室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

序章 英国フォルティア学院

何処となく似ていると思いませんか？

『じゃあ、後は任せるよ』と言ってこの場を後にしたクロスに、クリフェイドは小さく溜め息ついて、元々の身長を除き､メイクによって自分と瓜二つの顔にされたウィンディバンクの子供に目を向ける‥ 


「君にも迷惑をかけてすみませんでした。彼も‥ 普段はああではないんですが。

一つ、訂正させていただければ…


父親という存在に、彼を基準に考えないで下さい。『父親』という面では彼は参考にならないと思うので。」



父親という存在をあれを基準に考えるな、というクリフェイドにコクリと頷く。


「いえ、寧ろ助けて頂いて…。

僕、『お父さん』という人に少し憧れていまして、僕にお父さんがいたらこんな感じなのかな…ッて思ってたんですけど」


そう言って苦笑いを浮かべる。


「怖くなっちゃって‥ 」



やっぱり、お父さんが欲しいだなんて思ったのがいけなかったのかな…。と漏らす彼にクリフェイドは溜め息つく


「いえ、彼を参考にするのが間違いなんですよ。そうですね、『父親』の参考になるとすれば、そこに隠れているーー

――‥ ウィンディバンク財務大臣、彼がその参考に当てはまるかと思いますが」


ちらりと視線を向けるクリフェイドに


「え？」

同じく振り返る子供…


「んなﾞ…ッ！？」

突然のことにひどく動揺するウィンディバンク。



「――‥ 彼こそ、父親の鏡では？彼には子供がいて、理由あってこそ自分が父親だとも名乗れず、子供にも明かしていないらしいですが、

子供の誕生日には毎年欠かさずプレゼントを家の前に置いていくそうで…  」


『あっ！』ハッとしたように顔を上げたウィンディバンクの子供は『そういえば僕の家にも‥ 』と漏らす。



「そうですね、君のその瞳の色も顔つきも‥  何処となく彼に似ている気がしますが」


その父親役に彼なら最適だと思いますよ、ね？ウィンディバンク財務大臣…？と､その手を取ってウィンディバンクに促す



「今回の騒動に巻き込んでしまい彼に申し訳ないので、ウィンディバンク財務大臣… クロスの代わりに『父親』役として彼を事務所へ送って行ってもらえませんか」

笑みを浮かべて送り出すクリフェイドに、ウィンディバンクの子供は困惑する。しかし、それを遮るかのようにウィンディバンクが口を開いた。



「わ… 私でいいのなら、送って行こう！」


「いいんですか？」



不安げに見上げる息子にウィンディバンクは嬉しそうに笑う


「あ、あぁ！もちろんだ！！もし …君がいいのなら、是非ともお父さんと呼んでほしい」

真剣な眼差しで、



「――‥ それから、君にいろいろ話したいことがあるんだ。謝罪と…」


「僕もいろいろ… お話ししたいことがあるんです」



『――‥ お父さん』


照れたようにだけども嬉しそうに笑う息子にウィンディバンクは目尻を優しげに細め、

息子の手を引いて扉へと向かう



「――‥ 借りは返しましたよ」

「ﾌﾝｯ!…借りを返した､か…。なら、この礼は言わない」



 すれ違いざまにクリフェイドは、ぼそりと漏らす
それにウィンディバンクは小さく悪態つくが、どこかその表情は嬉しそうだった。