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第1章 月森ヶ丘自由学園

だ・め・ですってばっっ!!!!

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「…………」

「…………」


眠りから覚めた岬は焦点の合わない目をパチパチと二回ほど瞬きした後、今、学園長に腕の中に抱えられているという信じ難い今の自分の状況に‥‥‥硬直する。

なにしろ、学園長と唇が重なる寸前な上、その顔がド・アップなのだから‥。一方、学園長もまさかの岬のお目覚めに驚きを隠せないがニヤつきは収まらない。しかし、しだいに自分に抱えられている岬が顔面蒼白になるや、ふるふる……ッと震え出したことにさらに興奮する。

「あぁっ!霧島君!!そんなに怖いかい? 大丈夫!そんな君を私が存分に可愛がってあげるよ」

その岬の危機?にシフォンは別の意味で不安を覚える


(ま……まずいっっ!!!)

「…き………」

「ん?…き??」


その途切れた言葉を促す

「…き………気色悪い手で僕に触るな!!」

─ガンッ!!─


学園長の顔面に肘鉄を食らわす岬もといクリフェイド――‥。その際に、かけていた眼鏡が落ちてしまったが、今の岬には関係ない

「ふがっっ!!!」

学園長は痛さのあまり手で顔を覆い、疼くまる。

そして動揺のあまり、眼鏡が落ちたことにすら気付いていない岬もといクリフェイドは‥‥‥悶えていた。

 ふるふる……っ


眼鏡がなくなった岬の瞳は本来の瞳になるわけで、そのエメラルドグリーンの瞳は今にも、泣きそう………ではなく、怒りに震えていた。

怒りに震える岬は、バッ!!とチャイナ服の袖口から岬は短刀を取り出した。

(え…なんで、袖口から!?)

「貴様っ!!!今すぐに、この短刀の錆にしてくれるっ!!!」

隙のない身のこなしで、学園長に切り掛かる岬の瞳は本気だった。

その岬の言動に唖然とするも、皆は思う。あぁ…やっぱり彼らと親子だと。口には出さずとも心の中で呟いていた。

「ひっ…ー━━!!!!」

「死ね」

  ─キンッ!!─

「……シフォン!何のつもりだ!?」

シフォンは咄嗟にナイフを投げ、岬の短刀を寸止めると、後ろに回り込み羽交い締めに拘束する。当然、その岬の顔の額辺りにはくっきりと青筋が浮き出ていた。

「だ・め・ですってばっっ!!!!彼は日本人ですよ!此処は中国なんですよ!!そして、俺達は英国!!外交問題に発展するって……前にも言ったでしょう!何度、言わせば理解するんですかっ!!」


一方、シフォンの方も必死だった。なにげに岬のストッパー役のシフォンだが…………心配するところが少しズレている。

「五月蝿い!大体、お前は自国に対し律儀すぎるんだ。毎度毎度、やれ国際問題やら外交問題やら!それと、あえて言わせてもらうが、今の僕にそんな話は関係ない。

 以前ならまだしも… 

僕は降りた。その時点で一般人。今回の件は仕方なかったとは言え、この件が片付けば…すぐにでも姿をくらますつもりだ」

アシスと崙のいる崖っぷちに足を歩ませながらシフォンに告げる岬、そしてその後をシフォンが眉間に皺を寄せたまま走り寄った。

「ふざけたことをおっしゃらないでください!!」

二人は口論するあまり学園長や周りの人間の存在をすっかり忘れていた。

「今日という今日は言わせて頂きますが!!貴方には常日頃から周りとの協調性というものが無さ過ぎるんです!!いつもいつも独断で!その尻拭いする我々、部下の気持ちもわかって頂きたいんですが!!」

「フン!知るか。周りと協調?それこそ、ありえない。僕は常に僕自身の利のために行動しているんだ!独断もなにも協調性を持ってなくて当然だろう!」

一方、岬もといクリフェイドはシフォンの声が鬱陶しく感じるのか適当にあしらう‥。

「な゙!? だ…大体っっ!あんたは勝手すぎるんですよ!!!室長の座だって!!独断で決めて………って一応、言っておきますが、室長は解任されてませんから!」

「は?馬鹿なことを吐かすな。職場の責任者の言うことは絶対。…前副室長に全てを委ねたと、置き手紙において書いてあった筈だ」

納得がいかない岬は俄かに眉を吊り上げる。

「俺を睨まないでくださいよ。そもそも、その託されたマコーネルさんが、この書類は無効と言った時点で、あの置き手紙は価値を無くしたんです。あの人は般若の顔で、あんたを捜してるんですよ?見つかった時はそれこそ……

一、ニ時間の説教じゃ済まされないでしょうね」

(ま、俺もでしょうけど…)

「ちょっと待て。つまり、お前が言いたいのは、僕の今ままでのやってきたことが全て、水の泡…。そう言いたいのか?

フンッ! あいにく、僕は本国へ戻る気はない」


帰るなら一人で帰れ、と岬は憮然とした態度で告げた。

「ハァ、あので…(パァンっ!!)うわっ!!」

銃声によって、シフォンの声が遮られた。

「ぐっ……私を忘れるなっ!!!」

シフォンと岬が視線を向けた先には銃口をこちらに向けたボロボロの学園長がいた。


「…なんだ、まだいたのか」

とっくに消え失せたと勝手に視界から排除していた岬は鬱陶しげに髪を掻き上げる。───と、同時に自分の髪が本来の髪になっていることに気付き、バッとシフォンに向き直った。

「…シフォン、なぜ僕の髪が本来の色になっている?」

学園長に髪を掴み上げられたとき、岬は意識がなかったのだから知らなくて当然だ。

「経緯を述べれば、あの男があなたの眠っているときに髪を掴み上げたんですよ。そのときに、こう……スポッて感じに‥‥‥‥って俺を睨まないでくださいよ。で、その容姿に惹かれたあの男がやたら・・・まぁ、色々あったんですよ」

「・・・その、色々の前の間は何だ?」

意図せず眉がつり上がる。

「ま、気にしないでください。(言ったら確実に殺されるっ!!!)で、それから……あなたのお父様とお兄様が大層お怒りで…」

「はぁっ!?な‥んだ…って…!!?」

シフォンがちらりと視線を向けた先へ岬も視線を向ける。

「げっ…」

「クリフェイドっ!!!どういうことだ!?いや、それよりも何故お前がこんな所に!屋敷にいたんじゃなかったのか!?」

お父様、大変お怒り・・・。

「クリフェイド、お前、そもそも今の時間帯は学校にいるはずだろう?なぜ、外国に…そもそも日本にいるんだ?」

そう、岬もといクリフェイドは英国の学校に通っていた筈。……なのだが、どういうわけか、日本にいる。そのことが、父のアクシオン・シュバルクと兄のヒュー・シュバルクの疑問だった。
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