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第1章 月森ヶ丘自由学園

グレた息子は反抗期を迎える

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───…言えない。あまりにもつまらなくて、とっくの昔に退学していたなんて… 絶対に言えるか。


「………」

返答に困った岬もといクリフェイドは、父と兄の存在に内心、舌打ちするも無言のまま目を逸らす。

どういうわけか、報道陣のヘリが頭上で飛んでいるのだ。下手な発言は避けるべきだと即座に判断した上での態度だったのだが、それが父の勘に触った。

「クリフェイドっ!!」


が、聞かれているクリフェイドは実に鬱陶しげに憮然とした態度で言った。

「……ハァ、五月蝿いですよ父さん。別に、そんなデカい声で怒鳴られなくとも聞こえてます」

わざと手で耳を塞ぎ、五月蝿いとアピールするクリフェイドに父、アクシオン・シュバルクの額にくっきりと青筋が浮かぶ。

「クリフェイドっっ!!俺はお前をそんな子に育てた覚えはないぞ!?」

「ふぅー‥。わかっちゃいませんね。父さん、この際言いますけど、鬱陶しいんです。毎度毎度、付き纏われて外を歩く度に護衛を付けられ……そんな僕にも我慢の限界があるんです。

あれはだめ。これはだめ…と言われたら、逆にやりたくなるのが人間の性というもの。こんな僕にも反抗期というモノがあったみたいですね。いや~驚きです。ま、そんなこともありましてね、グレてみるのも、また一興かと。通っていた英国の学校も退学し、今は気兼ねなく楽しい人生を送っています。…なので、僕のことは放っておいて下さい」

淡々と言い放つクリフェイドに父親は呆気にとられた顔で愕然としていた。

(うわ…きっつ)

シフォンは、ショックを隠しきれないアクシオン・シュバルクに少なからず同情するが、崙は反対に愉しげだ。その証拠に口角が吊り上がっている‥。

「クリフェイド、一体なにがお前をそんなふうに変えたんだ?」

「なに、言ってるんですか。僕は元々こういう性格でしたよ?今まで隠していたのは、こういう面倒なことになると思っていたからですが……。なんて言うか、飽きたんですよね。つまらない日常に。で、せっかくだから家出をしてみたのですが、案外上手くいくものですね」

「俺はそんなふうに育てた覚えはないぞ!?」

グレる息子に父親であるアクシオンは頭を抱えた。

「……父さんは、反抗期を迎えたという僕の成長を喜んではくれないんですか?」

なんか、違う気がする!とそう思うが周りの人間は何も言わない

「息子の成長、か…。勿論、父親としては息子の成長は喜ばしい限りだ」

そうか、お前も、もうそんな頃にまで成長したのかと涙ぐむ。

「そう‥、反抗期というものは誰もが一度はなるもの。それが僕にも廻ってきただけの話し。だから、父さん………僕のことは忘れて下さい。無論、兄さんもです。僕はこれから自由奔放に生きていくことにしましたので」

平然と言ってのけるクリフェイドに父親は猛反対。

「なに、馬鹿なことを言っている!!!こんな物騒な世で子供一人が生きていけるわけがないだろうっ!!」

(いや、あんた、さっき知らず息子を射殺しようとしてたじゃないですか‥;)

シフォンは内心突っ込む

「父さん、可愛い子供には旅させろ!と言うじゃないですか。……父さんは僕のことが…可愛くないんですか?」

そこで言葉を途切るとクリフェイドは、フッと自嘲気味に笑う

「…フッ、そうですよね。僕は血の繋がっていない義息子。嫌われていて当然ですよね。いいんです。わかっていたことですし‥‥。僕のことを本当に可愛いがって愛して止まないのなら、息子の願いの一つくらい叶えてくれるものですからね」

そう、寂しげにエメラルドグリーンの瞳を揺らすクリフェイド。しかし、そのときシフォン達は目撃してしまう。端から見れば、儚げな少年が寂しげに自嘲しているように見えるが、シフォンたちから見れば、口の端が上がっていた。

 そう…。

つまりは、全てが演技。

それに気付いたのは、シフォンと崙とアシスの三人だけだった───。
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