何かのおかげか。人間のフリをして力を抑えていたあのときは気付きもしなかったが、

「…………」

本来のドラゴンの力を解放した今、人型を取っているとは言え、金色の瞳にはその手に微かに噛み跡が見える。…それも、微かながらも聖なる気を放つその噛み跡の残る手を一心に見つめる。

「───…もしや、精霊か?」

そういえば、あのときもあの子のら顔色が蒼白になっていたときだった。もし、滅びたはずの精霊がまだこの国にいたとして、何らかの精霊があの子を守っているとすれば… この何かに噛まれた手と、聖なる気を放つ噛み跡に納得がいく。

それに、以前あの子がエルフの秘薬モドキをくれたがエルフの秘薬がそう容易に他者が作れるはずがないのは私とて想像するに難くない。

レシピがあったと言うが、

それでもエルフの種族でない、それも一端の人間ごときが作れるはずがないアレ・・をあの子が作ったと言って渡してきたあのときは困惑さえもした。

───だが、

精霊に守られているのなら、あの子の一連の不可解な行動にも… 納得がいく。

意図してか、意図せずか分からぬがそれでもこの噛み跡に図らずとも救われたのは… 事実だ。

なぜか、ほんの一瞬ジークの顔が過ぎる。


「 ? 」

顎に手を添える。

「…………」

まさか、な… 。

ジークのこれまでの洞察力と直感力、そして何もかもあっという間に熟す様は人間離れしていて… けれど、本人に言えば、王宮の老狸共を毎日相手にしていれば嫌でも培われるものだと、あのときはその力説に妙に納得した自分だったが、今ではそれさえも疑念に思ってしまう。

考えに耽っていたばかりに、

「 ! 」

一瞬、反応が遅れた。


─── バシュッ!

『ぐぁあぁあああーーッ!?』

身じろぎし、最後の悪足掻きとばかりに黒い球体を投げつけてきた闇の魔女を引き裂いた。


「く…っ!なん、だ…?!こ…れは…ッ 」

身体が言うことを聞かない。


「貴様、私の身体に何をし、た……!?」

身体が鉛のように重い。手が動かさなくなり、しまいには立っていられず、下に膝をついてしまった。


『は、は……ッ!愚かな王よ、お前が見せられていた悪夢など、これから起こることに比べたらただの前触れに過ぎぬわ!!!ふ、ふふ…っ もうすぐよ!もうすぐこの国は私たちのモノになる。

───…あのお方が復活になる!

我ら闇堕ち魔法使いの始祖、影と呼ばれしあのお方が… お前の身体を媒体にして甦るのだ!あはははッ!!!』

あはは… あはははッははははは───ッ!!!可笑しくて堪らないとばかりに闇の魔女の嗤い声が部屋に響く。そして、唐突に闇の魔女は黒と紫色の混ざり合った煙となり、霧散し消えた…。

「あ、ぐ、ぁああああ!!!!」

とても、自身の口から出たとは思えないおどろおどろしい歓喜した咆哮に驚き固まる。古より続くドラゴンの血が… 禍々しい何かによって、内側から這いずり穢されるのがわかる。

抗おうにも、どうすれば良いかわからない。途方に暮れた。じわじわと己自身を、内側から穢し、蝕み始めるそれに… ドラゴンの血を持っても抵抗できず、その恐怖に慄く。

《さぁ!その身体を寄越せ…!我に、その新しい器を!!!》

  闇が、影が、歓喜する───。

己の復活に、新しい贄となる器に。若く丈夫な器に、特殊な血に…。これまで以上に強い力を得られると… 歪な笑みを浮かべ、ジキルドを乗っ取らんと黒い靄がその身体を覆い尽くした。
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