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14話

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 最近ミラーネ様がシルヴィオ殿下とよく二人でいる姿を見かけるようになった。

 ミラーネ様は庶民だった。

 それが聖女の力を発現されたからと神官長様の養女となり学園に編入してきた。

 とても明るくて誰とでも仲良くなれるお方。わたしとは正反対の人だと思う。

 ポール様にお怒りで一旦は側近から外すと言った殿下もミラーネ様の執り成しでまた元に戻された。

 今までなら殿下のすぐそばにいたポール様だけど少し後ろからみんなについていくような感じで遠慮気味でそばにいる。

 色々と陰で噂されているのを本人も耳にしてとても居心地が悪そう。それでも殿下から離れないのは伯爵家としては第二王子の側近から外されては困ると親からの圧がかかっているようだ。

 そんな様子を少し遠巻きに見ているとポール様と目があった。

 今までは蔑むように見ていたポール様だったけど今は憎しみを込めて睨まれる。

 思わず目を背けたくなるくらいの憎悪を感じる。彼にとっては全てわたしのせいなのだろう。

 そんな彼の視線にミラーネ様が何故かいつも気がつく。ポール様にミラーネ様が耳打ちをするとポール様はわたしを睨むのをやめる。

 プイッと無視をして違う方へと視線を移すポール様、それを見てなぜか微笑むミラーネ様。

 わたしへ視線を向けると満足そうに美しい笑みを浮かべるのだ。

 わたしが固まって動けない姿が滑稽で可笑しいのか、それともいつもビクビクしている公爵令嬢が面白いのか。

「シルヴィオ殿下ぁ」

 わたしに見せつけるように殿下の腕に手を絡ませて甘えて「ねぇ早く行きましょう」とわたしを一瞥する。

 わたしはそんな彼らを少し離れたところで見送る。

 そして……


「アイシャ嬢?」

 ほら、わたしの肩を優しく叩く。

 ユリウス殿下はわたしが困った時に声をかけてくれる。

 どこで見ているのかしら?

 そう思うくらい。

 ユリウス殿下はあまり側近や取り巻きと過ごさない。

 一人で行動とはいかないけど、数人と静かに過ごされる。

 わたしと同じ歳の14歳なのに、まだ婚約者のいないユリウス殿下。

 三男にもなるとそこまで焦っていないのかもしれない。
 うん、多分、陛下は他国への婿入りも視野に入れているのかもしれない。

 所詮王子も王太子以外はコマでしかないもの。

 わたしとの婚約だって公爵家の力を取り込みたい陛下と、王族との関係を強固にしたいお父様の考えが一致したからだもの。

 わたしに断れない理由を幼い頃わざと言ったのもわたしを脅すため。

 お父様はわたしを大切にしてくれる、愛してくれる。でも公爵家の当主であり家門を一番大切にしている。そう、娘のわたしなんかより公爵家の繁栄が、一族の当主として一番大切なんだとお父様のそばにいればわかる。

 わたしもまた使い捨てのコマで必要なくなれば捨てられるのだろう。

 それは何故か決定なのだと思ってしまう。

 そんなことわからないのに。これからの未来、わたしがどうなるのかなんて誰もわからないのに、不思議にお父様はわたしではなく公爵家を選ぶのだと確信している。

 そしてシルヴィオ殿下とミラーネ様の愛はこれから育まれていくのだろう。

 ユリウス殿下は、表情のないわたしの顔を困ったように覗き込んだ。

「ねぇ?アイシャ嬢?君、もしかして兄上が好きなの?もしかして……傷ついているの?」

 ーーわたしがシルヴィオ殿下を?

 ユリウス殿下は何を言っているのかしら?

 わたしはいつも意地悪で怖いシルヴィオ殿下が苦手なの。わたしには優しく微笑んでなんてくれない。

 ミラーネ様とどんなに仲良くされていてもわたしの心に何も響かないし、何も思わない。

 そう、傷ついてなんかいないわ。

「そんな顔するなよ」
 ユリウス殿下がそっとわたしの顔に手を近づけた。

「……な、なに?」

「泣いてるの、気づいてないの?」

ーーわたしが?泣いてる?どうして?



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