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作れ! 新しいお洋服!
8.新しいお洋服とスパルタプログラム
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アキの微笑みには怒気が含まれていた。
ヌーッティは冷や汗をだらだらとかいていた。
「ヌーは良い子だヌー。だから、アキはそんな良い子におやつ禁止って言わないヌー」
それは、楽観的過ぎる希望的観測であった。
「おやつは禁止にしないよ」
アキはにっこりとした表情で告げた。そして、
「今日から2週間、すべてのお菓子を食べるの禁止な」
ヌーッティにとって無慈悲な審判が下された。
「やだヌー! ヌーからお菓子をとったら何も残らないヌー!」
ヌーッティは泣き叫びながらアキへ懇願した。
「大丈夫。しばらくお菓子を食べなければ、あの着ぐるみもまた着られるから」
アキの言葉は正論過ぎるほどの正論であった。
こうして、ヌーッティの捜索は終わった。
生気が抜けたヌーッティをハンナが抱え持つことになった。
もちろん、監視の役割も込めて。
そうして、トゥーリの生地選びが再開された。
素材探しはあっという間に終わった。
それというのも、ヌーッティが迷子になっている間に、ほとんどの生地や装飾品を選び終えていたからであった。
会計を終えたアキたちは帰路についた。
帰る途中でハンナとは分かれ、アキは白目をむいた状態のヌーッティと、そんなヌーッティをアキの肩の上から見やるトゥーリと共に自宅へと向かった。
そして、自宅の私室へ着いたアキはヌーッティをベッドの上にそっと置いた。
アキの肩から降りたトゥーリはヌーッティの頬をつついていた。
アキはというと、さっそくトゥーリの洋服作りに取りかかったのであった。
――3日後。
完成した新しい服を身にまとうトゥーリは、とても嬉しそうに鏡の中の自分自身を見ていた。
ときどき、軽く跳ねたり、軽くストレッチしてみたりしながら。
「やっぱり、アキって裁縫上手だよね」
アキの部屋の椅子に腰掛け、紅茶の入ったカップを手に持つハンナがトゥーリの様子を眺めながらアキへ言葉をかけた。
「不得手ではないかな。日本にいる梅ばーちゃんにも仕込まれたし」
アキもワークチェアに座りながら喜んでいるトゥーリを見ていた。
「ところで、ヌーッティは?」
ハンナは紅茶をひとくちすすり、アキへ尋ねた。
「ああ、ヌーッティなら、今、オッツォとキルシのところにいるよ」
「森に? なんで?」
ハンナは首を傾げた。
「あのあと、盗み食いをやめて、体型が元に戻ったら、新しい服をつくってあげるって約束したんだよ。それで、今は森でダイエット中ってわけ」
「ああ、そういうこと。まあ、オッツォとキルシなら任せて安心だね」
「きっと今頃、きっつい運動でもしてるかもな」
アキは苦笑を浮かべた。
――同日同時刻。オッツォとキルシの住まう森にて。
「3キロメートル走で10分切るまで休みはないわよ! さあ、走りなさい! ヌーッティ!」
キルシの声が森中に響き渡った。
「ヌー……ヌー……。もう、だめだヌー……」
ヌーッティは気によりかかりながら息を整えようとした。
「まったく! たったの42.195キロを走っただけで、そんなになるなんて、熊の妖精の風上にも置けないわ! オッツォ!」
「はいはい。さあ、ヌーッティ走るよ」
オッツォは言いながらヌーッティにハーネスを付け、紐の部分を自身の腰に巻いた。
「走るぞー」
オッツォが駆け出すと同時にヌーッティは引きずられ、得も言われぬ叫びを上げた。
こうして、オッツォとキルシによるヌーッティ減量プログラムは、このあと数日続いたのであった。
プログラムを終えたヌーッティがどうなったのかは神のみぞ知る。
ヌーッティは冷や汗をだらだらとかいていた。
「ヌーは良い子だヌー。だから、アキはそんな良い子におやつ禁止って言わないヌー」
それは、楽観的過ぎる希望的観測であった。
「おやつは禁止にしないよ」
アキはにっこりとした表情で告げた。そして、
「今日から2週間、すべてのお菓子を食べるの禁止な」
ヌーッティにとって無慈悲な審判が下された。
「やだヌー! ヌーからお菓子をとったら何も残らないヌー!」
ヌーッティは泣き叫びながらアキへ懇願した。
「大丈夫。しばらくお菓子を食べなければ、あの着ぐるみもまた着られるから」
アキの言葉は正論過ぎるほどの正論であった。
こうして、ヌーッティの捜索は終わった。
生気が抜けたヌーッティをハンナが抱え持つことになった。
もちろん、監視の役割も込めて。
そうして、トゥーリの生地選びが再開された。
素材探しはあっという間に終わった。
それというのも、ヌーッティが迷子になっている間に、ほとんどの生地や装飾品を選び終えていたからであった。
会計を終えたアキたちは帰路についた。
帰る途中でハンナとは分かれ、アキは白目をむいた状態のヌーッティと、そんなヌーッティをアキの肩の上から見やるトゥーリと共に自宅へと向かった。
そして、自宅の私室へ着いたアキはヌーッティをベッドの上にそっと置いた。
アキの肩から降りたトゥーリはヌーッティの頬をつついていた。
アキはというと、さっそくトゥーリの洋服作りに取りかかったのであった。
――3日後。
完成した新しい服を身にまとうトゥーリは、とても嬉しそうに鏡の中の自分自身を見ていた。
ときどき、軽く跳ねたり、軽くストレッチしてみたりしながら。
「やっぱり、アキって裁縫上手だよね」
アキの部屋の椅子に腰掛け、紅茶の入ったカップを手に持つハンナがトゥーリの様子を眺めながらアキへ言葉をかけた。
「不得手ではないかな。日本にいる梅ばーちゃんにも仕込まれたし」
アキもワークチェアに座りながら喜んでいるトゥーリを見ていた。
「ところで、ヌーッティは?」
ハンナは紅茶をひとくちすすり、アキへ尋ねた。
「ああ、ヌーッティなら、今、オッツォとキルシのところにいるよ」
「森に? なんで?」
ハンナは首を傾げた。
「あのあと、盗み食いをやめて、体型が元に戻ったら、新しい服をつくってあげるって約束したんだよ。それで、今は森でダイエット中ってわけ」
「ああ、そういうこと。まあ、オッツォとキルシなら任せて安心だね」
「きっと今頃、きっつい運動でもしてるかもな」
アキは苦笑を浮かべた。
――同日同時刻。オッツォとキルシの住まう森にて。
「3キロメートル走で10分切るまで休みはないわよ! さあ、走りなさい! ヌーッティ!」
キルシの声が森中に響き渡った。
「ヌー……ヌー……。もう、だめだヌー……」
ヌーッティは気によりかかりながら息を整えようとした。
「まったく! たったの42.195キロを走っただけで、そんなになるなんて、熊の妖精の風上にも置けないわ! オッツォ!」
「はいはい。さあ、ヌーッティ走るよ」
オッツォは言いながらヌーッティにハーネスを付け、紐の部分を自身の腰に巻いた。
「走るぞー」
オッツォが駆け出すと同時にヌーッティは引きずられ、得も言われぬ叫びを上げた。
こうして、オッツォとキルシによるヌーッティ減量プログラムは、このあと数日続いたのであった。
プログラムを終えたヌーッティがどうなったのかは神のみぞ知る。
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