【完結】さよならのかわりに

たろ

文字の大きさ
上 下
13 / 93

13話  こうしてわたくしは悪女と呼ばれるようになったの。

しおりを挟む
『ブロアは僕の愛するロザンナに手を出すつもりなのか?』
 ーーまた訳のわからないことを言い出したわ。

『さっきから何を言ってるんですの?話が通じませんわね、わたくしはサイロにまで手を出すなと言ってるのです。殿下がわたくしの悪い噂を流そうと殿下の仕事をわたくしに回そうと、ワインをわざとかけたと言われようと、言い返すつもりはありませんでした。
 もちろんわたくしの身に危険が及ぶのは困るのでその時は対処するつもりでおりました。
 でも今回の身に覚えのない事件の犯人にさせられるのは黙って見過ごすわけにはいきませんわ。それに婚約破棄は良いとしても、側妃になれと?
 そんなの嫌ですわ。わたくし王太子妃にならずに済むと思い、最近とても機嫌良く過ごしていたのです。いつ婚約解消してもらえるのか楽しみに待っておりました。なのに、側妃?
 絶対に!嫌ですわ』

『はっ?君は王太子妃になりたいんじゃないのか?だからいつも僕の仕事まで頑張って仕事をしてみんなからの評価をあげようとしているんだろう?』

『何を馬鹿なことを仰るのですか?貴方が真面目に仕事をしないからわたくしに官僚や文官達が仕事を持ってくるのです。おかげでゆっくり眠ることもできないし執務室から外に出る暇もありませんでしたわ』
 ーーこの人、わかってて都合の良いように受け取ってるのかしら?それとも馬鹿なの?

『馬鹿?』殿下がその言葉にまた腹を立て始めた。

『殿下………わたくしの有責で喜んで婚約破棄いたしますわ。貴方の流した噂通りのままで否定もしませんわ。ですから、側妃の話は“なし”でお願いいたしますわ』

『側妃になってもらわなければロザンナとの結婚を認めてもらえない!ロザンナのお腹には僕の子供がいるんだ!』

『そんなこと知りませんわ。わたくしがこなしていた執務の量なら、殿下の能力だと毎日数時間の睡眠で残りはずっと執務をこなせばなんとかなりますわ』

『僕に仕事をしろと?愛するロザンナと過ごす時間がなくなったらどうするんだ?ふざけるな!君が側妃になればいいだけのことだろう?サイロを処刑するぞ!』

『嫌ですわ。それなら殿下が無理やりわたくしに仕事を押し付け自分が仕事をしているかのようにしていたこと。わたくしに罪を着せて婚約破棄しようとしたことなど、全て国民に向けてバラします』

『脅すのか?王太子である僕を?君は悪女として名が通っているんだ、誰も信じるわけがない』

『はああーー』わたくしは大きな溜息をついた。

『今この時点で、影は話を聞いています。影は嘘はつきません。わたくしの身の潔白は影が証言してくれますわ。
 そして殿下がサボってきたこと、婚約者がいる身でありながら浮気して子供を孕らせたこと、わたくしに罪を着せようとしたこと、全て証言してくれます。それでよろしいのですか?』

『………婚約破棄は君の有責でいいんだな?』

『わたくしは悪女らしいので、それで』

 ーーお父様にはどう思われるかしら?屋敷を追い出される?それとも軟禁されるのかしら?

 わたくしは殿下の婚約破棄を受け入れた。

 それからは殿下とは挨拶以外で話すことはなかった。

 なのにわたくしに話しかけてくるなんて……それも何事もなかったかのように話しかけてきた。

 噂ではわたくしとの婚約破棄の後、かなり苦労されたと聞いた。

 それは官僚や文官の人達も。

 わたくしに大量の仕事をさせていたのに、それをこなす人がいなくなれば歪みが出てくるものだもの。

 陛下はそのことを知らなかった(わたくしが隠して執務をしていたから)のでかなりお怒りだったそうだ。

 殿下や官僚、文官達に監視役をつけて部屋から出さずにずっと仕事ができるようになるまで眠る時間も減らし家にも帰さなかったと聞いている。

 3年も経てば殿下も執務をこなせるようになったみたいね、わたくしに話しかける時間の余裕もあるのだもの。

 陛下は殿下を廃嫡せずそのまま再教育された。再教育はかなり厳しいものだったと聞く。殿下はこの国の国王となるだけの力をつけたのかしら?

 ま、死んでいくわたくしにはもうどうでもいいこと。

 さっさとお父様にお会いして、いい思い出なんてない王城を後にしよう。

 そう思いながらお父様のところへ向かった。

 お父様とも婚約破棄からさらに仲は悪化したのだけど。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 6

木野 キノ子
ファンタジー
21世紀日本で、ヘドネという源氏名で娼婦業を営み、46歳で昇天…したと思ったら!! なんと中世風異世界の、借金だらけ名ばかり貴族の貴族令嬢に転生した!! 第二の人生、フィリーという名を付けられた、実年齢16歳、精神年齢還暦越えのおばはん元娼婦は、せっかくなので異世界無双…なんて面倒くさいことはいたしません。 小金持ちのイイ男捕まえて、エッチスローライフを満喫するぞ~…と思っていたら!! なぜか「救国の英雄」と呼ばれる公爵様に見初められ、求婚される…。 ハッキリ言って、イ・ヤ・だ!! なんでかって? だって嫉妬に狂った女どもが、わんさか湧いてくるんだもん!! そんな女の相手なんざ、前世だけで十分だっての。 とは言え、この公爵様…顔と体が私・フィリーの好みとドンピシャ!! 一体どうしたら、いいの~。 一人で勝手にどうでもいい悩みを抱えながらも、とりあえずヤると決意したフィリー。 独りよがりな妬み嫉みで、フィリーに噛みつこうとする人間達を、前世の経験と還暦越え故、身につけた図太さで乗り切りつつ、取り巻く人々の問題を解決していく。 しかし、解決すればまた別の問題が浮上するのが人生といふもの。 嫉妬に狂った女だけでもメンドくせぇのに、次から次へと、公爵家にまつわる珍事件?及びしがらみに巻き込まれることとなる…。 しかも今回…色々暗躍している連中が、ついに…。

今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!

ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。 苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。 それでもなんとななれ始めたのだが、 目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。 そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。 義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。 仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。 「子供一人ぐらい楽勝だろ」 夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。 「家族なんだから助けてあげないと」 「家族なんだから助けあうべきだ」 夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。 「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」 「あの子は大変なんだ」 「母親ならできて当然よ」 シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。 その末に。 「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」 この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです

灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。 それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。 その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。 この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。 フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。 それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが…… ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。 他サイトでも掲載しています。

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。 ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。 断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。 ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。 更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。 平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。 しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。 それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね? だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう? ※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。 ※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……) ※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。

処理中です...