上 下
472 / 516
第1章 月森ヶ丘自由学園

悪漢と囚われの涙 - ルイ -

しおりを挟む
「……(重い。重すぎるネ)」

崙はちらりと岬を見て、ふと思った。


(?ボスって‥

こんな性格カ?イヤ、ちがうネ!私の知ってる小生意気なボスは、いつだって自分主義ヨ!……? 何か、おかしいネ)

むぅ~っ…と一人、首を傾げる崙。そこへ崙の部下がやって来た

「ボス、機体は無事着陸しましたが‥」

「…わかったネ」


崙は懐から出した扇を口に当て、暫し岬の様子を眺めていたが部下の報告を聞くなり、パチン!と扇を閉じる。

「あいやぁ!残念ネ、ボス。そこまでネ!目的地周辺に着陸したらしいヨ」

「…そうか。シフォン、馬鹿を救出した後は馬鹿を連れ出せ。僕は奴を始末する…  異論は認めない」

有無言わさない口調で岬はシフォンを見据える。

「………」

(誰にも僕の邪魔をさせない)

岬は踵を反す。

「崙、奴のアジトへ案内しろ」


岬達が作戦実行に移ったのは真昼間だった。

  ガサガサ…

岬達は分かれて雑木林の間を歩いていた。葵と幸村。岬とシフォンと崙の組み合わせで…。目的の屋敷までは、まだ少し遠い。

スクワットの拠点とされる屋敷の広大な敷地は木に囲まれており、またそこは海の崖っぷちでもあった。
そう、その屋敷は海の崖っぷちに立てているのだ。そのため、波が崖に勢いよく、ぶつかる音が時おり聞こえた。

「…ボス、セキュリティーの方はどうなってるネ??」

ガサガサ…

木々を通り抜ける岬達、ふと、疑問が浮かんだ崙は岬にその疑問を投げ掛けた

「それなら心配ない。飛行機にいる時に、僕のパソコンで奴の屋敷のセキュリティーシステムに侵入しハッキングして、セキュリティーをこちらで遠隔操作できるようにした。」

これがそのスイッチだ、と崙達に見せる岬は携帯をちらつかす…


「…携帯ですか」


シフォンは『なるほど』と一人納得する。


「携帯は遠隔操作にも向いているからな。改造しだいでは」

もちろん、爆破もな…と呟く岬、シフォンも崙も岬の性格を考えて、もう何も言わなかった。


ーーーーーーーー
ーーーー

アジト、屋敷内--

とある離れの部屋に涙はいた。



「お…おじさん?ここは、どこ?ぼ、僕… な…なんでベッドにいるの??」

目が覚めた涙は自分の今の状況に戸惑いを隠せない

「なんだ、もう目を覚ましたのか? 喜べ、涙。お前は私のお得意様に買ってもらえるのだから‥」

「ぇ…なに、どういうこと!?」

「正しく言えば、ペット‥愛玩ペットとして飼われるんだよ?ご主人様に、な?」

 にやっ、と口角を上げ、いやらしい顔で涙の身体を品定めするように再度眺め見る学園長に背筋に悪寒が走る。

    ビクッ!

そんな学園長もとい叔父に涙は怯える。

「や……やだっ!お…じさん…どう‥して…」

状況について行けず、頭が混乱する涙は言葉が途切れ途切れになるも必死に聞く

「悪いな、涙。お前は本当に可愛い‥。そうやって泣く顔もまたそそるんだよ… お前を初めて見たときから、お前は良い商品になるって思ってたよ。そして、君は私の期待以上に可愛いく育った。私のお得意様は、君のような子、世間でいうショタが大好きな……人でねぇ、

なぁに、心配いらないさ。主人になる人は"SMプレイ"とかいうものにハマっているらしい。涙はその点、クリアしている‥」

潤んだ目で怯える涙の頬を撫でる学園長は、ふと目を細めた。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

副会長様は平凡を望む

BL
全ての元凶は毬藻頭の彼の転入でした。 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー 『生徒会長を以前の姿に更生させてほしい』 …は? 「え、無理です」 丁重にお断りしたところ、理事長に泣きつかれました。

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

生徒会補佐様は平凡を望む

BL
※《副会長様は平凡を望む…》 の転校する前の学園、四大不良校の一つ、東条自由ヶ丘学園でのお話。 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢ 『───私に喧嘩売ってるのでしょうか?』 南が前の学園で、副会長として君臨するまでの諸々、武勇伝のお話。 本人の主張する平凡とは言い難い非日常を歩む… そんな副会長サマもとい南が副会長になるまでの過程と副会長として学園を支配… 否、天下の副会長様となって学園に降臨する話である──。

和泉くんの受難

BL
『こっちへおいで…』 翁のお面を付けた和服の青年に手を引かれ、少年はその手を掴んだ。 ――――――――‥ ――‥ 「…ってことで、和泉くんにはそろそろ うちの学園に入ってもらいたいんですがねぇ」 「え、無理」 首を傾げる翁お面の青年に顔をしかめる。 「だって、俺は…」 遠い昔、人間であったことを捨てた少年は静かに溜め息ついた-

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

処理中です...