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――‥ なんで追放しなかったのかって?
しおりを挟む「――‥ はぁーぁ。…ったく、これじゃあ、気にしてる俺が馬鹿みたいじゃねぇか」
ガシガシと頭を搔いて、困ったように溜め息つく。ほんっと、俺、溜め息ついてばっかだわ…。
「……あの頃の彼方は、伊藤 蒼真のことを『蒼兄ちゃん』って呼んでいた。
ま、あの女を追放した後も少しの間は残ってたみてぇだが、執事たちと、ちーぃっと揉めてな、俺にとっちゃぁ実にくだらねぇ内容だったが、それが理由で辞めた」
「なんで、母親と同じように追放しなかったの?」
疑問に思ったのだろう今まで傍観していた副委員長の質問に俺は窓際から見える空を見つめた。
「――‥ 追放しようとした。危険分子。ましてや、アレはあの女… 真紀に盲信的に心酔していたからな。けどな、泣きじゃくる彼方に止められたんだ。『俺から蒼兄ちゃんまで奪わないで…っ!』ってな。俺に必死に縋りつく彼方から… 母親だけでなく、アイツまで取り上げたら彼方は――。
そう思ったら、無理だった。
だから、他の者に監視を付かせ、伊藤 蒼真を俺の監視下に置いた。……どんなことでも、どんな小さなことも些細なことでも、随時報らせるよう監視を徹底させた。
アイツがニコニコした表情で腹の中じゃ何を考えているかわからなかったが、全ては俺の杞憂だったと思っていた。アイツが他の執事連中と、ある事で揉めて自ら退職を願い出たときは」
真紀が脱獄したと同時に姿を見せた伊藤 蒼真。このタイミングをどう捉えるか。
アレが大人しく監視下に置かれてた?…否、ちがうな。恐らく皇一族の弱みになるような情報を探りながら、真紀を助けるタイミングを見計らっていた。
そこら辺が妥当だろうな…。
もし、俺が皇家を手中に収めるなら…
最も簡単に堕ちそうな人間から近づく。そう、狙うなら先ずは子供からだ。
闇を知らない子供ほど落としやすいものはない。ましてや、彼方は俺が故意に一族の闇を裏を見せないようにしてきた。
その上、彼方は俺の弟で現当主である俺に最も近い身内。さらに言えば、伊藤 蒼真を『兄ちゃん』と恋心ながらに慕っていた。俺がもし連中なら落としやすいか落としにくいか分からない他の奴らより『彼方』に近づく。
――‥ 皇一族の弱みは『身内』だ。過去の惨劇から、特に血の繋がりを大切にするようになった。即ち、それは致命的。
だからこそ、
巻き込まれないために早々に彼方を安全な場所に逃す必要があった。一族のためにも、彼方のためにも――。
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