断罪フラグを回避したらヒロインの攻略対象者である自分の兄に監禁されました。

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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -

――‥ ジキルドside②

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『本当に… 本当に… 怒ってはいないのか?』

怒ってもいいんだぞ?私は… それだけのことをお前にしたのだからと、さらに言えば今度は睨まれてしまった。

「だから、もういいですって!!」

はぁ、と小さく溜め息つく弟になぜか解せなくて、そんな心情が面に出ていたのだろう。私の表情を見るなり、表情を曇らせた。

「───…それに、」

「それに、本当に怒るべきなのは… 兄上のほうではありませんか。母上や叔父上たちがしてきたことに… それを止められなかった僕にも、」


俯いていた顔を上げる。

オーディットのその瞳には陰が掛かっていて…悲しげにその表情を歪めた。

「子供だからとか、関係ありません…。あの人達を今も止められず、兄上を困らせてばかりいて。それでいて兄上に心配ばかりかけている… 。謝罪を受けるべきなのは貴方のほうですよ兄上」


───本当に、ごめんなさい。

拳を握り締めて、こちらに体の向きを変えた弟はそう謝罪の言葉を口にした。

どうしようもない後悔の念から、悲しみから… 体が、手が、声が… 震えるその健気さに、


オーディットに手を伸ばすと、

       そのまま、そっと… 抱き寄せた。


「…あ、あに…… ぅえ…?」

  すると、


腕の中からオーディットの… 弟の戸惑った声が聞こえた。私が抱きしめたことに驚いたのだろう。そこには恥ずかしがる様子はなく、『え?え?』と状況をいまいち把握していないオーディットはきょとんとした瞳で腕の中から私を見上げていた。

私がその呼びかけに応えなかったからか、
こてんと首を傾げるオーディットは… まるで小動物だ。口にしたら先ほどと同じように怒るだろうから決して口にはしないが、やはり小動物だ。……というよりも、もはや小動物にしか見えない。本人は否定しているが。


天然なのはお前のほうだと、口にしたい。

今、こうして抱きしめているのが私だからいいものの… これが他の誰とも知らぬ男ならばどうする?大人と子供の力の差など圧倒的に違うんだぞ?抵抗して叶う相手ではないんだぞ?

力づくで強引に子供を捩じ伏せることも、押さえつけることも出来るんだぞ?兄の私ならば安心… というのは嬉しいが、もう少し警戒心を持って欲しいんだが。


「……兄上?どうかされたんですか??」

きょとんと見上げてくる弟に… 何故だろうか、先ほどまでのシリアスな雰囲気はどこへ行ったのか。

『いや… なんでもない』

天井を一度仰いで、それから嘆息した。
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