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変わり行くシナリオ
しおりを挟む順調にユリア・サージェントの証拠が集まっていく。
彼女はどうやら、実の家族すらも操り弱味を握って脅しているらしい事がわかった。
彼女の家族は彼女に逆らうことができずに、使用人達と共に屋敷の離れに軟禁されていた。そしてユリア嬢は本邸を乗っ取り、屋敷の中はユリア嬢が雇ったと思われるならず者が居座っていた。
最小限の使用人だけを側に残していたユリア嬢は、使用人を恐怖で支配していた。勇気を出してユリア嬢を説得しようとした執事長を、使用人達を集めた目の前でならず者に命令して惨殺させた。
また彼女の不興を買った侍女は、ならず者達の慰み者にした。
その侍女は、数日後、精神を病み自害した。
誰もユリア嬢に逆らうことが出来なくなった。
そしてユリア嬢は、サージェント家の資産を自分だけの為に使い始めた。
潤沢だったサージェント家の資産は徐々に底を尽きかけていた。
そのせいで、サージェント家は没落寸前。
サージェント領も酷い有り様になっていた。
度重なる重税、領の管理費、運営費などにまでユリア嬢が手を付けてしまった為、かつての美しく豊かなサージェント領の姿はそこになく、領民は重税に苦しみ、生活ができなくなり、サージェント領から逃げ出す者も多かった。
そして領の管理費、運営費までユリア嬢が手を付けてしまった為、定期的に交換が必要な魔獣避けの魔道具も管理する事が出来ず、魔獣避けの魔道具が弱まったせいで、領内は魔獣の被害が多発していた。
まさかここまで酷いことになっていたとは···。
オースティンとルデオンの話をまとめると、どうやらユリア嬢の使う禁術は、金銭を媒体としているらしい。
資産を代償にし、“かきんアイテム”という魔道具のようなものを使用して人を洗脳、魅了状態にしているようだ。
ただし、“かきんアイテム”での洗脳、魅了は強力ではあるが効果は短時間。
その禁術は、魔道具で防ぐことが可能との事。
そして、資産を代償にする為、残り僅かな資産を無駄には使えないだろうと。
没落寸前のサージェント家の資金ではもう残り何回も使えないと予測ができた。
そして、家族は軟禁されている様子を考えると、禁術には関わっていない。
ユリア嬢の単独行動のようだ。
そこまでわかれば、やっと断罪の準備ができる。
作戦は、ユリア嬢を王城の応接室へ招く。
彼女は私を手に入れたがっていた。
学園でも何度も接触してきたし、パーティー後、私とエレノアがどうなったか、密偵を雇い私とエレノアの周りを探らせているのを影から報告を受けている。
だからエレノアに会う訳にはいかなかった。
あの時、エレノアを追いかけていたらこの作戦は成功しない。
すぐにでも会いたい気持ちをなんとか耐えた甲斐があった。
なんとしてもあの女は必ず捕縛する。
作戦をより成功に近づける為、“王太子はあのパーティーからエレノア嬢を避けている”と噂を流させた。
ユリア嬢には、“王太子があの日から貴女を気にかけている”と使者に甘い誘いの言葉を伝えさせ、“王太子が二人きりで貴女に会いたいようです”と招待状を一通渡して来るように命令した。
ユリア嬢を王城の応接室へ誘い出し、部屋の中に隠れて魔道具を付けたオースティンとルデオン、護衛騎士を待機させる。
その部屋を禁術を防ぐ魔道具を付けた騎士、魔法師の精鋭が取り囲む。
禁術の発動を私の魔道具が感知したら、ユリア嬢を捕縛、魔封じの魔道具をユリア嬢に取り付けて、王城でも一番警備が厳しい、魔封じの独房に入れる。
それと同時に、第二騎士団と第三騎士団、第二魔法師団の混成チームが、サージェント領のならず者を全員鎮圧させる。
そして軟禁されているサージェント家の家族、使用人の救出をする。
サージェント領には捕縛後すぐに領民を救済する為の炊き出しも行う予定だ。
どれだけ作戦を立てても例えようのない不安が残る。
何か見落としていないだろうか?
その日は念の為、エレノアを王妃の白亜宮で保護する予定だ。
王族の居住スペースであれば警備も厳重だからエレノアの身は安全だろう。
父がエレノアには最強の警備を付けると約束してくれたので不安はないはずなのだが。
どれだけ作戦を立てても、どれだけ警備を見直しても何か不安が残る。
この不安な気持ちは一体なんだ?
エレノアに会えないからだろうか···?
あの後、影経由でエレノアから手紙が届いた。
手紙にはエレノアの筆跡で一言“貴方を信じて待つ”とだけ書いてあった。
エレノアのその言葉が何よりも私を突き動かした。
エレノアとの関係を一からやり直し始めてから、初めて···エレノアが私に本心を伝えてくれたからだ。
“貴方を信じて待つ”たったこれだけの言葉なのに···これほど私の気持ちを勇気づける言葉は他にないだろう。
まだエレノアは···私を信じてくれている。
あの失態を見られたら、エレノアに身限られてもおかしくはなかった。
早く作戦を成功させてエレノアに会いたい。
「どうか、無事作戦が成功しますように。」
私は王城の礼拝堂で神に祈った。
早く作戦を無事成功させてエレノアを抱きしめたい。
あのパーティーの日の失態を謝り、もう彼女が不安にならなくてもいいように不安を取り除いてあげたい。
エレノア···。必ず作戦を成功させるから。
今度こそ、君を命をかけて守ると誓うよ。
もう君をけして傷つけたりしない。傷つけさせない。
今度こそ私は逃げない。
だから····待っていてほしい。
君にたくさん伝えたいことがあるんだ···。
早く君に会いたい。
礼拝堂から見える夜空は、どんよりとした雲がかかっていた。
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