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- 王国の陰りと忌まわしき魔女の呪い -

『ジークの苦悩と - 抗えない運命 - 』

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「……なぜ、お前はわかるんだ?」

不思議だ。そうとしか言いようがない。


「なぜ、わかるかって?古参の古狸共のいる王宮の中で日頃から培ってきた洞察力の賜物と… 憶測。それと勘だ」

そう、ジークは決まって昔から同じ答えを出す。昔からジークには隠し事は出来ない。だが、それで周りを納得させてしまうジークはまさに人格者さながらなのだと、そう思わずにはいられなかった。

「呪い系統は掛けるものにもよるが、他者に話せなくなるものもある。お前のその状態と最近のお前の体調不良… それと、先ほどのオーディットの件も含めほぼ間違いないだろうな」

───今言ったことで間違っている点はあるか?ま、ないだろうが。と厄介なことになったと、はぁぁ…と盛大に溜息つく我が友人は… 本当に怖すぎるくらい優秀だ。時々、本当に人間か?と疑いたくなるときがある。

「……しかし、参ったな。いくら俺でも昔とは違う。よりによって、力も完全に戻っていないときに……… ああ、なるほど。───そういうことか!」

何だ?どういうことだ??腕を組み、顎に手を添えブツブツと聞き取れない小さい声で呟き出したかと思えば一人勝手に答えに行き着き、一人納得する親友を… 訝しげに見つめる。

「あいつら、まさかまだ俺の力が完全に戻っていないうちに… こいつに近づいたのか」

いい加減、このまま放置されてるのもなんだと思い、ジークの肩を叩く。

『ん?』

「さっきからお前は一人で何をブツブツ言っている?一人で納得していないで、私にも教えて欲しいんだが」


意を決してジークにそう願い出るも、

「───いや、それはできない」

首を横に振り、一蹴した。


「ッ!なぜだ…!?」

納得出来なかった。まるで見捨てられたかのように感じた。だが、ジークの答えは私が思っていたのと違った。

「お前にそれを教えるとなっては必然的にこの国の… いや、この世界の成り立ちから話さなければならない。お前がまだ知らないこの国の成り立ちも───。だが、闇の魔女の呪いに掛かったお前にそれを話してしまえば、奴らにどこでそれが耳に入るかわからない。───…遥か昔と違い、信仰心の途絶えたこの国において、俺も… あいつも本来の力を発揮できない」


普段から何事にも卒なく熟してきたジークが… その表情を初めて苦渋に染めたことに驚きを隠せなかった。


「……世界の成り立ち?この国の成り立ちだと…?本来の力?信仰心だと…??ジーク、お前は何を言っている…?」

親友の口から次から次へと出た言葉に怪訝を隠せない。その言い方ではまるで… 

「ジーク…?」

『光と闇は対となる』


「───なに?」

「俺はお前達を守る。俺の力が及ぶ範囲の上でになるが。お前も決して闇に呑まれるな。……いや、その点ではオーディットのほうが危ういかもしれない」


「なっ!?どういうことだ!」

「それはあの子が… ジキルド、すまないが話せるのはここまでだ」

    ッ!?

「……何れ時が… 時期が来ればお前もわかる。そしてそれは必然だ。この世に偶然など有りはしない。そのとき俺はもしかしたら… いないかもしれない。お前達に新しい仲間が増えるかもしれない。別れがあるかもしれない。───だが今のように決して周りに疑心暗鬼になるな。…あの子を裏切るな。あの子にはお前しか…… 兄がいないのだから」

どこか悲しげに思いつめたようにそう告げるジークに… 言葉が詰まる。なぜ、そんなことを言うのか意味がわからなかったが、ジークが言うのだ。何か意図があってのことだろう。


「お前のその呪いは… こちらでもいろいろ探ってみる。だからお前は下手に動くな。連中に変な勘繰りをされても困るからな」

そう告げるや否や、早々に部屋を出ていくジークにどうしたものかと考えていると、ジークが閉め忘れたのか… オーディットの部屋の扉が少しだけ開いていることに気が付いた。
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