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第16話 過保護な王子様

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瞼を開くことすら出来ない。
魔力には自信あったんだけどなぁ...。

指一本動かせないや。
魔力ゴッソリ持っていかれちゃったみたい。


うっすらしか覚えていないけど...私を庇ってくれたあの人は、ケガは大丈夫だったかな?

あの人は、身を挺して庇ってくれた。
あんなに大ケガをしてまで...。

王子様なのに...どうして私なんかを庇ったの?

どうしてだろう...。
あの人を思い出すと胸が引き裂かれそうに痛むの。

初めて会った人なのに...どうしてこんなに...わからない。
わからないけど...涙が止まらなくなるの。

王族になんて初めて会ったはずなのに...どうして?

わからない。

私...前にも会ったことがあるの?

でも、思い出そうとすると怖い。

私の体が...まるで思い出してはいけないと言っているかのように...凍り付いたように動けなくなる。

きっと彼に近付いてはいけないのだと思う。

でも...私の心は、まるで彼を思い出したがっているみたいに胸が引き裂かれそうなほど痛むの..。

一体私はどうしてしまったんだろう...わからない...。
わからないけど...彼が気になってしまう。

どうして私は彼が気になってしまうのだろう...?


目を覚ました時、私の顔は涙で濡れていた。

長い夢を見ていたような気がするけど...覚えていない。


ここは何処なんだろう...?


私は確か...王族主催のパーティーに来ていなかったっけ?
という事はここは王宮!?


ガバリと勢いよく起き上がるとクラクラと眩暈がした。


「あっ!お目覚めになりましたか?勢いよく起き上がると危ないですよ...!エリーゼ様は3日ほど眠り続けていたんですから...。ご飯は召し上がれそうですが?何か消化の良い物をお持ちしますので、もう少し休んでいて下さいね?」

今のは、侍女さんかしら?

って...彼女...今、3日って言ってなかったかしら!?
大変...!私そんなに眠っていたなんて...。

でもさすがに、ちょっとお腹に何か入れないと...。
空腹すぎて気持ちが悪いかも。

ここは...大人しくご厚意に甘えたほうが良さそう。

しばらくすると、バタバタと慌ただしく足音がする。
ドアが勢い良くバァンと音を立てて開いた。

「エリーゼ!!」

お兄様達と両親、国王陛下に王太子様、それに私を庇ってくれた王子様が室内に入ってきた。

「 エリーゼ...また記憶を失くしたなんて事はないよな...?」

マティアスお兄様とアルベルトお兄様が不安そうな表情で私を見ている。

「大丈夫です。ちゃんと覚えていますわマティアスお兄様、アルベルトお兄様。皆様心配をおかけしてしまって...申し訳ありません。」

私はその場にいた皆に頭を下げた。

「 第二王子殿下も...私のせいで怪我をさせてしまい...申し訳ありませんでした。まだ眩暈がして立ち上がる事が出来ないので...座礼にて失礼致します。」

私が頭を下げようとすると、第二王子殿下は私の肩をそっと優しく掴み...頭を下げようとした私を止めた。

「 エリーゼ嬢...。体は大丈夫かい?君が謝る必要はないよ。
お詫びをしなければならないのは私の方だ。王宮で危険な目にあわせてしまい、さらに私のせいで君は魔力を限界まで使うハメになったのだから...。すまなかった。それにケガを治してくれてありがとう。傷は痕も残らず綺麗に治ったから大丈夫だよ。」

そういうと、第二王子殿下は優しく私に微笑みかけ、服の袖を捲りケガがないことを確認させてくれた。

「そして挨拶が遅れてしまい申し訳ない。私の名はカーティス・オルデバドルだ。私の事は、カーティスと呼んでくれたら嬉しい。まだ本調子でないのに、皆で押し掛けてしまいすまなかった。まだ眩暈がするなら頭を動かさない方がいい。皆、君の無事を確認したかっただけだから...もう少し休むといい。」

カーティス殿下。
この方はカーティス殿下というのね...。

カーティス殿下の青みがかった黒髪に、黒曜石のような瞳を見ると何か胸が苦しい。


なんだろう...この懐かしさは...。
初めてお会いしたのに...初めて会った気がしない。

私は無意識に涙を流していたようで、突然涙を流す私に驚いたカーティス殿下は、自分が何かしてしまったと思ったのかおろおろしている。

「まだ本調子ではないのに無理をさせてしまってすまなかった。」

目に見えてシュンと叱られた犬のようになるものだから思わず笑ってしまいそうになった。

カーティス殿下はとてもお優しい方みたいね。

その時、ノックをする音が聞こえた。

先ほどの侍女がスープを持って来てくれたみたいだ。

カーティス殿下は、侍女からスープの入った器を受け取ると...小さなスプーンでスープを少し口に含んだ。

えっ!?
カーティス殿下何を!?

突然王子様が、自ら毒味をするものだから、驚かない人はいないだろう...。

案の定驚いたのは私だけではなかった。

みんなカーティス殿下のしたことに驚いていた。

「 先ほど泣かせてしまったお詫びに私が食べさせよう。ほら、エリーゼ嬢?口を開けて?」

カーティス殿下!?

ちょっと待って?

状況が状況だけに頭が追いつかない。

一国の王子様自らがあーんをさせるってどういう状況!?

しかしカーティス殿下は首を傾げて早く口を開けてと催促してくる...。

戸惑いつつも、カーティス殿下を待たせる訳にはいかないので...促されるまま口を開けた。

国王陛下も王太子殿下も、突然のカーティス殿下の行動に驚いているようだったが...二人で何かを話すと、私とカーティス殿下の様子を見てニヤニヤっと笑ったように見えた。


緊張と恥ずかしさとでスープの味もわからない。
美味しいか?と聞かれたけど味もわからないが頷くしかできなかった。


スープがなくなるまで王子自らの餌付けは続いたのだった。




































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