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始まりは…

『複雑な心境』

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───でも、と改めて考えてみる。

今の僕がこうなのだ。王宮に嫁いだ後、姉上が原因で殿下の不眠を招いて政務が滞ったりしないだろうか。姉よりも殿下の健康管理が気掛かりである。……そう、今の僕がそうであるように。

「はぁ、姉上…。僕はあなたのために忠告しているんですよ。なんだかんだ迷惑を被ってはいても、大事な家族で大事な僕の姉上に変わりはないんですから」


別に、迷惑被ってるからと言っても姉上のことは嫌いじゃない。そりゃあ、時と場合を考えてほしいと… 物の常識を考えてほしいと幾度思ったことか。それでも、なんだかんだで姉上を突き放すことができない僕は…

「……結局、僕も甘いってことかな(ボソッ」

『なーに?なんか、言った??』


不意に漏れた呟きに姉上が首を傾げる。本当に… これで金髪の縦巻きドリルの髪をストレートにしたら、それなりに淑女らしく見えるのに。もったいないと心底 思う。

  いったい、いつからか───。

姉上の髪型は元から巻いていたのではなく、本当は癖のない綺麗なストレートの髪だ。それがいつの日か、ある日突然、『やっぱり悪役令嬢と言ったらこうよね!』そう叫んだ姉上は部屋から出てくると… 綺麗なストレートの金髪は縦巻きドリルの金髪に変わっていた。

今思えば、あの日だったのかもしれない。

過去の姉上と今の姉上自身が芯を持って確立したのは──。確かに、昔の姉上は少しとは言い難い我が儘ではあったものの、僕からすれば昔の姉上も今の姉上も僕の姉上であることに変わりはない。確かに、貴族で生まれた以上は政略結婚は免れないだろうし、決められたレールからはそう逃げられない。

それでも僕は姉上にはたとえ政略結婚だったとしても、幸せになってほしい… と、誰よりもその幸せを願っている。もちろん、父上もだ。父上は口下手で母上に尻に敷かれてるけど、なんだかんだ結局、僕たち子供に甘いところがある。

だから、たとえ子供の何気ない言葉を本気で考えて、我が公爵家とその未来と、王族のことを踏まえた上で王家に打診を。縁談を申し込んだのだ。

「いえ、別に…」

……姉上に言うと調子に乗るから、絶対に言わないけど。
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