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第15話 王族主催のパーティー(4)
しおりを挟む贈り物を渡し終えた私達は、ホールへ戻って来た。
とりあえず目的が達成して安心した...。
そこへ、従者と一緒に待っていたステラがやって来た。
「王太子様達喜んでくれて良かったねぇ。」
ステラは嬉しそうに私に語りかけてくる。
「ステラのおかげだよ。ステラが精霊王様と仲良しだったから、精霊王様も私を気に入ってくれて加護を与えて下さったんだし、アグネシードに相談したらこの贈り物が喜んで貰えるんじゃないかって相談にも乗って下さって...。後でアグネシードにお礼をしないとね。王太子殿下もジョセフィーヌ様も喜んで下さったから良かった。」
そう私が言うと、ステラは嬉しそうにニッコリ笑った。
私が魔法の練習をしていた時、私とステラの前に精霊王アグネシードが現れたのだ。神獣と全能神の加護を持つ聖女という面白い組み合わせが気になったらしい。
ステラが私の身の上や事情を話すと、精霊王は私をしばらくジッと見つめ私からも加護をやろうと言い、私に精霊王の加護を与えてくださった。
それからは不定期でアグネシードが遊びに来るようになった。
毎回アグネシードは、私を見ておかしな者に好かれやすいなとクスクス笑う。
それ貴方も“おかしな者”に含まれてますからね?
まあ確かに...全能神に、神獣に、精霊王に...はビックリだよ。
でもね。みんなの暖かさに救われてる。
みんなといるとね。心がすごく温かくなるんだ。
きっと私が前世でずっとずっと願ったもの。ずっと私が知らなかった、優しさや温かさを彼等は私に教えてくれるから。
全能神のおじいさんも、ステラもアグネシードもみんな大事。
こんな私を愛してくれて、大事にしてくれて...親切にしてくれてありがとう。
だから今世は絶対に幸せになるって...楽しく生きるって決めたんだ。
ふと、アグネシードとの出会いを思いだしたら、心が温かくなった。
ステラと合流し、お兄様達と話していると挨拶を終えた参加者達が段々と増えてきた。
両親とマティアスお兄様は、知り合いの貴族達に挨拶してくるとその場を離れた。
人が増えて、アルベルトお兄様は周りを警戒しているようだ。
ステラも周りをチラッと見る。私も何か嫌な気配とでもいうのだろうか?悪意ある視線のようなものを感じた。
ガチャンと何かが割れるような音がした。
私達は音のする方へ振り向くと、1人の令嬢がこちらへ向かい走ってくる。
手に割れたグラスを持って...。
私は恐怖を感じ、一瞬戸惑ってしまった。
ヤバイ...刺される。
そう思った時、私を庇うように1人の少年が私の前に現れた。
私とあまり年の変わらなそうな、黒髪の少年が私を庇ってくれたようだ...。
でも庇ってくれた瞬間、ドスっと嫌な音がした...。
彼は大丈夫だろうか?
「 王族主宰のパーティーで、刃傷沙汰など...何を考えている?」
聞こえてくる低い声には、冷たく怒気が含まれている。
私でさえもビクッとするような冷たい声。
私に襲いかかって来た令嬢は、腰を抜かし青ざめている。
「カーティス殿下...。」
彼女は絞り出すように声を出した。
カーティス殿下...?
さっき公務で遅れると言われていた...第二王子殿下?
カーティスは、素早く近くの警備兵を呼び、彼女は衛兵により連れ出された。
令嬢が連れ出されると、カーティス殿下は慌ててこちらを振り向いた。
「ケガはないか!?」
焦ったように、心配そうに私を見つめるカーティス殿下。
しかし...それは私のセリフだ。
「緊急事態なので、ご挨拶は後程で失礼致します。私にケガはございません。ケガしてるのは、カーティス殿下の方です!緊急事態ですので、ご無礼をお許し下さいませ!!」
私はそう言うと、殿下の腕を取る。
殿下は、グラスを腕で受け止めたらしい。
割れたグラスが刺さり、ポタポタと血が流れている。
かなり出血量が多く、傷は深そうだ。
すぐに手当てをしなければ危険。
本当は、人前で使いたくないけど...彼のケガは私のせいだ。
腹をくくる。
腕に刺さったままのグラスをまず腕からそっと引き抜き、欠片が残っていないか確認し、ケガした部位に触れないように腕に触れ、パーフェクトヒールと唱えた。
王城では魔法が使えないように結界が張られている為、低級魔法だと使えない可能性が高い。
聖属性魔法は、属性魔法と違い特別な魔法なので...聖属性魔法の最高位魔法、パーフェクトヒールに可能性を託した。
カーティス殿下の腕が光の粒子に包まれる。
そして光が消えると...彼の腕は、まるでケガなどなかったかのように綺麗に元通りに戻っていた。
良かった...。魔法...使えた。
まだ少女の体では、最高位魔法は厳しかったらしい。
結界の張られた王城で、無理矢理結界に抗い魔法を使った為か魔力切れのようだ...。
私はクラッと目の前が真っ暗になり、意識はそこで途切れた。
意識が途切れる前に、泣きそうな声で...
「綾...見つけた...。」
と誰かの声が聞こえた気がした。
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