88 / 117
- 運命の分岐点と守りたいもの -
『闇堕ち魔法使いの始祖と - 影の復活 - 』
しおりを挟む
…まさか、あのときに思い立った自身の戒めの為に立てた誓いと父の言葉に窮地を救われるとは───。
いや、と首を傾げる。
あのとき、何かに噛まれた気がしたが、その何かのおかげか。人間のフリをして力を抑えていたあのときは気付きもしなかったが、
「…………」
本来のドラゴンの力を解放した今、人型を取っているとは言え、金色の瞳にはその手に微かに噛み跡が見える。…それも、微かながらも聖なる気を放つその噛み跡の残る手を一心に見つめる。
「───…もしや、精霊か?」
そういえば、あのときもあの子のら顔色が蒼白になっていたときだった。もし、滅びたはずの精霊がまだこの国にいたとして、何らかの精霊があの子を守っているとすれば… この何かに噛まれた手と、聖なる気を放つ噛み跡に納得がいく。
それに、以前あの子がエルフの秘薬モドキをくれたがエルフの秘薬がそう容易に他者が作れるはずがないのは私とて想像するに難くない。
レシピがあったと言うが、
それでもエルフの種族でない、それも一端の人間ごときが作れるはずがないアレをあの子が作ったと言って渡してきたあのときは困惑さえもした。
───だが、
精霊に守られているのなら、あの子の一連の不可解な行動にも… 納得がいく。
意図してか、意図せずか分からぬがそれでもこの噛み跡に図らずとも救われたのは… 事実だ。
なぜか、ほんの一瞬ジークの顔が過ぎる。
「 ? 」
顎に手を添える。
「…………」
まさか、な… 。
ジークのこれまでの洞察力と直感力、そして何もかもあっという間に熟す様は人間離れしていて… けれど、本人に言えば、王宮の老狸共を毎日相手にしていれば嫌でも培われるものだと、あのときはその力説に妙に納得した自分だったが、今ではそれさえも疑念に思ってしまう。
考えに耽っていたばかりに、
「 ! 」
一瞬、反応が遅れた。
─── バシュッ!
『ぐぁあぁあああーーッ!?』
身じろぎし、最後の悪足掻きとばかりに黒い球体を投げつけてきた闇の魔女を引き裂いた。
「く…っ!なん、だ…?!こ…れは…ッ 」
身体が言うことを聞かない。
「貴様、私の身体に何をし、た……!?」
身体が鉛のように重い。手が動かさなくなり、しまいには立っていられず、下に膝をついてしまった。
『は、は……ッ!愚かな王よ、お前が見せられていた悪夢など、これから起こることに比べたらただの前触れに過ぎぬわ!!!ふ、ふふ…っ もうすぐよ!もうすぐこの国は私たちのモノになる。
───…あのお方が復活になる!
我ら闇堕ち魔法使いの始祖、影と呼ばれしあのお方が… お前の身体を媒体にして甦るのだ!あはははッ!!!』
あはは… あはははッははははは───ッ!!!可笑しくて堪らないとばかりに闇の魔女の嗤い声が部屋に響く。そして、唐突に闇の魔女は黒と紫色の混ざり合った煙となり、霧散し消えた…。
「あ、ぐ、ぁああああ!!!!」
とても、自身の口から出たとは思えないおどろおどろしい歓喜した咆哮に驚き固まる。古より続くドラゴンの血が… 禍々しい何かによって、内側から這いずり穢されるのがわかる。
抗おうにも、どうすれば良いかわからない。途方に暮れた。じわじわと己自身を、内側から穢し、蝕み始めるそれに… ドラゴンの血を持っても抵抗できず、その恐怖に慄く。
《さぁ!その身体を寄越せ…!我に、その新しい器を!!!》
闇が、影が、歓喜する───。
己の復活に、新しい贄となる器に。若く丈夫な器に、特殊な血に…。これまで以上に強い力を得られると… 歪な笑みを浮かべ、ジキルドを乗っ取らんと黒い靄がその身体を覆い尽くした。
いや、と首を傾げる。
あのとき、何かに噛まれた気がしたが、その何かのおかげか。人間のフリをして力を抑えていたあのときは気付きもしなかったが、
「…………」
本来のドラゴンの力を解放した今、人型を取っているとは言え、金色の瞳にはその手に微かに噛み跡が見える。…それも、微かながらも聖なる気を放つその噛み跡の残る手を一心に見つめる。
「───…もしや、精霊か?」
そういえば、あのときもあの子のら顔色が蒼白になっていたときだった。もし、滅びたはずの精霊がまだこの国にいたとして、何らかの精霊があの子を守っているとすれば… この何かに噛まれた手と、聖なる気を放つ噛み跡に納得がいく。
それに、以前あの子がエルフの秘薬モドキをくれたがエルフの秘薬がそう容易に他者が作れるはずがないのは私とて想像するに難くない。
レシピがあったと言うが、
それでもエルフの種族でない、それも一端の人間ごときが作れるはずがないアレをあの子が作ったと言って渡してきたあのときは困惑さえもした。
───だが、
精霊に守られているのなら、あの子の一連の不可解な行動にも… 納得がいく。
意図してか、意図せずか分からぬがそれでもこの噛み跡に図らずとも救われたのは… 事実だ。
なぜか、ほんの一瞬ジークの顔が過ぎる。
「 ? 」
顎に手を添える。
「…………」
まさか、な… 。
ジークのこれまでの洞察力と直感力、そして何もかもあっという間に熟す様は人間離れしていて… けれど、本人に言えば、王宮の老狸共を毎日相手にしていれば嫌でも培われるものだと、あのときはその力説に妙に納得した自分だったが、今ではそれさえも疑念に思ってしまう。
考えに耽っていたばかりに、
「 ! 」
一瞬、反応が遅れた。
─── バシュッ!
『ぐぁあぁあああーーッ!?』
身じろぎし、最後の悪足掻きとばかりに黒い球体を投げつけてきた闇の魔女を引き裂いた。
「く…っ!なん、だ…?!こ…れは…ッ 」
身体が言うことを聞かない。
「貴様、私の身体に何をし、た……!?」
身体が鉛のように重い。手が動かさなくなり、しまいには立っていられず、下に膝をついてしまった。
『は、は……ッ!愚かな王よ、お前が見せられていた悪夢など、これから起こることに比べたらただの前触れに過ぎぬわ!!!ふ、ふふ…っ もうすぐよ!もうすぐこの国は私たちのモノになる。
───…あのお方が復活になる!
我ら闇堕ち魔法使いの始祖、影と呼ばれしあのお方が… お前の身体を媒体にして甦るのだ!あはははッ!!!』
あはは… あはははッははははは───ッ!!!可笑しくて堪らないとばかりに闇の魔女の嗤い声が部屋に響く。そして、唐突に闇の魔女は黒と紫色の混ざり合った煙となり、霧散し消えた…。
「あ、ぐ、ぁああああ!!!!」
とても、自身の口から出たとは思えないおどろおどろしい歓喜した咆哮に驚き固まる。古より続くドラゴンの血が… 禍々しい何かによって、内側から這いずり穢されるのがわかる。
抗おうにも、どうすれば良いかわからない。途方に暮れた。じわじわと己自身を、内側から穢し、蝕み始めるそれに… ドラゴンの血を持っても抵抗できず、その恐怖に慄く。
《さぁ!その身体を寄越せ…!我に、その新しい器を!!!》
闇が、影が、歓喜する───。
己の復活に、新しい贄となる器に。若く丈夫な器に、特殊な血に…。これまで以上に強い力を得られると… 歪な笑みを浮かべ、ジキルドを乗っ取らんと黒い靄がその身体を覆い尽くした。
12
お気に入りに追加
3,783
あなたにおすすめの小説
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~
志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。
舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。
そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。
次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――?
「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」
ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!?
□
・感想があると作者が喜びやすいです
・お気に入り登録お願いします!
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる