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夫達とお茶会をしました。
しおりを挟む数日後···打診した各家から、婚姻を承諾する手紙が届いた。
いよいよ本格的に婚姻の話が進んでいく。
私が婚姻を結んだ時点で、父から私に王位が継承される事になっている。
表向き、父は病気療養中ということになっているからだ。
父は、最近さらにやる気をなくし、王としての仕事も完全に放棄してしまっているらしく、これ以上は持たないらしい。(主に父の仕事を代行してくれている臣下達が。)
婚姻の儀を行った後に、王位継承の儀を行い、すべての行程が終了した時点で新政権に移行される事になる。
婚姻の儀に、王位継承の儀と立て続けに行事が重なっている為、城中が準備に追われて大忙しだ。
王位継承の儀が終わった時点で、両親は離宮に移り、私達は後宮へ移り住む為、婚姻の儀の準備と王位継承の儀の準備に加えて、後宮へ引っ越す準備もしなければならず、私も忙しい日々を過ごしていた。
やっと準備に目処がついたのは、婚姻の儀が行われる3日前だった。本当にギリギリである。
少し時間に余裕ができたので、夫となる子息達に予定を確認して、交流も兼ねて、お茶会を開いた。
少しでも、彼等の不安や緊張を解きたかったのだが。
これは、どうしたら良いのだろう···。
集まってくれた彼等は、一目見てわかるほどに険悪。
エアハルトは真っ正面に座るレオナールを睨み付け、レオナールはエアハルトを無視しイーヴォを見ている。
ドミニクはイクスの様子をジッと見つめ、イーヴォはエアハルトに冷たい目線を送っている。
そしてイクスは私の心情を察知し、困ったような笑みを浮かべて私を見ている。
その様子を見て、頭が痛くなった。
初めての顔合わせだから、仕方のないことかもしれない。
だが、もうすぐこの五人と後宮に住む事になるのだ···。
こんな険悪な状況で上手くやっていけるわけがない。
皆に集まってくれたお礼を述べる。
「今日は、初めての顔合わせだから、お互いに緊張もあると思います。だけど、もうすぐここにいる全員で、後宮に入り、即位した私を支えてもらう事になります。だから今日は、お互いをよく知り、そして王家の人間となるのだから、しっかりその覚悟を持って行動してほしいと思います。まだまだ未熟な私に、皆の力を貸して下さい。お願いします。」
私は皆に頭を下げた。皆が驚いたのがわかる。
女王になる人間が、簡単に頭を下げてはならない。
しかし、彼等は私の夫になるのだから彼等には、誠意を持って接したい。そして、彼等には私を支えてもらわねばならないのだ。
私が頭を下げたのは、この険悪な空気を抑えてもらう為だ。
そして、「私の意を汲めぬのならば夫失格。」と言っているのと同じ。
女王であり、妻である私に頭を下げさせたのだから。
彼等が態度を改めた事で、険悪な空気が薄れた。
私の言いたい事は理解してもらえたようだ。
私がニコリと微笑むと皆が一斉に俯いた。
何故···?
よく見ると、耳まで真っ赤になっている。
私···何か変な事言ったかしら??
最初こそ険悪であったが、和やかにお茶会がスタートできた。
皆と順番に交流を兼ねて話しをする。
皆の好きなもの、嫌いなもの、趣味など···できるだけどんな人間なのか知る事ができるように話しをする。
目を見て話すと、相手が自分にどんな感情を持っているのかわかる。
エアハルトは、一見誰にでも優しそうな雰囲気だが···。
その瞳はまるで怒っているかのように強い憎しみを感じる。
彼に婚姻の打診をした時も···だったのでだいたい彼が私に向ける感情はわかった。
そんなに嫌なら断ってくれて良かったのに···。
彼は嫡男でなくとも、他に引く手数多だったろうに。
何故婚姻を受諾したのか?嫌いな相手と婚姻してまで···彼は出世がしたかったのだろうか?
レオナールは、態度こそ怖いが···その瞳は熱い。
まるで強く焦がれているようなそんな瞳。
彼の瞳と態度は正反対で、正直どうしていいのかわからない。
レオナールに関しては···この中で一番読めない。
態度が本音なのか、その瞳が真実なのか···。
だから、彼が苦手だ。
彼の態度は、女性にしていい態度ではないというのに、どうしてそんな瞳で私を見るのか···。
わからない。
ドミニクは、まるで宗教等で祀る神かのように私を見る。
身分が一番低い彼からすると、王族はそれほどの対象なのか?
彼の、素の表情を知る事ができない。
話していても、私を引き立てようとするかのようにお世辞ばかり。
私は、ドミニクの妻になるというのに···。
彼が何を思い、何を願っているのかもわからない。
私に何を望んでいるのかも···。
夫になるというのに、このままで大丈夫だろうか···?
後々に何かトラブルになりそうな予感がする。
イーヴォは、とても分かりやすい。
彼の目には、権力への欲が見える。
婚姻の打診をした時も、選ばれるのは彼自身確定事項だったのだろう。返事も一番早かった。
そして、エルフのように美しい彼は、美しい者が好きなのだろう。
彼の従える従者も、侍女も、男女共に美しい人間しかいなかった。
彼の美の基準に合わない者は側に置かない方がいいかもしれない。
これは直感なのだが···。あながち間違いではないと思う。
イクスは、初めて会った時から変わらない。
優しく、私を気遣うような瞳。
夫になる人間の中で、一番信頼できる人。
たぶん彼がいなかったら···私の結婚生活は苦労しかなかったかもしれない。
私が唯一弱音を吐ける人。
だけど助けられるばかりではなく、彼が辛い時···私も同じように頼ってほしいと思う。
お互いを思い合う、お互いが支え合う···私が憧れていた結婚生活を···彼とならば叶えることができるかもしれない。唯一の癒しとも言える。
イクスが候補にいてくれて良かった。
それぞれ個性の強い夫達と、これから上手く関係を築いていかねばならない。
私は妻として、女王として、夫達とこの国を導いて行かなければならないのだから。
後宮に入るまでの間に、少しずつでも距離を縮めなければ···。
正直、どれが正解かはわからない。
この国初の女王で、たくさんの夫を持つのも初なのだから···。
なかなか他国の女王の話などは伝わってこない。
私自身も、まだ抵抗がある。
しかし、私の治世で国を傾ける訳にはいかないのだ。
夫の事、国の事で···正直プレッシャーで押し潰されそう。
それでもやらなければいけない。やり遂げなければならない。国の為、国民の為に。
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