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序章 英国フォルティア学院

だから私は戻ってきたんです。悪魔になってでもーー…

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 昴――‥ ?

昴は懐かしそうに微笑むが至ってクリフェイドは昴の突然の行動に、わけがわからず驚くばかりである

「昴…?」

   そう…

あの大聖堂の地下に眠るのは貴方の城、

貴方が弱き人間のために…

異端だと迫害された人たちのために造った都市、


それは迷宮に近い大きな大きな城…

迫害から安息を約束された地、


フランス王、フィリップ四世の手から貴方を護るとはいえ、貴方を一人にしてしまい、すみませんでした…

裏切りと急なフィリップ四世の襲撃に、


咄嗟に貴方を眠らせ、聖杯と地下への道と共に貴方を…

術で地下へ… 閉じ込めたことをお許しください。

そう、これは懺悔――‥

あのとき、貴方は我々と参戦するつもりだった。ですが、私は気づいていました。貴方が悪魔を使役することを嫌だということを。そして、参戦ではなく――‥


貴方は自分の身と引き換えに私たちから手を引くように交渉しようとしていたことも…

交渉が決裂した際、自身の命と引き換えに私たちを逃がす魔術を使うことに私は…… 気づいていました。

だから、あの日――‥ 


あのとき、貴方を護るため一時的に貴方を眠らせたと同時に今まで築いてきた古代都市に封印しました…

ですが、貴方を眠らせたといっても、すぐに目を覚ましたでしょう…

地下と地上の差は、さほど変わらない

それでも、人間ながらして膨大な魔力を持つ貴方は他の人間よりも寿命が長く、歳をとるのも遅かった…

一人、また一人…と老いぼれて寿命が来て… 死に… 日に日に減っていく彼らを見て、貴方は何を想ったのでしょうか――‥

「……昴?」

片膝つく昴にクリフェイドは困惑げに声をかける。昴は悲しみを帯びた瞳で曖昧に微笑んだ。


そう、テンプル騎士団の背景には忘れてはならない貴方の存在。貴方がいてこそ、テンプル騎士団という組織が存在した…

荒廃した教会をテンプル騎士団が変えたと言った。けど、本当は… 私たちがしたことは貴方の言葉に従って動いただけであって、地下に都市を築き上げたのは本当は貴方だったんですよ?


今明かせば、貴方は混乱するでしょう…? ですから、私は貴方に嘘をつきました。思い出してほしくないというのもありますが…。

ーーだって、そうでしょう?


私たちテンプル騎士団がフィリップ四世に殺されてから、地下の都市で日に日に減っていく人々、自分より先に逝く彼ら…

歳をとらない貴方自身、いつしか目を開ければ… 貴方は一人ぼっち。広い広い迷宮ともいえる宮殿に… 話す相手もいない、人の途絶えた街。寂しくないはずがないでしょう?


無駄に広く大きい… かつては楽園とも言われた世界に貴方は一人ぼっち。

 そう――‥

貴方は今と変わらない若さで、孤独死したんです…… あの地下の、かつて楽園と言われた場所で 。


…そんなこと、貴方に思い出してほしくないんです。だって、あまりにも悲しいですから…

だから、私が嘘をつくことをお許しください。

もう、寂しい思いをさせないために私は悪魔となって貴方の元に戻ってきたのですから――…


「――‥ もう、貴方に寂しい思いはさせませんから…

ずっと、お傍にいますから――… だからもう、眠っても大丈夫ですよ。貴方が目を開けたとき、眠りから覚めたとき、私は常に傍におりますから。だからもう、一人ではありませんよ…」


私は知っています。貴方が不眠症なのを…

その原因は貴方の前世。先に逝く人々… 寂しさ、孤独感、貴方は何時しか眠るのが怖くなった‥

それが無意識だけども、本能が覚えているのでしょう。だから、今の貴方は中々寝付けず、不眠症なんです。

「…知っていたのか」

教えていないはずが昴にバレていることに驚きを隠せないクリフェイド、

「執事たる者、主のことを知りつくしていて当然です」


私は悪魔に… 殺された同胞たちは同じく悪魔となった者もいれば天使になった者もいる。クローシェはその一人に過ぎない。

転生した私たちが再び、あの地へ足を運んだとき…


貴方は今と変わらないお姿で、眠るように… 死んでいた。

人一人いないあの地で貴方は何を想って日々を送っていたのでしょうか… 。何を想って死んで逝ったのでしょうか――‥

私たちは貴方の亡きがらを丁重に葬儀し、貴方の遺体を…震えるこの手で葬りました…

それから何百年、何千年もの間、貴方が再び輪廻することを…新たに転生するのを待っていました。


そして貴方は転生し、私たちと再会しました。何も覚えていない貴方、ですが、危なっかしいところや話し方、そのお姿に性格…

あの頃と何も変わらない貴方が愛おしくて堪らないんです――‥


昴はゆっくり立ち上がると、クリフェイドを優しく抱きしめた。

いつもと様子のちがう昴にクリフェイドは何も言わず、好きなようにさせた


「すみません…

少しの間、このままで……」


抱き合う二人を月の光が優しく照らしていた‥。
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