ざまぁ！をされるつもりが… こんな展開、聞いてないっ

- 謎多き執事の秘密ごと -

『過去のトラウマと - 襲撃 - 』

「馬車の中から出るなという忠告を無視して、気になった僕は姉上の止める声も聞かず扉を開けたんだ。そしたら… 」

『………』

「血生臭い匂いが周りに充満していて、扉の前で愕然と立ち尽くしていた僕は周囲に目をやる余裕がなくて、そしたら横から伸びてきた手に腕を引っ張られて、外に引きずり出されたんだ」

はぁ、とあの日を振り返る僕は天井を一度仰いで、そして嘆息した。

「僕を馬車から引きずり出したのは下卑た笑みを浮かべる男達で、逃げようと突き放そうとしても… 意味は為さなくて。ニヤニヤ笑う男達から逃げようと僕はそれでも踠もがいて抵抗した。


そして、目に入ったのが…

馬車付近で血塗れになって倒れている護衛の二人と、地面に横たわる御者の遺体。馬は首を切り落とされていて、それで今起こっている惨状を理解したんだ。こいつらは人買いの連中だって」

『………っ』

目を伏せる僕をこのときのアランが悲痛の表情を浮かべて意味ありげに見つめていたことに気付かなかった。