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34話 わたくしは恵まれているのね。
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先生の別荘からまた馬車に乗ったのは四日後のことだった。
わたくしは馬車の中に毛布やクッションを引き詰められた中で横になっていた。
先生は自分の仕事を放ってわたくしのためについて来てくれた。ヨゼフだって長年大切にしてきた庭園の仕事を放って来てくれた。
また目覚めたら知らない部屋のベッドに寝かされていた。
「……ここは?」
「ブロア様目覚められましたか?」
「ええ……少し楽になったわ」
本当は刺された傷がとても痛いし熱を持っているように熱い。体もだるくて話すのもキツイ。もう怪我して一週間近く経つのになかなか傷は癒えない。
「今から薬を処方しますので診察させてもらいますね?」
「わかったわ、よろしくお願いね」
ここはどこ?いつになったらわたくしの目指す場所へ行けるの?
聞きたいことはたくさんある。だけど我儘は言えない。まずはこの傷を治さなければ海にはいけない。駄々をこねて連れて行ってもらってもわたくしの体力が持たないかもしれない。
死を覚悟しているくせに我儘ばかり。自分でも嫌になる。
これ以上我儘は言えない。
そう思い黙って診察を受けた。
「ブロア様、今は王都を出たところです。ここは海へ向かう道中からすればスタート地点に近い場所です」
「そう……まだまだね」
「少しずつ傷は治ってはきてはいますが、馬車の旅に耐えられるのは毎日数時間だけです」
「わかったわ……先生にはご迷惑ばかりかけてしまったわ。これ以上我儘に言わないようにあの不味い薬も頑張って飲むわ。だからお願い。わたくしを海に連れて行って……」
「そんなに不味いですか?あれでも苦労して人が飲める薬にしたつもりなのですが」
先生は苦笑していたけど「一度飲まれてみては如何かしら?」とわたくしも笑顔で答えた。
二人で話をしているとヨゼフが部屋に入って来た。
「お嬢様やっと目覚めたんですね。よかった……」
「ヨゼフにまで心配かけてごめんなさい。わたくしはもう大丈夫よ」
「そんな真っ青なお顔をして何が大丈夫なんですか!それよりもここにハーブティーを淹れて置いています。これを飲んでください」
ヨゼフが勧めてくれるハーブティーは傷の治りを早くしてくれる薬草らしい。
「思ったより美味しいわ」
「わたしが森に入って探して来たんです。採りたてなので新鮮で体にもいいはずです」
ヨゼフがニコッと笑うのでわたくしも微笑み返した。
サイロとウエラはいないけど、二人がそばにいてくれる。それだけでも心強かった。
わたくしが今泊まっている場所は、先生の患者さんだった大きな農家の方の家だと聞いた。
「ご挨拶しないといけないわね」
立ちあがろうとしたらベッドから落ちてしまった。足に力が入らなかったのだ。
「お嬢様は熱にうなされて三日ほど眠り続けておりました。まだしばらくは動くのもお辛いと思います。あいさつはのちほどでよろしいかと」ヨゼフがわたくしをまたベッドに戻してくれた。
「わかったわ」
そう頷いたけど、自分でもわかった。わたくしの体はもう思うように動けなくなり始めた。
胸の痣をそっと覗くと青い痣はまた大きくなっていた。
わたくしの体は馬車の旅に耐えられるのだろうか。せめてこの刺し傷だけでも落ち着けば……わたくしが深いため息をついていると先生が言った。
「死を近づけさせてしまうかもしれないが……痛みを和らげる薬がある。それを飲めばしばらくは移動も楽になるかもしれない」
「最後の我儘のために先生達を巻き込んでしまったわ。どうせ消える命だもの、巻き込んでしまったのなら最後まで叶えたいわ」
先生が「わかった」と言って部屋を出て行った。
しばらくして部屋に入って来たのは……
「先生?…………何故貴方がここに?」
わたくしは馬車の中に毛布やクッションを引き詰められた中で横になっていた。
先生は自分の仕事を放ってわたくしのためについて来てくれた。ヨゼフだって長年大切にしてきた庭園の仕事を放って来てくれた。
また目覚めたら知らない部屋のベッドに寝かされていた。
「……ここは?」
「ブロア様目覚められましたか?」
「ええ……少し楽になったわ」
本当は刺された傷がとても痛いし熱を持っているように熱い。体もだるくて話すのもキツイ。もう怪我して一週間近く経つのになかなか傷は癒えない。
「今から薬を処方しますので診察させてもらいますね?」
「わかったわ、よろしくお願いね」
ここはどこ?いつになったらわたくしの目指す場所へ行けるの?
聞きたいことはたくさんある。だけど我儘は言えない。まずはこの傷を治さなければ海にはいけない。駄々をこねて連れて行ってもらってもわたくしの体力が持たないかもしれない。
死を覚悟しているくせに我儘ばかり。自分でも嫌になる。
これ以上我儘は言えない。
そう思い黙って診察を受けた。
「ブロア様、今は王都を出たところです。ここは海へ向かう道中からすればスタート地点に近い場所です」
「そう……まだまだね」
「少しずつ傷は治ってはきてはいますが、馬車の旅に耐えられるのは毎日数時間だけです」
「わかったわ……先生にはご迷惑ばかりかけてしまったわ。これ以上我儘に言わないようにあの不味い薬も頑張って飲むわ。だからお願い。わたくしを海に連れて行って……」
「そんなに不味いですか?あれでも苦労して人が飲める薬にしたつもりなのですが」
先生は苦笑していたけど「一度飲まれてみては如何かしら?」とわたくしも笑顔で答えた。
二人で話をしているとヨゼフが部屋に入って来た。
「お嬢様やっと目覚めたんですね。よかった……」
「ヨゼフにまで心配かけてごめんなさい。わたくしはもう大丈夫よ」
「そんな真っ青なお顔をして何が大丈夫なんですか!それよりもここにハーブティーを淹れて置いています。これを飲んでください」
ヨゼフが勧めてくれるハーブティーは傷の治りを早くしてくれる薬草らしい。
「思ったより美味しいわ」
「わたしが森に入って探して来たんです。採りたてなので新鮮で体にもいいはずです」
ヨゼフがニコッと笑うのでわたくしも微笑み返した。
サイロとウエラはいないけど、二人がそばにいてくれる。それだけでも心強かった。
わたくしが今泊まっている場所は、先生の患者さんだった大きな農家の方の家だと聞いた。
「ご挨拶しないといけないわね」
立ちあがろうとしたらベッドから落ちてしまった。足に力が入らなかったのだ。
「お嬢様は熱にうなされて三日ほど眠り続けておりました。まだしばらくは動くのもお辛いと思います。あいさつはのちほどでよろしいかと」ヨゼフがわたくしをまたベッドに戻してくれた。
「わかったわ」
そう頷いたけど、自分でもわかった。わたくしの体はもう思うように動けなくなり始めた。
胸の痣をそっと覗くと青い痣はまた大きくなっていた。
わたくしの体は馬車の旅に耐えられるのだろうか。せめてこの刺し傷だけでも落ち着けば……わたくしが深いため息をついていると先生が言った。
「死を近づけさせてしまうかもしれないが……痛みを和らげる薬がある。それを飲めばしばらくは移動も楽になるかもしれない」
「最後の我儘のために先生達を巻き込んでしまったわ。どうせ消える命だもの、巻き込んでしまったのなら最後まで叶えたいわ」
先生が「わかった」と言って部屋を出て行った。
しばらくして部屋に入って来たのは……
「先生?…………何故貴方がここに?」
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