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第1章 月森ヶ丘自由学園

それで、涙のヤツが悲しまないとでも思ったのか!?

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  ガンッ!

「くそっ!! あの子供を犯人に仕立て上げようと思ったのに… あの糞ガキ共め!!」

一人体育館に残った学園長は苛立たしげに壁を蹴る

PiPiPiPiPi…


「私だ!あのガキを捕まえたのか!?」

かかってきた電話に苛立ちから舌打ちする。


『いえ、申し訳ございません。撒かれたようで……見失いました』

「チッ…この馬鹿タレがっ!!もういい!二日後の取引は成功しなければならないんだ!! これ以上、あの子供に邪魔をされてたまるものか!!

取引のためにも、涙には犠牲になってもらう。初めて見たときから目をつけていたからな……取引の商品として……ククッ。いいか、取引のときには絶対に失敗するなよ」

  ピッ

「悪く思わんでくれよ、涙…。お前は本当に商品としての価値が高いのだからな」


踵を反すと、歩き出す………その顔に歪んだ笑みを浮かべて――‥。

「チッ…ったく、あの風紀は一体何処へ行きやがったんだ」

生徒会室に戻った伊集院は、何が起きているのかわからず苛立ちから舌打ちする‥

「本当に何処へ行ったんだろ?」


そう呟くように言うのは会計の赤城、

「………」

そんな赤城の言葉に賛同するように頷く書記の天上。

「…ハァ。で、瑛の奴は何処に行ったんだ?」


一緒に戻ってきたと思っていたのに、いくら生徒会室を見渡しても姿が見えない柊、赤城と天上に聞くが、答えたのは赤城だった‥

「あぁ‥瑛ね、なんかさぁ、弟の涙君と会ってないみたいでさ。教室に行っても寮に行ってもいないって…
胸騒ぎがするからってさっき行っちゃったよ?……なんか、学園長に聞きたいことがあるとか」


「なんで言わなかったんだよ!?」

「ご、ごめん…。だ、だって、瑛に頼まれたんだもん!あまり、大事にしたくないし、胸騒ぎも涙君がいないのも思い過ごしかもしれないからって‥‥。

勘違いだったら、困るから、あまり大事にしないでって…。 特に、伊集院は突拍子ですから。ってさ」


それを聞いた伊集院は赤城に怒鳴りたくなかったが、困った表情の赤城から察するに、柊に頼まれ断れなかったのが見てとれる…

「ったく、あの馬鹿」

伊集院は柊から学園長の話しを聞いた為に、直ぐさま学園長室へ向かった 。

「涙を何処へやったんです!!?」


一方、学園長室では柊が学園長に怒鳴り込んでいた

「涙?さぁ、私は知らない。涙がどうかしたのか?」

「ふざけたことをっ!!!生徒の数人が、伯父さんと涙が一緒にいたのを目撃しているんですよ!?
聞いた目撃情報では、涙が消える直前だったらしいじゃないですか! あの子を一体、何処へやったんですか!!」

  くくっ…


「そこまで怒ることはないだろう? 勘当されたとはいえ、少しならず血が繋っている親戚なのだから」

ニヤニヤとイヤらしく笑みを作る叔父に吐き気がした。

「貴方のような人間と血が繋がっていると思うと吐き気がします。」

あまりの不愉快か、柊はより一層眉間を寄せる


「本当に瑛は可愛げがない。それに比べて、涙は… 初めに目を付けていたときよりも、いっそう可愛いらしくなって…

おかげで私は、また金が入る」

実に愉快だ!と笑う学園長に柊は怒りで拳を握り締めた。

「貴方は… やはり、生徒が消えた一連の事件に関わっていた犯人だったんですか」

「あぁ…。くくっ‥だとしたら、どうするつもりだね?大人と子供では世間の聞く耳も違うだろう?第一、私が犯人だという証拠はない。警察共に言うだけムダだ。
それに……… 弟の身が心配なら、余計なことを口走るな。詮索するな。 それがどういう意味か、頭の良いお前はわかるだろう?

――‥ なんならお前が弟の代わりに『バンッッ!!』


「スミマセン学園長。ノックをしたんですけど返事がなかったもので」

部屋に突如乱入したのは、伊集院だった…。

「まだ、生徒会の仕事が残っていますので…… 柊 は連れて行きます」


「フンッ!勝手にしろ」

突然の伊集院の乱入に、驚きに目を見開くも一瞬で、 苛立たしげに舌打ちした

  キィィーッ…

          バタン――‥

「何故、来たんですか!あと少しで…」

「いい加減にしろよ!お前、なに自分が身代わりになろうとしてんだよ!? んなことして、涙の奴が悲しまないとでも思ってんのか!!!」

珍しく声を荒げる伊集院に柊は驚きでア然と固まった。
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