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序章 英国フォルティア学院

どいつもこいつも… 僕は男だ!

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「…なぁ、お前なんで気付いたんだ?」


クリフェイドに鋭い目を向ける…

「臭い、ですかね」

小さく息をついて言った


「あなたが使った隠し通路は旧隠し通路、陛下たちが知っているのはできてまだ新しい隠し通路。

ーー…旧隠し通路はその昔、この城で行われていた拷問部屋に通じていて、今は古株… 旧大臣らしか知らない通路、
理由は前国王がまだ生前のときにその通路を封印し、新たな隠し通路を作った。その新しい通路こそ、陛下がつい先日に使った通路。

恐らく、前の国王は臭いが不快だったのでしょう」


「……臭いだと?」




「例え、今使われていなくとも、以前は拷問に使われていた部屋、消臭しても消臭できないモノもあります。


特に【血】というのは、一度こびりつくと、なかなか取れません。コンクリートやカーペットなどに飛び散った血痕は、長年放置されることによって浸透していく。

ルミノール液をかけてみればわかりますよ。あちこちに残る血の痕が…。そして同じように長年放置された臭いは部屋そのものにこびりつく。

けど、そこまで強い臭いでもない。ですが、時々僕みたいな人間がいるんですよ。臭いに敏感な嗅覚の持ち主 が。

…恐らく、前国王も敏感な嗅覚を持っていたのでしょう。それに…


視たくないモノを視ないためにそこを封印したのではないのでしょうかね」

もういいですか? と首を傾げるクリフェイドに緊張感はゼロだ。

「…視たくないモノ?んだ、それ?」

男は首を傾げる


「拷問部屋ですよ?つまり、そこで殺された人間もいるわけです。ましてや、拷問され死んだ人間はさぞかし無念だったはず。
前国王は呪い師にお守りでも貰っていたのでしょう。その通路を使っても自身に何か起こらないために--

ですが、自分の身に何も起こらないとはいえ、視るというのにショックを少なからず受けていた前国王は呪い師に札を作らせ、忌まわしいあの通路を封印した。


そこまではよかったのですが、そんな理由など知るよしもない裏切り者の古株があなたに外に通じるその通路を教え、封印していた通路が開いてしまった‥

恐らく、体調の優れないアシス王子と今いないアゼル王子は少なからず、それに影響されているはず--

ならば、元の根源を断ち切ってしまえばいいだけの話…」


ですよね?とクリフェイドは男を見上げた。


「は?」


「だって、あなたはその呪い師か何かの息子か何かでしょう? オーラというか何か… ねぇ…

あれは無念が狭い箱に閉じ込められたに過ぎず、恐らく王家には呪いがかかっているでしょう?

ですが、あなたのお母様である呪い師が前国王にお守りを渡す以前に、呪いを抑える札を部屋に張っていた。前国王は知らなかったでしょうがね…


でなければ、今頃王家の血は途絶えていたはずです。積年の恨み・無念は大きな呪いへと変わる--

万が一の為に、その札は普通の人間の目に止まらない場所に張っている。

…あなたは呪い師を引退したお母様の頼まれて、札を張替えに来たのでは?計算すると、そろそろ札の替え時ですからね。ですが、あなたは教えて貰った通路を知らずして通ってしまった。そのときに張っていた札が少し破れたのでは?

封印が半分解かれ、今の状況となってしまった。とりあえず、混乱させないように… とアゼル王子のフェイスマスクを被って本人に成り済ました…」

男はクリフェイドの言葉にキョトンとした表情になると、腹を抱えて豪快に笑った。 


「へぇ… 面白い奴だな?ただのガキかと思ってたら、頭は賢いみたいだし?

んで?他に気付いたことは?」

ニタニタと笑う目の前の男に、少し言い淀むと小さく息をついて言う

「…表では呪い師、裏稼業は――…という盗賊、ですよね?」


「んー…? あったま良いんだな、お前。うちの嫁に来ないか?」

「…………殴られたいですか?」

冷ややかな視線を送るクリフェイドに男は残念そうに大袈裟に肩を竦めた


「連れねぇ奴…」

と、ぼやく男にクリフェイドは、すました顔で男の足を踏み付けた。
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