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ヌーッティのイメチェン

2.アレクシのカウンセリング

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 アレクシはヌーッティが強く関心を抱いた雑誌をざっと見終えると、
「なるほどね。きみはイメチェンをしたいんだね?」
 紙面を開いたまま、上目遣いでヌーッティに尋ねた。
「そうだヌー! 可愛い小熊からかっこいい熊になりたいヌー!」
 ヌーッティは目を輝かせて願望を口にした。そこでアレクシは一つの素朴な疑問を抱いた。
「気になっていたんだけど、きみは自分自身のことを可愛いって思っているのかい?」
 ヌーッティは丸い目をさらに丸くし首を傾げると、
「ヌーは可愛い小熊の妖精さんだヌー。どうして訊いたヌー? アレクシ、変だヌー」
 さも当然といったふうに答えた。
 その返答を聞いたアレクシは肩をすくめて、呆れた様子で溜め息を吐いた。
「それで、具体的にどうしたいんだい?」
「髪型を変えたいヌー!」
 ヌーッティの答えを聞いてアレクシは、ヌーッティの頭部をじっと見ながら、
「無理じゃないかな」
 現実を突きつけた。
「できるヌー! できないって思うからできないヌー! 例えば、パーマだってかけられるヌー!」
螺髪らはつに?」
「違うヌー! ……ところで『らはつ』ってなんだヌー?」
 アレクシは目を細め、戸惑いの色を表情に浮かべているヌーッティを見据えた。
 ヌーッティは気を取り直すべく、鼻をふんっと鳴らすと、
「ドレッドもできるし、ゆるふわパーマもできるし、モーツァルトみたいにもできちゃうヌー!」
 握り拳を作って、力いっぱい主張した。
「カツラで決まりかな」
「だめだヌー! 地毛で遊びたいヌー!」
 地団駄を踏みながらヌーッティは駄々をこね始めた。
 面倒臭そうな面持ちでヌーッティを見やるアレクシは、
「どの髪型にしたいか、もう決まっているのかい?」
 投げやりな口調で尋ねた。
 アレクシが醸し出す、怠そうな雰囲気に飲まれることのない、あるいは気づいていないヌーッティは首肯すると、雑誌をめくり、
「これだヌー!」
 右手の人差し指で、紙面の隅の小さな写真を指さした。
 ヌーッティの指の指し示す先にある写真を見たアレクシは驚愕した。
「本当に?」
 咄嗟に口から出た言葉はそれだけであった。
 アレクシはヌーッティの目をじっと見た。
 ヌーッティの目は力強い意志を灯した色を湛えていた。
 ヌーッティとアレクシは見つめ合った。
 アレクシの唾を飲み込む音が静かな部屋に響いた。
 ヌーッティは深く頷いた。
「ヌーはいつだって本気だヌー」
 アレクシも頷いた。
「わかった。ぼくの本気をすべてきみにぶつけるよ!」
 そして、いよいよヌーッティが変わることになるのである。
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