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第1章 月森ヶ丘自由学園

トラブルメーカーな室長にだけはバカとか言われたくないです!

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「…んだと!?このガキっっ!!」

クリフェイドに武器なしでは戦えないくせに…と馬鹿にされたターナーは勿論、黙ってはいられなかった。

「ぎゃあぎゃあと五月蝿い。ああ、そうか!それが所謂、負け犬の遠吠えというやつなのか?」


クリフェイドもやられっぱなしの性格ではないことは確かだが、状況が状況だけに影から見守るシフォンはハラハラ…する。


(…ちょっ!!相手を挑発してどうするんですか!!)

シフォンはクリフェイドを追う前にマコーネル達に知らせなかったことを悔やんだ。


(連絡しようにも、此処からだと漏れる声にバレてしまいますし、かと言って此処を離れるわけにはっ!!)

シフォンはシフォンで、どうするべきか葛藤していた‥。

「…なら、僕と勝負しないか? 命懸けのゲームという大勝負を」

クリフェイドは、ほくそ笑んだ


「命懸け、ね…? それはまた面白そうなゲームだな?ゲームの内容を聞こうか」

クリフェイドの提案に興味を持ったターナーは、そのゲームの内容について聞く。


「君が両家の人間を納得させ、僕を捕まえ婚姻届けを書かせた暁には君の勝ち。さらに、両家を納得させても、僕を捕まえ僕本人に婚姻届けの書類に直筆のサインを書かせなければならない。

…だが、先に僕が君の悪事の証拠類を手に入れ警察に摘発、又はネット上で公表すれば僕の勝ち。


君が勝った暁には、僕を殺すなりなんなりするといい‥。ま、そうでなくとも君の場合は、真っ向から刺客を送り込んで来るだろうけど…。僕が勝った時は、君達親子を社会復帰できないようにしてやる。貴様の場合は牢屋行きだがな。

それとゲームについてだが、ゲーム中は互いに命懸け。つまり、ゲーム中は‥」


「互いに何をしてもいいっつーことか?」


「そういうことだ。ならば、お前もこのゲームに文句はないだろう? どちらにせよ、生き残るのはゲームの勝者。

 なら…

勝ち残るためなら、全力で相手を叩き潰すってもんだろ? 僕らは互いに負ける気はない。僕は婚姻届けに直筆しないし、そっちも公表されないためにも、互いに全力で潰しにかかる‥

ただ、その勝敗はあくまでも君は両家を納得させた上で僕に直筆を。僕はネット上に君の悪事を公表、そのどちらかが先に達成したときは、ゲームは終わり。勝者の約束を果たしてもらう。ま、その前にゲーム中にどちらかが死ななければ…の、話しだがな」


(ちょっと待ってくださいよ!!!それじゃあ、ホントに命懸けじゃないですか!)

シフォンの心境も知らず、クリフェイドはさらに続ける


「ま、簡潔に言えばゲーム中は互いに何をしてもいいってことだ」

ニッ…と笑みを浮かべるクリフェイドに続きターナーも、にやりと口角を上げた。

「…それで? ゲームをするにも、お前はこの状況から、どうやって抜け出す気だ? それともゲーム始める前に蜂の巣になる気か?」


銃口をクリフェイドに向けたままターナーは、一歩一歩クリフェイドに近づいていく

クリフェイドは、ターナーが一歩一歩近づく度に後ろへ下がるが、とうとう壁に当たってしまった!!


 トンっ…


しまった…!

クリフェイドは冷や汗をかきつつ、必死にこの状況を抜け出すための策を練るが一向に良い案が浮かばない‥

(――…室長っ!!!)

シフォンはクリフェイドの危機に銃を構え出ようとした。


 が、しかし。

シフォンは突如、足元に違和感を感じた‥

(………)


気になったシフォンは何かと思い、足元を見れば‥

 チュウ!


そこには、

毛むくじゃらの‥ ネズミがいた。


「Σうわ゙っ!!」

ネズミが嫌いとかではないが、突然足元に現れたネズミの出現に驚いてしまったシフォンは、うっかり声を出してしまった!


「!? 誰だ!!」

自分とクリフェイドの二人しかいないと思っていたターナーは突如、聞こえた第三者の声に驚き、そちらへ顔を向けた。

クリフェイドはその一瞬の隙を見逃さない--


「お前…っ!!たしか…」

ネズミに驚き、声を上げて柱の影から出てきた銀髪の青年を見てターナーは記憶を手繰り寄せる

 ……が、

はっ!!と我に返ったときには既に遅く、


――ドスッッッ!!!

クリフェイドは隙をつき、ターナーの腹に拳を深く入れた


「ぐっ…かはっ!!」

「相手に背を向けるとは無用心なものだな?…ゲーム開始だ」

ターナーは思っていたよりもクリフェイドの拳が効いたようで、呻くばかりで中々立ち上がれない‥

そんなターナーを目の端で捉えつつ、クリフェイドは、あたふたとするシフォンの腕を掴み、そこから逃げるように全速力で走った。


 ぐっ…!

ターナーは呻きながらも、腹を押さえて何とか立ち上がる‥

「くそっ!!ガキが嘗めやがって…  おいっ何をしている!!? 早くあの二人を追え!!!」

騒ぎに駆け付けてきた部下に言うとクリフェイドらを追い掛ける部下の後をターナーも追った‥。


──────……
───… 


「…ンの馬鹿っっ!!なぜ僕が時間稼ぎしている間に逃げなかった!?」

シフォンの腕を掴み疾走しながらも、クリフェイドは怒鳴られずにはいられなかった。

「え゙ー?! 気付いてたんですか室長!? …って、まさかあれが時間稼ぎとか言いませんよね!? 冗談でも笑えませんよ?!」


「そのまさかだ。この馬鹿。お前の存在には途中で気付いたが、それは僕だけだった‥。だから、僕がわざわざ長々と話しを引き延ばしたっていうのに‥‥ 僕の意図にも気付かず、あげくはネズミごときで驚いて出てくるし‥

っとに……………お前は馬鹿だ!」


シフォンは、馬鹿と言われたことよりも、クリフェイドという些か性格に難のある人間に馬鹿と言われたことの事実の方が何よりもショックだった。

「…ある意味トラブルメーカーな室長にだけはバカとか言われたくないです」


シフォンは本心で言った。

「おい、ちょっと待て… それはどういう意味だ!? 」

「だって、本当のことじゃないですか!!」


シフォンも負けじとクリフェイドに言い返す。

が、この二人の声により…


「いたぞ!!!」

「あの二人だ!」


追っ手に見つかった。


「「げっ!!」」

「ちっ… こっちだ!!」


シフォンを引っ張って二階バルコニーに出たクリフェイドは追っ手と対峙するため、シフォンを先に行かしたがバルコニーに出たためにシフォンは行き止まる。
 

 ───キンッ!

          シャッ…


追っ手と短剣で対峙するクリフェイドは今だバルコニーにいるシフォンに怒鳴った

「おい、何もたもたしている!?早く行け!!お前がいると邪魔だ」


 ─ガッ!!─

シフォンに言うと同時に対峙していた相手を腕で払い、後ろに回り込んで手刀を落とした

「いや、そうは言いますけど此処二階ですよ!?飛び降りろ、とか無茶…「つべこべ言わず行けっ!!!」


シフォンの言い分を遮り無視するクリフェイドは有無言わさないうちにシフォンの背中を蹴り飛ばす。勿論、言うまでもなくシフォンはいきなりのことに叫んだ。……いや、絶叫した。

何とか受け身を取ったシフォン。それでも顔は青い…と、その直後シフォンの後ろに何かが降り立った。


 勿論、クリフェイドだった…。


「ボサッとするな。走れ」

会場の敷地から出ようと走るクリフェイドの背をシフォンもまた追い掛けた。


「…くそっ 逃がしたのか。まぁいい…ゲーム開始か。必ず見つけだしてやる」

ターナーは手下に情報を集めろ!と指図すると自分は怪しまれないよう会場へと戻っていった。



 一方、会場では――‥


「た、大変です!大統領っ」


招待客に挨拶回りしていた大統領は、何やら慌ただしい様子の警備員に呼び止められた

警備員は、クリフェイドにキツく言い過ぎた…と自己嫌悪に陥るアクシオンをちらりと見て、なるべく声が漏れないよう最善の配慮を尽くした。大統領はそんな警備員の不審な行動に訝しげに眉間を寄せるも、何も言わず、ただ報告を促す‥


「…じ、実は先ほど、裏方で血のついたナイフを見つけまして、調べていると招待客の目撃者の話しで、金髪の少年と銀髪の青年が複数の男に二階バルコニーに追いつめられていたと…。人を呼ぶ暇もなく、その‥二階バルコニーで金髪の少年と男が揉み合い‥どちらか分からなかったようですが、血しぶきが散っていたとのことをおっしゃっていまして。

───…その非常に申し上げにくいのですが、」


アクシオンの方をちらちらと見ては気にし、話すのに躊躇する警備員の様子に大統領は嫌な予感を覚える。

「その……目撃者の話しから金髪の少年の顔を照り合わしたところ、どうやら、その怪我を負ったかもしれない金髪の少年というのが、シュバルク家の末息子、クリフェイド・シュバルク様ということが判明し『何だって!?』

声を上げたのは大統領………ではなかった!!


「く、ク‥クリフェイドが刺された!?」

「お…お、落ち着けっアクシオンっ!!」


いつの間にいたのか、警備員に掴みかかる勢いで声を上げるアクシオン。ひっ…と小さく悲鳴を漏らす警備員を不憫に思ったアクシオンの同僚、レイジェントは必死に止めに入るが、

「離せ。俺は彼に聞いているんだ!!俺の息子が刺されたのか!?」

「落ち着きたまえアクシオン君。何も君の息子が怪我をしたとは言っていない。ただ、どちらかが怪我し…『ああっクリフェイド!!俺のせいなのか!? 俺が怒ったばっかりに…クリフェイドが‥』


「アクシオン君、話しは最後まで聞いてくれ。 …はぁ…だめだこりゃ。…それでクリフェイド君は見つかったのか?」

ざわめく会場から離れた一同。大統領は報告に来た警備員に問う

「申し訳ありませんっ!!!今、警備員総勢で捜しているのですが、それらしい人物の発見等の報告はまだ届いておりません」

その言葉に顔をしかめた。
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