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第1章 月森ヶ丘自由学園

背後に忍び寄る人影

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 コツコツコツ――‥

壁にもたれ座り込んでいる人影に岬は警戒しつつ、近付く。

───そして覗いて驚愕する。


無駄にゴツい筋肉質の身体…、ハゲかかったブラウンの髪に手入れされていないだろう伸びた髭、


「スクワット…? 」


足を止め、男の固く閉ざされた瞼に腐敗臭の漂う身体を見据える


「死因は銃殺。脳天に一発か‥」


岬は額の真ん中にある穴を見つめ、俄かに眉間を寄せた

「この腐敗臭からするに、死後少し経過しているな。それにコンクリートに飛び散った血…」

次に、壁に飛び散った男の血であろう血痕に目を移す‥

「妙だな。この血痕から、察すると男は抵抗した感じが見受けられない‥。まるで、ただ撃たれるのを待っているようだ。待っている…? そうか!薬か!!睡眠薬を盛られたこの男は、眠ってしまったところを此処で殺されたのか…。なるほど、それなら男が無抵抗で殺さたのも頷ける」


───ってことは、やはり、この男……スクワットの‥


 「替え玉か」


岬は小さく息をついた。


憐れだな…この男も───。


自分の知っている男と、似た姿の男を見て、岬は男のポケットに手を忍ばせて見つけたマッチを手に取ると、

壁でマッチを擦り、無言で男に放つ…


ゴーゴー…と燃える炎、

スクワットは、ヘビースモーカー…。だったら替え玉もヘビースモーカーじゃないと怪しまれるからな…


常にライターかマッチに煙草を持っているスクワットだ。替え玉にそれなりに似せる為に持たせているだろうと思っていたが、


まさか、本当に持っていたとは。

この男も、まさか自分が死ぬだろうとは思ってなかったんだろう。

岬は男のポケットから取り出した煙草と共に出てきた一枚の写真を見つめ、燃える男の遺体と共に写真も燃やした…

その写真には、微笑む金髪の女性とショートカットのブラウンの髪の幼い少女…


そして、その少女の肩に手を置き隣に立つ女性と微笑ましげに笑みを浮かべる男が写っていた

その写真の裏に、英語の綴りでこう書かれていた--



『Love of the eternity…』


--永遠なる愛を…


憐れなこの男を弔い、写真と共に燃やす岬はこのとき気付いていなかった



───背後に忍び寄る、人影に…。
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