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序章 英国フォルティア学院

天使との出会い

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 キィー…
      バタンッ!

礼拝堂から退出したクリフェイドは、ほっそりと優美な円柱が並ぶ回廊を歩いていく

全てがゴシック様式で柱や回廊には彫りの深い装飾が施されていた。

……これはまた、素晴らしいな。

その美術の美しさにクリフェイドも思わず足を止め感嘆するばかりだ。歩く場所によって彫りの装飾がちがうことに気付いたクリフェイドは、道に迷ったという名目の元、何かと歴史が古そうな… この大聖堂の中を探索することにした。

……が、ある一室に足を踏み入れた瞬間、いきなり突風が襲った。

 ヒューッ!!

だが、それも一瞬のことで何処からともなく吹いた風は止んだ。

「……なんだったんだ?」

首を傾げた。

…と、同時に背後に人の気配を感じたクリフェイドはハッと振り返った‥。

― - バサッ

が、クリフェイドはすぐに我が目を疑った。何せそこには――‥

そ… そんな馬鹿な!?人が宙に浮いているだと!??それにあの羽は… う、嘘だ!!!僕は断じて認めない!!

白銀の髪、白い肌、青い瞳。

膝下まである白いコートを首元まで乱す事なく着込み、手には白い手袋。

髪は長く、身長は高い。… というよりクリフェイドからしたらかなりデカい。その顔は無表情というわけでもないが、訝しげな目がクリフェイドに注がれている。
柔らかとは真逆なその美貌は一言で表せば“氷”を連想させた。だが、女性と見間違えそうなその端整な顔立ちが、また彼の美しさを際立たせていた。

背中についた大きな白い羽でバサッとまた音を立てる…


でかい天使が宙からクリフェイドを見下ろしていた。

ありえない…っ 僕は現実主義者なんだ!!現代科学を愛してるリアリストなんだ!!!こんなことがあってたまるかっっ!!あぁそうだ!!きっと僕は疲れてるんだ!だから、在りもしないモノが視えるんだ!!!


よし!そうと決まったら無視しよう!これは幻覚… これは幻覚…

「これは幻覚… これは幻覚… 」

ボソボソと呪文の如く呟くクリフェイド、端から見たらその光景は少し怖い…

『おい、そこの子供… 私が視えているのだろう? いい加減、無視するな』

が、はそうはさせてくれなかった‥。

腕を組み、天使とは言い難いどこか傲慢そうな態度で、フンッとクリフェイドを小馬鹿に見下ろす白銀の髪の天使。

「…………」


ジッ… と宙に浮く彼を見るクリフェイド、

「いや、ありえない… これは夢だ!リアリストの僕が… こんな非科学的なモノの存在を認めるわけには… いや、だがあれは宙に浮いてるし…」

しまいには頭を抱え、ぅ゙ー… と一人唸りはじめた。

が、宙に浮く男はそんなクリフェイドに少し憐れみな視線を送っていることに当の本人が気づくことはなかった。


『………』

宙に浮いている男はクリフェイドを見兼ねて溜息吐いた

『私の名はクローシェ…  見たとおり上級クラスの天使だ』

羽をバサバサと動かし、前で腕を組み見下ろす自称天使に…

「……天使?こんな偉そうな俺様男が!?天使!? 」

ありえない… と顔をしかめるクリフェイドに対し、ご立腹の様子の天使様もといクローシェ‥。その証拠に眉がピクピク、とヒクついていた。目は細められ… まさに"氷"。その表現のしかたがピッタリだった。

『……私に喧嘩を売る気か?』


だったら、今すぐ地獄に突き落としてやろうか? と無表情で問うクローシェ、

……が、クリフェイドはこれ以上何も聞こえていない知らないとばかりに背を向け両手で耳を塞ぐ。そんなクリフェイドの意地にクローシェも呆れた視線を向けていた‥。

呆れ顔を見せるクローシェは小さく息をつく

『それにしても… お前はなかなか面白いモノを持っているな』

  面白い‥モノ…?

クローシェの言葉にクリフェイドは振り返り、見上げた。バサバサと音を立て、宙から降り立つクローシェは腕を組んだままクリフェイドを見据える…


『数奇な人生というのも、人によっては幸もあれば不幸もある…

クリフェイド・シュバルク、ただでさえトラブル体質らしいがお前の持つアレは近いうちに覚醒するだろう。そうなれば、さらに増えるだろうな… 厄介事が』

胡坐をかき、白銀の流れる髪を弄り淡々と話すクローシェ…。

ちょっと待て。

「ちょっと待て。なぜお前が僕の名前を知っている!?」

心底驚いた様子のクリフェイドに鼻をフンッと鳴らす

『愚問だな。最初から言っているだろう? 私が天使だと。知っていて当然。人間と一緒にするな』

小馬鹿にした表情で見下ろす俺様天使に、クリフェイドは眉を吊り上げる…

どうやら、二人の相性はイマイチ良くないらしい。

……ホント、偉そうな天使だよな

「クローシェだったけか?その天使様がこんなところで何してるんだ?」

怪訝な表情でクリフェイドは諦めたように息をついた。

リアリストとしては… いや、僕としてはこんなこと信じたくないが、ここまで来たら…もう 信じるしかないだろう。

『別に。ただあまりに暇でな? ようするに散歩だ』

腕を組み、ドドーンと告げるクローシェにクリフェイドの眉がピクリと動く

「……暇? 天使なら、仕事しろ。困ってる奴らはたくさんいると思うが?そういうのが仕事じゃないのか?」

もはや、クリフェイドは呆れた表情だ‥

『フンッ 困ってる奴らを助けてたらキリがない。天使とてボランティアじゃないからな…
それに、願いばかり叶えては自分で努力しなくなる。何もかもに貪欲になり、力を富を名声を地位を望み… 』

クローシェはふと声を低くした

『やがて己の身を滅ぼす。周りの人間を巻き込んでな…。そして、それはいつの代も同じ。結局、人間とはそういうものだ』

冷めた口調で淡々と話すクローシェ…

『皆が皆そういうわけでもないがな』

 ところで…

『ところで小僧、お前は自覚がまだないのか?』

クローシェは突然、クリフェイドの顎を掴み上げ、その瞳を見つめた

「――ッ! 何をす――『瞳…』は?」

顎を掴み上げたまま、クリフェイドの瞳を見つめる…

『目に違和感を感じたことはないか?』

 目…?

クリフェイドの訝しげな顔にクローシェは溜息。

『その様子からするに、覚醒の前兆はまだのようだな。…Σολομ?νの片割れの魂を持つ者よ、どういう形しろ何れ二つに分かれた魂はお前と一つになるだろう。
それをお前が望まなくともな。今言ったことは私の予言だ』


クローシェはふと、掴んでいたクリフェイドの顎を離し笑みを浮かべた

『大抵、私はここにいる。いつでも来るといい』

『Σολομ?νの鍵を持つ者よ』

フッと笑うクローシェ、そのとき突風が起こり、突然の風に目を庇ったクリフェイドが手を退けると‥

そこにクローシェの姿はなかった。
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