72 / 93
72話 宰相閣下 ⑥
しおりを挟む
「サイロはどうしてる?」
騎士の一人に尋ねると、少し視線を逸らしながら「牢の中で静かにしております」と返事をした。
「そうか……ブロアがアリーゼ国に着くのはそろそろだな……屋敷に閉じ込めておくように伝えてある。わたしもそろそろここでの仕事も終わりだ……早めに終わらせて帰るとするか」
騎士達は顔を引き攣らせていた。
「……了解いたしました。準備をします」
「頼む……サイロは、白状したか?」
「いえ、盗みではないようです」
「ほお、盗んでいないという証拠は見つかったのか?誰か証言をしたのか?」
するわけがない。ブロアはあんな状態ではなにも言えないだろう。
わたしが何も知らないと思っているのか。
ブロアが体調が悪いことくらいは見ていたらわかった。だから何だと言うんだ。
死ぬわけではあるまいし。腹を刺されて無理してこの国まで来たんだ。
無理すれば体調が悪くなるのは当たり前だ。
それに、ブロアがまだこのバルン国にいることはわかっている。
調べさていた報告書を読んだらこの国の別荘に騎士達が連れて行っていることもわかった。
ただ別荘の所有者の名前は不明のままだ。エイリヒ商会の当主が動いているのだから、この国の上位貴族の誰かが動いているのだろう。
何故ブロアがエイリヒ殿と親しくなったのか……
セフィルも仕事でこちらに来ていると言ったが、出鱈目なこともわかっている。あの男はブロアに好意を持っている。
だからバルン国にいることを知って追ってきたのだろう。
サイロの様子を知りたくて態々わたしに会いに来た。だから、セフィルにはブロアとの婚姻を早くするように勧めた。
ブロアが嫌がろうと関係ない。婚姻さえして仕舞えばセフィルはわたしの駒として好きに操れる。離縁などさせない。一生二人とも飼い殺しにして我が公爵家のために使い続けてやる。
ーーああ、いいことを思いついた。
わたしに逆らってまだこの国にいるブロアへの罰だ。
わたしの言うことを聞かなければ、『こうなる』と徹底的に教え込んでおこう。
「閣下……あの、どう致しました?突然黙り込まれましたが?あの……先ほどサイロの無実を一人のメイドが証言致しました」
「メイド?」
「はい、ウエラという公爵家に勤めているメイドです。歳は16歳だと言っておりました」
「うちで勤めている?そんなメイドは知らないな。まず、一人で屋敷を出たはずのブロアなのに、何故うちの屋敷の使用人がそばにいるんだ?サイロは罪人だから、屋敷から逃げ出したのだろうが……もしかしてそのメイドも罪人?まだこの城内にいるのならわたしが事情を聞こうか?」
「あ……あの……」
「どうした?はっきりと返事をしろ」
「騎士団の取調室にまだいるかもしれません」
「そうか……ならば帰る前にうちの使用人か、わたしが確認してやろう」
取調室に入ると少女らしき子が青い顔をしてビクビクしながらわたしを見ていた。
ブロアを見つけた時にそばにいた女だとすぐにわかった。ブロアのメイドの顔なんて覚えてもいないが、まだ見かけたばかりの子だ。
「お前はブロア付きのメイドなのか?」
「は、はい……」
小さい声で震えながら答えた。
「あのネックレスはサイロが盗んだものだろう?そうだな?」
「…………います」
あまりにも小さな声にわたしはわざと
「お前も一緒に盗んだのか?だからうちの屋敷から逃げてきたんだな?おい、誰か鞭をもってこい!」と叫んだ。
バルン国の騎士達は一瞬、戸惑ったものの素直に鞭を持ってきた。
「…………や、やめてください」
涙をいっぱいためて真っ青に震える娘の背中に数回鞭を打ちつけた。
「盗人は牢にでも入れておけ」
ぐったりした娘をそのまま後にしてサイロのいる牢へと向かった。
「サイロ、お前が罪を認めなければあのウエラという娘は毎回事情を聞かないといけなくなる。よく考えろ」
わたしは、恐怖という種をウエラに蒔いた。
ブロアは、二人のこれからをどうするだろうか。
そのまま放って国へ戻るか。二人を助けに来るか。
サイロはどうするのか。
退屈凌ぎになりそうだ。
◆ ◆ ◆
独り言。
半分以上書き終えて、あと少し書き足して……と思いつつスマホから離れたら……
何故かこの話が、全て消えていました。
一から書き直し……
めちゃくちゃショック😨
うっ……自分の失敗に悔しい………
あと少し、お付き合いください。
騎士の一人に尋ねると、少し視線を逸らしながら「牢の中で静かにしております」と返事をした。
「そうか……ブロアがアリーゼ国に着くのはそろそろだな……屋敷に閉じ込めておくように伝えてある。わたしもそろそろここでの仕事も終わりだ……早めに終わらせて帰るとするか」
騎士達は顔を引き攣らせていた。
「……了解いたしました。準備をします」
「頼む……サイロは、白状したか?」
「いえ、盗みではないようです」
「ほお、盗んでいないという証拠は見つかったのか?誰か証言をしたのか?」
するわけがない。ブロアはあんな状態ではなにも言えないだろう。
わたしが何も知らないと思っているのか。
ブロアが体調が悪いことくらいは見ていたらわかった。だから何だと言うんだ。
死ぬわけではあるまいし。腹を刺されて無理してこの国まで来たんだ。
無理すれば体調が悪くなるのは当たり前だ。
それに、ブロアがまだこのバルン国にいることはわかっている。
調べさていた報告書を読んだらこの国の別荘に騎士達が連れて行っていることもわかった。
ただ別荘の所有者の名前は不明のままだ。エイリヒ商会の当主が動いているのだから、この国の上位貴族の誰かが動いているのだろう。
何故ブロアがエイリヒ殿と親しくなったのか……
セフィルも仕事でこちらに来ていると言ったが、出鱈目なこともわかっている。あの男はブロアに好意を持っている。
だからバルン国にいることを知って追ってきたのだろう。
サイロの様子を知りたくて態々わたしに会いに来た。だから、セフィルにはブロアとの婚姻を早くするように勧めた。
ブロアが嫌がろうと関係ない。婚姻さえして仕舞えばセフィルはわたしの駒として好きに操れる。離縁などさせない。一生二人とも飼い殺しにして我が公爵家のために使い続けてやる。
ーーああ、いいことを思いついた。
わたしに逆らってまだこの国にいるブロアへの罰だ。
わたしの言うことを聞かなければ、『こうなる』と徹底的に教え込んでおこう。
「閣下……あの、どう致しました?突然黙り込まれましたが?あの……先ほどサイロの無実を一人のメイドが証言致しました」
「メイド?」
「はい、ウエラという公爵家に勤めているメイドです。歳は16歳だと言っておりました」
「うちで勤めている?そんなメイドは知らないな。まず、一人で屋敷を出たはずのブロアなのに、何故うちの屋敷の使用人がそばにいるんだ?サイロは罪人だから、屋敷から逃げ出したのだろうが……もしかしてそのメイドも罪人?まだこの城内にいるのならわたしが事情を聞こうか?」
「あ……あの……」
「どうした?はっきりと返事をしろ」
「騎士団の取調室にまだいるかもしれません」
「そうか……ならば帰る前にうちの使用人か、わたしが確認してやろう」
取調室に入ると少女らしき子が青い顔をしてビクビクしながらわたしを見ていた。
ブロアを見つけた時にそばにいた女だとすぐにわかった。ブロアのメイドの顔なんて覚えてもいないが、まだ見かけたばかりの子だ。
「お前はブロア付きのメイドなのか?」
「は、はい……」
小さい声で震えながら答えた。
「あのネックレスはサイロが盗んだものだろう?そうだな?」
「…………います」
あまりにも小さな声にわたしはわざと
「お前も一緒に盗んだのか?だからうちの屋敷から逃げてきたんだな?おい、誰か鞭をもってこい!」と叫んだ。
バルン国の騎士達は一瞬、戸惑ったものの素直に鞭を持ってきた。
「…………や、やめてください」
涙をいっぱいためて真っ青に震える娘の背中に数回鞭を打ちつけた。
「盗人は牢にでも入れておけ」
ぐったりした娘をそのまま後にしてサイロのいる牢へと向かった。
「サイロ、お前が罪を認めなければあのウエラという娘は毎回事情を聞かないといけなくなる。よく考えろ」
わたしは、恐怖という種をウエラに蒔いた。
ブロアは、二人のこれからをどうするだろうか。
そのまま放って国へ戻るか。二人を助けに来るか。
サイロはどうするのか。
退屈凌ぎになりそうだ。
◆ ◆ ◆
独り言。
半分以上書き終えて、あと少し書き足して……と思いつつスマホから離れたら……
何故かこの話が、全て消えていました。
一から書き直し……
めちゃくちゃショック😨
うっ……自分の失敗に悔しい………
あと少し、お付き合いください。
1,725
お気に入りに追加
4,200
あなたにおすすめの小説
かわいそうな旦那様‥
みるみる
恋愛
侯爵令嬢リリアのもとに、公爵家の長男テオから婚約の申し込みがありました。ですが、テオはある未亡人に惚れ込んでいて、まだ若くて性的魅力のかけらもないリリアには、本当は全く異性として興味を持っていなかったのです。
そんなテオに、リリアはある提案をしました。
「‥白い結婚のまま、三年後に私と離縁して下さい。」
テオはその提案を承諾しました。
そんな二人の結婚生活は‥‥。
※題名の「かわいそうな旦那様」については、客観的に見ていると、この旦那のどこが?となると思いますが、主人公の旦那に対する皮肉的な意味も込めて、あえてこの題名にしました。
※小説家になろうにも投稿中
※本編完結しましたが、補足したい話がある為番外編を少しだけ投稿しますm(_ _)m
【完結】妹にあげるわ。
たろ
恋愛
なんでも欲しがる妹。だったら要らないからあげるわ。
婚約者だったケリーと妹のキャサリンが我が家で逢瀬をしていた時、妹の紅茶の味がおかしかった。
それだけでわたしが殺そうとしたと両親に責められた。
いやいやわたし出かけていたから!知らないわ。
それに婚約は半年前に解消しているのよ!書類すら見ていないのね?お父様。
なんでも欲しがる妹。可愛い妹が大切な両親。
浮気症のケリーなんて喜んで妹にあげるわ。ついでにわたしのドレスも宝石もどうぞ。
家を追い出されて意気揚々と一人で暮らし始めたアリスティア。
もともと家を出る計画を立てていたので、ここから幸せに………と思ったらまた妹がやってきて、今度はアリスティアの今の生活を欲しがった。
だったら、この生活もあげるわ。
だけどね、キャサリン……わたしの本当に愛する人たちだけはあげられないの。
キャサリン達に痛い目に遭わせて……アリスティアは幸せになります!
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる