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第9話 彰の転生先
しおりを挟む神様と別れ..。
目を覚ますとそこは ──
「 カーティス殿下...!!目を覚まされましたか!グレンヴィル...急ぎ医師を呼んで来てくれないか。カーティス殿下が目を覚まされた...早く!」
目の前で、初老の男性が慌てて指示を出していた。
ここはどこだ...?
俺は一体どこに転生したんだ..?
頭がクラクラして体が痺れて..力が入らない。
ここはベッドの上??
その時、神様の声が脳内に響いた。
「 ちょっと特殊な場所に転生させたから、その体の記憶は、そのまま引き継げるようにしといたからね~。その体、立場...上手く使うんじゃぞ?」
はぁ?あのじいさんどこに転生させやがったんだ?
その時...たくさんの記憶が頭の中に流れてきた。
あまりの情報量に頭の中がぐるぐるする...。
あまりの情報量がいきなり流れて来た為、眩暈がした。
気持ちが悪い...吐きそうだ...。
あのじいさん..次会ったら覚えてろよ?
しばらくして、情報の引き継ぎが終わったのか、眩暈も頭の中のぐるぐるも治まってきた。
「 殿下...具合はどうですか?どこか体に不調はありますか?」
初老の男性が心配そうに顔を覗き込む。
「 少しクラクラして、体が痺れて力が入らない以外は特に不調箇所はない。すまないが記憶が混濁しているみたいだ...。一体何があったのか説明してくれないか?」
俺がそう言うと、執事長のシェークが跪き状況の説明を始めた。
どうやら俺は、オルデバドル王国の第二王子 カーティス・オルデバドルの体に転生したらしい。
あの時、確かに綾を守れる力が欲しいとは言ったが...よりによって王子かよ...。
あのじいさん何考えてんだ...。
執事長のシェークの話を聞くと、どうやら俺は毒を盛られたらしい。
第一王子と第二王子による王位争い真っ只中のようだ。
しかし、俺は王位争いには全く興味ない。
むしろ安全に安心に暮らせれば、俺の目的の為には、兄が王位を継いでくれた方がありがたい。
さすがに命を狙われるなんて勘弁だからな。
早々に、兄弟仲の修復に動いた方が良さそうだ。
安全を確保する為には、まずは敵を作らないことだろう。
執事長に頼み、すぐに父と兄に会えるように謁見許可を申請してもらった。
すぐに許可が下りたので、父と兄に俺が決めたことをすぐに伝えることにした。
謁見の間にはすでに父と兄がいた。
「 大変忙しい所...いきなりお呼び出ししてしまい、大変申し訳ありません。どうしても、父上、兄上に聞いて頂きたいことがあったのです。よろしいでしょうか?」
父と兄が顔を見合わせた。
「 毒を盛られたと聞いた時は、肝が冷えたぞ?もう体調は大丈夫なのか?カーティス。話したいことがあるのならば話せ。今、私達しかこの場におらんから、気兼ねせずとも良い。」
父は心配そうにこちらを見ている。
兄も気まずそうにこちらを見ていた。
「 では、申し上げます。私は王位に全く興味がありません。そんなもので命を狙われるのは真っ平ですし...どうか、兄上を王太子にすると発表して頂きたいのです。兄上は、大変賢く優秀ですし、次代の王としてその力を十分に発揮してくれるでしょう。兄上を王にする為ならば、私も身を粉にして働きますので...どうか兄上に王位を譲ってほしいのです。」
俺が強くそう言うと、父と兄は驚いていた。
「お前は、そんなにも私の事を思ってくれていたのか...カーティス。お前の事を誤解していた。この国を良くする為...兄弟二人で、一緒に頑張ろう。」
兄が穏やかに笑った。
元々仲が良かった兄弟なのに、家臣達の権力争いに巻き込まれ、お互いを推す臣下達に、お互いのありもしない悪口を吹き込まれ仲違いをしていたが...。
これでなんとか兄弟仲も修復出来そうだ。
「そして、私達兄弟の仲を裂こうとした臣下達の処罰をお願いします。
私に、兄上の事を貶めようとするような事を言った者はすべてこの書類にリストアップしてあります。
兄上も、後で書類にまとめて父上に提出をお願い出来ますか?その中に、私に毒を盛った犯人もいるでしょう..。お願いします。」
俺がそう言って頭を下げると、父と兄は、「わかった」と頷き、すぐに動いてくれた。
その日の内に、臣下達は捕らえられ、兄に虚言を吹き込んだ臣下達は取り調べをされ、その中に怪しい者がいた為、拷問にかけると脅したら、あっさり毒を盛った事を自白した。
毒を盛った犯人はすぐに処罰された。
なんとか身の周りのネズミは退治できた。
これで安全は確保できたな。
そして3日後、兄が立太子する事が決まり、国中に知らされた。
これで自分の仕事さえすれば、俺は自由に動ける。
まずは、夜会などで綾が転生したと思われる人間を探そう。
ちょうど兄が王太子となる祝いのパーティーが催される事になっている。
貴族なら、絶対に参加しなければならないパーティーだ。そこに綾がいればいいんだがな...。
貴族でない可能性もあるが...まずは貴族の中から探そう。
兄には昔から決められた婚約者がいるので、第二王子の俺との縁を求めて、貴族の親達は絶対に娘を連れて来るだろう...探すにはもってこいの機会だ。
頼む...どうかその中に綾がいてくれ...。
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