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第4話 残された者
しおりを挟む綾を見送った神様がこちらに振り向く。
「 約束通り綾の前に姿を現さないでよく我慢できたね。...綾はやはり“記憶”を消してほしいと望んだよ。それでも同じ世界へ行くのかね?...彰くん。」
そこにいたのは彰だった。
綾が亡くなった後...彰は後を追うつもりで綾が飛び降りたビルにいた。
そして飛び降りようとした彰を神様が救ったのだ。
「 君にもツライ思いをさせてしまったね。君は本来あの時に命を落とす運命じゃなかったのに...すべてワシのせいじゃ。もう綾を元の世界に戻してやることはできなくなってしまった。君はどうしたいかね?」
彰は迷いなく言った。
「 俺は綾をひとりぼっちにしないと誓った。だから俺を綾が転生する世界に送ってほしい。綾が生きる世界なら何処であろうと構わない。今度こそ...綾を守りたいんだ...。」
彰が強い眼差しで神様を見つめた。
「 綾は...君のことを何も覚えておらんのじゃぞ?それに、君は死んではおらんから、こっちの世界で君は存在しなかったことになる...。それでも行くのかね?」
神様は心配そうに見ているが、彰の意思は固かった。
「 それでも綾の側で生きたいんだ。例えどんなことが待ち受けていても...俺は今度こそ綾を守りたい。」
神様が彰の目を見つめる。
「わかった。しかし綾の姿は前世の世界と変わっておるが...見つけられるかのぅ。そして綾は完全に前世の“記憶”を失っておる。君は前世を話さずにいることが出来るのか?とてもツライ思いをするぞ?」
神様は、彰にも幸せになって欲しかった。
だから綾が“記憶”を消す決断をしたことで、彰がツライ思いをするのがわかっていたので心配していたのだ。
「 それでもだ。例え覚えていなくても、自分のこと、前世を話せなくても...例えツライ思いをしようとも、俺は綾のいる世界で生きたい。ツライ思いは俺の罰なんだよ...。俺があの時、すぐに追いかけて綾を捕まえて誤解を解いていたら綾は死ぬことはなかったんだから。」
神様は彰の思いを尊重することにした。
そして彰にも次の世界へ行く為に何か力を授けようと要望を聞いた。
「 綾は絶対に人を傷つける力を嫌うはず。しかし綾を守るにはそういう力も必要になると思うから...俺は剣
や格闘系に特化した力を貰いたい。絶対に綾を危険から守りたいんだ...。」
彰の思いを聞き神様は彰に力を授けた。
「 彰くん...君にまで業を背負わせてしまってすまない。彼女を見つけたら今度こそその手で守るんじゃ。そして綾の話を聞いたと思うが、もしかしたら..また悪魔が綾に何かすることも考えられる...。君には悪魔を斬ることができる聖剣を与えよう。使うべき時が来たら強く念じるんじゃ。君も次こそは...綾と幸せになっておくれ。」
神様がそう話すと、彰は力強く頷いた。
「神様...短い間だったけど、色々我が儘を聞いてくれてありがとう。」
彰が笑ってお礼を言うと、神様も嬉しそうに笑った。
最後に、向こうでのナビに使えと鷹のような使い魔をくれた。
「達者でな...綾を頼んだぞ。」
そういうと神様は、綾の時と同じように杖を掲げた。
「 綾....今度こそ必ず守るから...会うまで無事でいてくれよ。」
彰も綾に続き旅立った。
神様は二人が無事出会えるように心から祈った。
そして彰の思いが叶うように。
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