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責任を押し付けられました。

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私は、エルガドル王国でただ一人の王女。エリザベート・エルガドル。

国王である父は、正妃である母を深く愛していた。

しかし、子供は私一人しか産まれず、私が産まれた後は、子宝には恵まれなかった。

世継ぎの問題もあるので、臣下達は側妃を勧めたが、父は頑なに側妃を娶ろうとはしなかった。

妃は正妃だけで良いと。

妻だけを一途に愛す父は、夫であればとても良き夫だった事だろう。

ただの夫であるならばだが···。

しかし、父はこの国の国王である。
世継ぎがいなければ、側妃を娶るのが義務だ。

だが···父は頑なに側妃を娶ることを嫌がった。

母も、自分以外の女を側に置く夫など見たくないと大反対した。

父も母も、王族としては失格だった。
王族としての義務を果たさなかったのだから···。


そして、父はその責任のすべてを私に押し付けたのである。

「世継ぎなら一人いるじゃないか。姫が女王になり、複数の夫を見繕ってやれば良い。」と。

そうして私は、生まれた時から複数の夫を持つことを強いられたのだった。

私は、幼い頃から時期女王として育てられた。

子供がする量ではない量の勉強、社交や王族としてのマナー、ダンス、他国の地理や歴史、外国語の勉強、自国の貴族について等···。

一国の主になるに恥じない教養を詰め込まれた。

その量は、寝る時間を削らなければならないほど、膨大な量を学ばなければならず、時にストレスで吐くほどだった。

毎日泣きながら勉強に勤しんだ。

空いた時間には、国内の有力貴族の令嬢達とのお茶会や、パーティーに参加せねばならず···1日の終わりには気絶するように眠り、また翌日同じような予定を繰り返した。

世継ぎは私一人だった為、万が一何かあってはいけないと、必要な時にしか外に出る事は許されず、私に許されたものなど何一つなかった。


何よりも嫌だったのが、私の未来の夫候補を集めたお茶会だった。

夫候補のお茶会には、国内の有力な家の子息達が上位貴族、下位貴族関係なく集められた。

家を継げない次男や三男の彼等からすれば、大出世のチャンスだ···。

ここぞとばかりにアピールをしてくる。

媚を売る者、剣の腕を自慢する者、肉体や外見の美しさを自慢する者など···。
中には、性のテクニックを自慢してくる者もいて、私はこの時間が一番苦痛だった。

何故なら、彼等は決して私自身を見てはいない。

私の見た目も中身も関係なく、彼等は時期女王である私・・・・・・・・にしか興味がないのだから。出世の道具としてしか見ていない。

そんな相手をどうして愛せるというのだろうか?
愛のない結婚の為に相手を選ぶ···なんて虚しい時間なのだろう。


私は、父や母のように、ただ一人だけを愛し、そして愛される···そんな関係に憧れていた。

私を本当に愛し、大事にしてくれる人間と結婚したい。そしてそんな素敵な旦那様に尽くしたい。
贅沢な生活でなくとも良い。

愛がある生活がしたいと···。


それが無理でも、せめてちゃんと私を見てくれる方と夫婦になりたいと願っていた。

しかし現実は、そんな甘い夢は許されない。

この国の世継ぎは、私しかいないのだから···。
将来を見据えた相手を選ぶ義務がある。

国内のパワーバランスを考えてなのか、最低五人の夫を選べと言われている。

国の未来を左右する相手なので、慎重に選ばなければならない。愛など無くとも、国を共に支えてくれる人間でないとならないのだ。

愛のない相手を五人を選ばなくてはならないのか···。

心がまるで凍り付くかのように冷えていく。

無駄な会話に時間を使う余裕もないので、ある程度候補は事前に決めてある。

後は、会ってから決めようと思っていた。

最初の夫候補は、クライスラー公爵家次男。
エアハルト・クライスラー。年齢は19歳。

彼は物腰柔らかく、真面目で勤勉。
男女問わず紳士的で、爽やかな好青年だ。

皆の、理想の王子様像を具現化したような···見目麗しく、輝く黄金の髪に碧眼。甘いマスクの貴公子である。

彼ならば···きっと、皆から愛される良きパートナーになってくれるだろう。

次の夫候補は、クラウツェン侯爵家三男。
レオナール・クラウツェン。年齢は18歳。

彼は王国騎士団の団長のご子息である。
騎士団長である父親に憧れてか···幼い頃から騎士団に混ざり、毎日稽古している。

とても寡黙で、真面目な印象の青年である。

いかにも武人らしい鍛え上げられたガッチリとした体躯に、端正な顔立ち。

烏のように真っ黒な漆黒の髪を後ろに流している。
深海のように深い青色の瞳は、何もかもを見透かされているような気持ちになる。

私は少し、彼が苦手だった。

力は強いし、声は大きい。
女性の扱いがわからないからなのか···わからないが、常に厳しい口調でズバズバものを言う。
表情も微笑すらない。

怖い印象しかないのだ。

しかし夫候補としては、身分も申し分なく、とても優秀なので候補に入った。

その次の夫候補は、ラインフェルト子爵家三男。
ドミニク・ラインフェルト。年齢は20歳。

彼の家は、小さな商家から大商会へと成り上がった···所謂成り上がり貴族。

彼自身も、幼い頃から父や兄と共に、商売のいろはを学んで来たからか、頭の回転も早く世渡り上手だ。

燃えるような癖のある長い赤髪。新緑を思わせる鮮やかな緑の瞳。商人の息子らしい物腰の柔らかさ。女子受けの良さそうな甘いマスク。そして年齢らしからぬ色気。

その異常なまでの色気は、たくさんの女性を夢中にさせているという。

相手が例え高位貴族だろうと、臆することのない、物怖じしない性格。

若干女性関係に不安はあるが、外交も支えてくれる良きパートナーになってくれそうではある···ただ一番ネックなのは彼の身分だろう。

正直、彼を夫候補にするのは少し悩んだ。

しかし、彼の家には借りがあるのだ。

彼の家は、十数年前の大飢饉の際に、我が国の民を救うために、多大な貢献をした事により、子爵の爵位を賜った新興貴族である。

つまり、この国にとって彼の家は大恩人なのだ。

爵位は一番低いが、そういった事情から夫候補に入った。

次の夫候補は、ヴォルデマール伯爵家次男。
イーヴォ・ヴォルデマール。年齢は最年長の23歳。

彼は、この国の大神官のご子息である。

大神官の血を受け継いでいるからか、彼自身も神聖力が高く、魔法適性も高い。

魔術師団の団長になるのでは?と期待されている。


まるでエルフのように美しい顔立ち、珍しい水色の髪に、琥珀色の瞳。長い水色の髪は、束ねてサイドに流している。眼鏡が穏やかそうで、知的そうな彼に似合っている。

王族と同等、または王族以上に力のある、国教の大神官様のご子息である彼も···そういった理由で夫候補に入った。

あと一人の夫候補は、宰相のご子息ではあるが···今は外交に行っている。

明日、外交から帰ってくるそうで、本日の茶会には参加していなかった。

夫候補と直接話をしたが···やはり夫候補は事前に決めた者達で良さそうだ。
他がお話しにならない状態だったのもあるが···。

あと一人の候補は、後日改めて会うとして···後は本人達の気持ちを優先させたい。

特殊な理由だからこそ、嫌なことを強制したくはなかったし、私も結婚するならば···少しでも良い婚姻関係を築きたい。

例え愛することができなくとも、愛されることがなくとも···。

彼等も私も不幸になるような婚姻は避けたい。





















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