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君と一緒に歩む道
しおりを挟む互いの想いを伝え合った私達は、晴れて恋人になった。
そして···二人が共に歩んで行くには、まだ越えなければならない壁があるのも事実。
やはり男同士のカップルというのは周りに認めてもらうことが一番の壁だと思う。
幸い我が国の法律では同性婚は認められている。
それというのも、我が国の神話にこの地を創造せし偉大なる神グレモアには男神の伴侶がいた事が描かれている。
グレモア神はこのグレモア国の名前の由来になっているほどの偉大なる神だ。そして、その伴侶である男神ジュビエロもまた、豊穣を司る神として国教で崇められている。
なので国としても同性婚を認めないわけにはいかなかった。
宗教的にも国の法律的にも認められているが、同性婚は少ない。
その理由は、やはり世継ぎの問題があるからだ。
逆にいえば、世継ぎの問題さえなんとかなるのであれば誰も反対はしないということだ。
そして最近巷では“レディーE ”なる著者が出した男性同士のラブロマンス本が大流行しており、ちらほらと同性カップルを町で見かけることが増えた。
これはまさに私達の関係を認めてもらうには追い風になっていると言えよう。
ルデオンはこの期を逃すまいと覚悟を決めた。
そしてルデオンは、すぐに行動に移したのであった。
タイミング良く二人の休みが重なり、ルデオンは一大決心をする。
ルデオンは、オースティンと初めて結ばれた宿屋の部屋にオースティンを呼び出した。
呼び出されたオースティンは、場所が場所だけに···とても緊張しているように見えた。
ルデオンを意識しているのか、頬を真っ赤に染めるオースティンはとても可愛らしく、思わずルデオンの頬も緩む。
緊張するオースティンをベッドに座らせると、ルデオンはその隣に座り、オースティンの手に自分の手を絡めると真剣な表情で語りかけた。
「オースティン、俺···弟に後継の座を譲ることにした。ちょうど弟の婚約も決まったし···弟が領地の管理をしてくれることになっていたから、弟の方が家督を継ぐには都合がいいし、俺はエリックの護衛騎士だから爵位を継いでも管理はしきれない。それに、お前と一緒になるのに嫡男だと認めて貰えないだろう?ちゃんとオースティンとの将来を考えて決めた。」
こんなに真剣に話すルデオンを見たのは初めてだ。
ルデオンが真剣に自分と一緒になる事を考えてくれているのがわかりとても嬉しい。
「···以前王妃様とエレノア様の暗殺を狙い、ユリア・サージェントが隣国の公爵家と手を組み起こした暗殺未遂事件で武功を上げた時に、陛下から頂いた屋敷もあるし···領地はないけど男爵位もある···。オースティンと暮らす準備はすでにできている。後はお前の気持ちと覚悟次第だ···。一緒にお前の親父さんに付き合ってる事を話さないか?」
もうルデオンの父親には、私達の事を話してしまったらしい。
最初は驚いていたが、ルデオンの真剣な表情と覚悟に「自分の人生だから自由に生きなさい」とあっさり許可をしてくれた。
そんな話をルデオンから聞き、オースティンは嬉しそうに微笑んだ。
ただ、オースティンには不安な事が一つだけあった。
後は私の父親に話すだけなのだが···。
正直どう話すか迷っている。
別にルデオンとの関係を話す事に迷いはない。
ただ、父は心臓に持病があり···自分の息子が、父も顔見知りのルデオンと一緒になりたいと伝えたら···すごく驚くのは間違いない。
そして、自分がケガをした時に心配のあまり寝込んでしまったので、父の体調面が心配なのだ。
話してショックを受けて発作を起こしたら···?男同士で結婚したいと伝えたら···父は冷静に話を聞けるだろうか?
ルデオンもそれを知っているから強くは言って来ない。
私も弟に後継の座を譲るつもりでいる。
私もまた、弟には先に話を通してあったのだ。
弟は、小さな頃からルデオンに剣の稽古をつけてもらっていた。最初はかなり驚いていたが···ルデオンが義理の兄になる事を喜んでいた。
そして母にも話をしてある。
母にはさすがに反対されるかと思っていたが、なぜか母は目を輝かせて喜んでいた。
今、貴族の夫人達の間で“レディーE”なる著者の男性同士のラブロマンス本が流行っているらしく、まさか自分の息子にもそんなラブロマンスが!?と酷く興奮していて···どう恋愛に発展したのか、根掘り葉掘り聞かれるという想定していなかった反応を示され困惑した。
そんな母には、「心配しなくても大丈夫よ。今は体調も落ち着いているから、話すなら早めに話すといいわ!」と言われている。
母の様子では大丈夫そうであるが···本当に大丈夫だろうか?父には···すごく反対されてしまうのではないだろうか?
不安な気持ちもあるが、ルデオンの突然の行動で不安の全てがぶっ飛んだ。
ルデオンが突然床に跪くと、どこに隠していたのか花束を差し出してきた。
私は驚いてされるがままに花束を受け取ると、ルデオンがポケットから小さな箱を取り出した。
その箱をパカッと開くと、中にはシンプルな指輪が入っていた。
「オースティン、俺はお前がいない人生なんて考えられない。···どうか俺と結婚してください。」
ルデオンの顔が真っ赤に染まり、とても不安そうな表情をしている。
受け取って貰えるか不安なのか、かすかに指輪の入った箱が震えていた。
本当に真っ直ぐすぎるこの男が愛しくて愛しくてたまらない。オースティンの不安は、一瞬で全て吹き飛んだ。
「はい。喜んで···。私もルデオン以外考えられません。ルデオン···貴方が大好きです」
恥ずかしそうにルデオンに手を差し出すオースティンの指にルデオンが指輪を嵌める。
ルデオンは、優しくオースティンを抱き寄せた。
本当はこのまま押し倒してしまいたい所だが、ルデオンは耐えた。オースティンの父親に許可をもらうまでは抱かないと決めていた。
それにオースティンを抱くならば、こんな安い宿屋ではなく、新居の綺麗に整えられたベッドで抱きたい。
今日この場でプロポーズしたのは、初めて共に過ごした場所を嫌な思い出のままにしたくなかったからだ。
オースティンを抱いたのは間違いなんかじゃない事を証明したかったからだ。
抱き寄せたオースティンに「プロポーズを受けてくれてありがとう」と伝えると、優しく唇を重ねた。
しばらくそのまま抱きしめ合っていると、オースティンがおずおずと顔を上げた。
「次の休みに···一緒に父の所へ行ってくれますか?」
心配ではあるが、後継者の問題もある以上先延ばしにしない方がいいと判断した。
それに、オースティンもルデオンの誠実な気持ちに答えたかったのだ。
オースティンの言葉にルデオンは嬉しそうに頷いた。
そしてもう1つの壁···。
自らの主であるエリックに二人の気持ちを伝えなければならない。
エリックはどんな反応を示すだろうか?
側近であり、友人でもある私達が結婚すると聞いて驚かない訳がない。
軽蔑されるだろうか?
それとも気持ち悪がられるだろうか···?
エリックがそんな偏見を持つとは思えないが···少し不安だった。
そしてエリックに知られれば、必然的にエレノア様にも伝わる事になる。
もうエレノア様への気持ちに整理はついた。
だけど好きだった女性に知られるというのは、なんとも言えない気持ちである。
父には次の休みに伝える事になったが、先に主であるエリックに伝えようという事になった。
善は急げとばかりに、二人はそのまま王城へと向かった。
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お忙しい中での更新、ありがとうございます(´(ェ)`)
密かに待ち続けておりました!
二人の気持ちがとても伝わってきて……そして一緒に問題に立ち向かおうとする姿勢にとっても胸がほっこりします。
もうこうなると、二人の仲を反対する理由が見つかりませんね!
そして“レディーE”とはもしや……笑
次話がとっても楽しみです!
素敵な時間をありがとうございました☆
クマ三郎様✨
感想ありがとうございます😆💕✨
どうしても同性の結婚には障害が付き物なので覚悟を決めた二人は一緒になる為に立ち向かう覚悟を決めました(*^^*)
クマ三郎様なら気づいてくれると思いました✨
そうです···“レディーE”の正体はあの人です🤣
前世の彼女がどんな人だったのか予想出来ちゃう😅
クマ三郎様すごくハイペースなのにあのクオリティ( ;∀;)素晴らしい✨
毎作素敵ですが今回の作品はぜひアルファの恋愛部門でコンテスト出しませんか?
本当にご本になってほしいくらい好きなのですが😭
あのクオリティコンテスト出さないともったいない気がして( ;∀;)
ぜひ検討してほしいです(´ノω;`)
クマ三郎様ハイペースだけどお身体大丈夫ですか?クマ三郎様のペースで更新頑張ってくださいませ(((o(*゚∀゚*)o)))
お身体にはくれぐれも気をつけて下さいね( ;∀;)更新楽しみにしてます(〃´ー`人´ー`〃)
男同士の結婚は、報告に勇気が必要ですよね🤔
二人が真面目に問題に向き合い解決していく様子に好感が持てます💖
BLのこういう雰囲気も新鮮でよき~🎶
(爛れたBLを読むことが多かったもので……)
鍋様✨
感想ありがとうございます😆💕
BLってオメガバース設定がないと絶対にぶつかる壁がありますよね😥
特に貴族階級だと絶対後継者問題がついてくるしなかなか同性同士っていうのは難しい事が多いもので純愛にしたかったのでコツコツと問題に立ち向かうしかないし周りの目もあるからカミングアウトも勇気がいりますよね💦
それもまたBLの面白い所だと思うんですが結構BL新鮮で面白いですよ( o´ェ`o)✨
探り探りですが💦
いつか鍋様のBLもぜひ読みたいです
゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚
(私もどちらかというと爛れたBLばかり読んでました🤣🤣🤣)
本日、最新話を拝読しました。
海野すじこ様は、心理描写が(も)本当にお上手でして。表情はもちろんのこと、皆さんの心の動きまで、はっきりと理解できるのですよね。
ですので、皆さんのすべてを感じることができて。今回も、非常に良い時間を、過ごさせていただきました……っ。
柚木ゆず様✨
ご感想ありがとうございます(´ノω;`)✨
今回話をまとめるのに難産してたので嬉しい感想ありがとうございます(*T^T)✨
キャラクターもその世界で生きているからみんな色んな思いや信念を持って生きてるので一人一人のその心理を丁寧に書いてあげたいな···と😣
毎回文字数との戦いです😅
どうしてもズルズル長くなってしまって( ;∀;)
☆★☆★☆★
柚木様の新作もとても心理描写が細かくて欲しがりな妹さんとお姉様の対比が素晴らしいです( o´ェ`o)✨
お姉様に劣等感を感じるのかマウント取ろうとするのだけど勘違いしちゃって違う人にアタックするとか悪役だけど人間味があってちょっと憎めない所がかなり好きです( o´ェ`o)