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- 序 -

乙女ゲームへの媒介と…異世界への扉

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うろ覚えな記憶に頼って、印を結ぶ。伏せていた目をカッ!!!と開き、

その手を組み替え、剣の印を組んでそれを天を貫くがごとく勢いよく天へ突き出す

『輪廻還魂異界転生…!急々如律令!!!』

「は、」

「ま… お、音巫女ぉッ!?」

そして、自称魔王とおじいちゃんが狼狽したのはほぼ同時のことだった。

「え、」

(なにかマズったかしら…?)

一瞬、動揺したせいで顔が引き攣ったような気がした。

「なぜ、よりによってそれを…ッ!」

取り乱すおじいちゃんの尋常じゃない様子に、やっぱり何かやらかしたのかと嫌な予感が背中を駆け抜ける。だけど、術が発動した今、止める術がなく辺りを包み込む眩い光はより一層強くなる。

目が眩み、腕を庇うその後ろでおじいちゃんの『これはいかん!!』という声に続いて眩い光で何も見えなくなった。

 そして、

「ぐ…ッ」

「きゃぁっ」

ゴオォオオオオーーーッッという何処からともなく突風が吹き荒れると、まるで竜巻のように周りのものを手当たり次第吸い込んでいく…

そして。アイツがその中心部に風に煽られ引き寄せられていることに注意を向ける暇もなく、続いてふわっ、と私の体が浮いた。

「え、うそでしょ…ッ!?」

「きゃぁぁぁあああーっ!!!」

私の浮いた体がヤツと同じように中心部に向かって引き寄せられていく。何かに捕まろうと手を伸ばすけれど、掴まれるようなものは近くになく、必死に手足をバタつかせ抵抗するも、それは空中においては意味を為さなかった。

「音巫女…ッ!」

おじいちゃんが伸ばす手を掴もうと手を伸ばすけれど、あと少しというところで… 届かなかった。

「…そうじゃ!!」

「これなら…ッ!!!これなら音巫女を救ってくれるかもしれん… いや、今は一か八かじゃ!!!」

サッと懐に手を入れたおじいちゃん、なにかを取り出すとそれをこっちに向かってぶん投げる。中心部の吸引力によってそれも一緒に引き寄せられる…

光と渦巻く風の中心部に吸い込まれるか、吸い込まれないかのタイミングで、それがゴンッ!という鈍い音共に痛みが襲う。涙で滲んだ目で辛うじてそれを掴んでみると、

『王宮ラビンスと異世界からの迷い人 ~ 聖なる乙女と五人の騎士 ~』って、これ…私が会社で作った乙女ゲーじゃない!

「良いか!音巫女よッ …らず!……し、」

「お、じい…ちゃ、ッんて!?き、こ… な……」

く…っ!中心部が風が強すぎておじいちゃんの声がまともに聞こえない。なにか必死に伝えようと叫んでるのはわかるんだけど、なんて言ってるの!?ってか、コレって。そういえば前におじいちゃんに一つあげたけど、なんで今この状況で───…

────── ヒュンッ、

──────………
───……

「く…っ、行ってしまったか」

輪廻還魂異界転生、アレは異世界にその魂を転移させる術。まさか、音巫女がアレを使うとは思わなかったが…。

「……大丈夫じゃろうか。音巫女は」

前を見据えどそこにあるのは残骸だけ。捜している人物は…いない。発動した術によって、あの魔王という者と共に異界へと吸い込まれてしまった。

あのまま、わけもわからない異世界に飛ばされるよりかは、と風の中心部に媒体を投げ込んだ。

アレは音巫女… わしの孫の乙見が会社で手がけているという乙女ゲームというやつじゃ。初めて今回プロジェクトに加わったとかでまだ未発売のソレは試作らしい。おじいちゃんにあげる!と一つくれたそれを大事にお守りのようにいつも懐に入れて持ち歩いていることはあの子も知らなかったじゃろう。

 ……まさか、こんな使い方になるとは思ってもみなかったんじゃがのう。

あのまま、まったく知らない異世界に飛ばされるよりかはアレを媒体に少しでも見知っている世界ならば…まだあの子自身も安心じゃろ。本来、異世界とは何もない別次元の世界じゃ。しかし、そこに媒体となるモノを加えれば… わしの仮定が正しければアレを媒体にあの乙女ゲームを基盤とした世界に乙見たちは落ちたはずじゃ。

───あとは、あの子次第じゃな。元の、こっちの…世界に戻れるかは───。

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