77 / 93
77話 何故?
しおりを挟む
「サイロ、大丈夫だからそこを退いてちょうだい」
震える体をなんとか抑えながら立ちあがろうとした。
このままではサイロが怪我をしてしまう。
もう嫌だ。大切な人たちを傷つけたくない。
「ブロア、俺が行くから。ここに座っていてくれ」
横にいたセフィルがわたくしの肩に優しく手を置くと、座るように促した。
「サイロが………サイロ、お願い……わたくしの声を聞いてちょうだい……そこに立たないで。わたくしはもうどうせ長くはないの……守られてまで生きる必要はないの……」
サイロはゆっくりとわたくしに振り返った。
「お嬢………」
久しぶりにわたくしを『お嬢』と呼んだサイロ。最近はずっとブロア様だったのに……
「俺は………あなたの護衛騎士です………最期まで………お護りします」
「お前達はわたしの言うことを聞いていればいいんだ!どいつもこいつもブロア、ブロア!
この娘はわたしの操り人形なんだ!ブロアが長くない?そんなことはどうでもいい。今目の前で生きているんだ。それを最後まで利用してやる!
くそっ、イライラする。ブロアを見ると腹が立って仕方がない……まるでジェリーヌに責められている気分になる……お前の存在がわたしを苦しめるんだ。いっそいなくなって仕舞えばいい」
お父様は鞭をサイロに打ちつけた。
「やめて!もうやめて!」
わたくしの声はお父様には届かないのが悔しい。全く聞こうともしない。
セフィルはお父様の腕を掴んだ。
「宰相、もうおやめください」
「離せ!お前は不敬罪で捕まりたいのか?誰かセフィルを取り押さえろ!」
アリーゼ国の騎士達は戸惑っていた。
バルン国の騎士達は「あなたの命令をこれ以上聞くつもりはありません」と動こうとしなかった。
「うるさい、無能なお前達がわたしに意見などするな!」
セフィルを鞭で打ち振り払い、わたくしのそばにきたお父様。サイロはお父様を取り押さえようとした。
しかし、お父様がセフィルの剣を奪い取り、わたくしに向けて剣を振り上げた。
ザクッ………
剣がサイロの肩から胸にかけて切り付けられた。
倒れたサイロ……わたくしの顔にサイロの生温かい血が………
「や、やだ………なんで……やだ………誰かサイロを助けて」
「邪魔だ!お前はなんで最後までわたしの前にいるんだ?邪魔をするのか?鬱陶しい、何が護衛騎士だ。ただブロアのそばにいるだけの無能なくせして」
興奮してハアハアと肩で息をするお父様。
騒然となった部屋………
わたくしは「いやぁーーーー」と泣き叫んだ。
その時……
「何があったんだ?」
入ってきたのはアリーゼ国の国王陛下だった。
「なんだ?この有り様は?宰相、気でも狂ったのか?この部屋の血はどうした?お前達、早くこの者を助けなさい!ブロア、大丈夫だ。遅れてすまなかった………宰相を捕えろ!」
「………サイロ………死んじゃ嫌だ……だめだよ……死ぬのはわたくしが先なの……」
何故ここに国王陛下が居るの?
何故サイロはこんな酷い目に遭うの?
何故………
薬が切れたのか……心の中の何かが切れてしまったのか……意識がだんだん遠のいていく………
「………セフィ……ル………サイロ………」
セフィルはわたくしの名を何度も呼んでいる……だけど返事ができない……
セフィル……幸せになってね……
わたくしはサイロと共にゆっくりと過ごすわ……馬鹿言って、笑い合いながら……
愛していたの……セフィルを……だけど、おかしいの……そばにいて当たり前なのはサイロだったの……
サイロがいなくなったらわたくし……
「ブロア?早く医者を呼べ!」
国王陛下の声……久しぶりに聞くわ………
こうしてわたくしは意識を手放した。
震える体をなんとか抑えながら立ちあがろうとした。
このままではサイロが怪我をしてしまう。
もう嫌だ。大切な人たちを傷つけたくない。
「ブロア、俺が行くから。ここに座っていてくれ」
横にいたセフィルがわたくしの肩に優しく手を置くと、座るように促した。
「サイロが………サイロ、お願い……わたくしの声を聞いてちょうだい……そこに立たないで。わたくしはもうどうせ長くはないの……守られてまで生きる必要はないの……」
サイロはゆっくりとわたくしに振り返った。
「お嬢………」
久しぶりにわたくしを『お嬢』と呼んだサイロ。最近はずっとブロア様だったのに……
「俺は………あなたの護衛騎士です………最期まで………お護りします」
「お前達はわたしの言うことを聞いていればいいんだ!どいつもこいつもブロア、ブロア!
この娘はわたしの操り人形なんだ!ブロアが長くない?そんなことはどうでもいい。今目の前で生きているんだ。それを最後まで利用してやる!
くそっ、イライラする。ブロアを見ると腹が立って仕方がない……まるでジェリーヌに責められている気分になる……お前の存在がわたしを苦しめるんだ。いっそいなくなって仕舞えばいい」
お父様は鞭をサイロに打ちつけた。
「やめて!もうやめて!」
わたくしの声はお父様には届かないのが悔しい。全く聞こうともしない。
セフィルはお父様の腕を掴んだ。
「宰相、もうおやめください」
「離せ!お前は不敬罪で捕まりたいのか?誰かセフィルを取り押さえろ!」
アリーゼ国の騎士達は戸惑っていた。
バルン国の騎士達は「あなたの命令をこれ以上聞くつもりはありません」と動こうとしなかった。
「うるさい、無能なお前達がわたしに意見などするな!」
セフィルを鞭で打ち振り払い、わたくしのそばにきたお父様。サイロはお父様を取り押さえようとした。
しかし、お父様がセフィルの剣を奪い取り、わたくしに向けて剣を振り上げた。
ザクッ………
剣がサイロの肩から胸にかけて切り付けられた。
倒れたサイロ……わたくしの顔にサイロの生温かい血が………
「や、やだ………なんで……やだ………誰かサイロを助けて」
「邪魔だ!お前はなんで最後までわたしの前にいるんだ?邪魔をするのか?鬱陶しい、何が護衛騎士だ。ただブロアのそばにいるだけの無能なくせして」
興奮してハアハアと肩で息をするお父様。
騒然となった部屋………
わたくしは「いやぁーーーー」と泣き叫んだ。
その時……
「何があったんだ?」
入ってきたのはアリーゼ国の国王陛下だった。
「なんだ?この有り様は?宰相、気でも狂ったのか?この部屋の血はどうした?お前達、早くこの者を助けなさい!ブロア、大丈夫だ。遅れてすまなかった………宰相を捕えろ!」
「………サイロ………死んじゃ嫌だ……だめだよ……死ぬのはわたくしが先なの……」
何故ここに国王陛下が居るの?
何故サイロはこんな酷い目に遭うの?
何故………
薬が切れたのか……心の中の何かが切れてしまったのか……意識がだんだん遠のいていく………
「………セフィ……ル………サイロ………」
セフィルはわたくしの名を何度も呼んでいる……だけど返事ができない……
セフィル……幸せになってね……
わたくしはサイロと共にゆっくりと過ごすわ……馬鹿言って、笑い合いながら……
愛していたの……セフィルを……だけど、おかしいの……そばにいて当たり前なのはサイロだったの……
サイロがいなくなったらわたくし……
「ブロア?早く医者を呼べ!」
国王陛下の声……久しぶりに聞くわ………
こうしてわたくしは意識を手放した。
2,865
お気に入りに追加
4,189
あなたにおすすめの小説
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王子が主人公のお話です。
番外編『使える主をみつけた男の話』の更新はじめました。
本編を読まなくてもわかるお話です。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる