上 下
35 / 516
序章 英国フォルティア学院

師匠の扱いは難しい

しおりを挟む
「会長は、貴方々の悪行を耳にしましてね… 
『学園に入って半年後、もし本当なら身内の醜聞を広めるわけにはいかない。その二人を探ってくれないか』と依頼してきたんですよ。自分が動けば二人の耳に入る、そしたら警戒されるからと…。お金も貰いましたし、断れませんし。

なにより、師のご友人の頼みだから断るに断れないし、あのジ…師匠は依頼金半分を持ち逃げするし」

    師匠?


「クリフェイド、師匠とは一体なんのことだ? というより、いつ知り合った?」

「え?そこの補導警官に強引に補導されそうになったとき… ですかね」

"そこ"を特に強調してアゼルをチラ見するクリフェイドにヒューは俄に眉を寄せた。

「なんかさぁ、言葉に刺があるよね。一応弁解させてもらうけど、俺は悪くないよ?深夜に出歩くガキが悪いんだから」

ヒューに睨まれたアゼルは弁解すると同時に"ガキ"を強調して言った。

「…で、自称、師匠と名乗る人+α+βが見事に撒いてくれたんですよ」

「いや、人の次のα+βが全く意味がわからないんだけど」

「………気にしないで下さい。僕も極力、あの人たちと関わりあいたくないので」

というクリフェイドは遠い目をして言った。

…唯一言葉が通じる師匠は、女の尻を追いかけ回す飲んだくれの糞ジジイに… 手癖の悪いサル。
一番まともと言える師範は会う度にやたらと跳び蹴りをかますカンガルー… このトリオが知る人ぞ知る三大師範だ。

しかも、関わりを持つ接点さえなかった僕は何故か成り行きで、この三人(匹)の弟子になってしまったわけだが…

全くもって不覚である。唯一尊敬しているカン=ガ=ルー 師範は自分で言うのもあれだが物凄く短気だ。カン=ガ=ルー師匠は三人(匹)の中で一番好きだが、なにかとすぐに人を踏み付ける悪い癖はやめてほしいと僕は切実に願うばかりだ。

で、今回の依頼は三大師範の中で唯一、人間である糞ジジイの友人である会長からの依頼だが、あの憎たらしい糞ジジイに弱みを握られてなきゃ誰がこんな依頼を受けるか!


「会長の伝言をお伝えします。

貴方々二人は会長の厳しい監視の下、咎人の塔にて幽閉します」


淡々と言い放つクリフェイド、その瞳は理事長親子に向けられる。


「咎人の塔だって!?」

アゼルが驚愕に顔を歪ませるのも無理はない。…咎人の塔、別名 罪人の塔と言われし天を仰ぐようにそびえ立つ古き巨大な塔は、千年も前から密かに存在する古の塔。
伝承などは殆ど残っておらず、ただ密かに囁かれる噂だけにその存在を知る者は数少ない。無論、王族であるアゼルも今まで伝説とばかりに思っていた塔の存在を初めて知ったくらいだ――‥。

「なんで君が…」

塔の存在を知っているんだ!? とばかりに、クリフェイドに目を向けるアゼル。その表情からアゼルの言いたいことを察したクリフェイドは踵を反し、扉に顔を向けたまま言った

「……僕は何も知りませんよ?僕はただ、言われたことをそのまま告げただけなんですから。まぁ偶然とはいえ、依頼を受ける前にそこの生徒会長に襲われかけたんです。その仕返しとでも思ってくれて構いませんよ」

クリフェイドは、やっと終わったとばかりに寮へ帰ろうと扉のほうへ足を進める。その刹那――‥

    ガシャァァァァァン!!!!


派手に割れたガラスの音…


ーーそして、部屋に広がるアルコール臭。

クリフェイドが扉に手をかけた途端、理事長は取り押さえる男の隙をついて デスクの隣に立つ棚に走り、その棚に立ち並ぶワインを掴むや、クリフェイドに向かって怒り任せに投げたのだった…。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

副会長様は平凡を望む

BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー 『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』 …は? 「え、無理です」 丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

生徒会補佐様は平凡を望む

BL
※《副会長様は平凡を望む…》 の転校する前の学園、四大不良校の一つ、東条自由ヶ丘学園でのお話。 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢ 『───私に喧嘩売ってるのでしょうか?』 南が前の学園で、副会長として君臨するまでの諸々、武勇伝のお話。 本人の主張する平凡とは言い難い非日常を歩む… そんな副会長サマもとい南が副会長になるまでの過程と副会長として学園を支配… 否、天下の副会長様となって学園に降臨する話である──。

和泉くんの受難

BL
『こっちへおいで…』 翁のお面を付けた和服の青年に手を引かれ、少年はその手を掴んだ。 ――――――――‥ ――‥ 「…ってことで、和泉くんにはそろそろ うちの学園に入ってもらいたいんですがねぇ」 「え、無理」 首を傾げる翁お面の青年に顔をしかめる。 「だって、俺は…」 遠い昔、人間であったことを捨てた少年は静かに溜め息ついた-

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

処理中です...