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カリクシード(エドウィン殿下)④
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お茶会でシェリーナ嬢に僕の側妃にならないかと伝えた。
隣国の姫との結婚は覆らない。
ならばせめて愛する女性をそばにおきたかった。
側妃として何も責務は負わせずのんびりと暮らして欲しかった。
カリクシードの時僕は全て間違えていたと今ならわかる。
傲慢で我儘な妹のマリーナとクリシア。僕は何を見ていたのだろう。優秀すぎるジュリエットを嫌い蔑み、暴言を吐き続けた。
だけど、それでも、いつも目で追ってしまう存在だった。
僕の初恋の人。
なぜ、最後の最後に知ってしまったのだろう。
僕はジュリエットの笑顔を見てみたい。
そう思いながら死んでいったんだった。後悔しかない、あの辛い時間。
二人の遺体の悪臭に吐きそうになる。
でもジュリエットのことを考えると胸が苦しくて何度も何度も床を叩き手から血が流れた。
それでも自死だけはしてはならない、最後まで苦しみながら死ぬのが今の自分には相応わしい。
そう思い………苦しみながら死んだ。
そして今回は間違えない。そう思ったのに。
父はシェリーナ嬢との結婚を認めてくれなかった。
最後の賭けだと思い、シェリーナ嬢にとんでもないことだとわかっていて告げた。
でも返ってきた答えは「平民になるつもり」だった。流石に驚いた。
公爵家の後ろ盾もあり伯爵令嬢でもある彼女がなぜ平民になるんだ。
そして驚いていると今度はケインが
「シェリーナは俺と結婚している」などと言い出した。
婚約なら無理やり王族の力で解消できる。だが結婚になれば難しい。
貴族同士の婚姻の許可は王族が出す。それを王族の一存で取りやめさせることはできない。
ケインは僕が前世の記憶を取り戻しシェリーナ嬢を欲していることを理解して、先回りしてまさかの結婚をすでにしていた。
マリアンナは半狂乱で暴れ回った。
僕は、ベルナンドにまたしてもしてやられたなと思うしかなかった。
まさか15歳のシェリーナ嬢と16歳のケインが結婚してしまうなんて。それも王弟である叔父上に手を回し僕に気づかれないように。
僕は愛してもいない女性と結婚するしかなかった。
たまに二人が仲睦まじく夜会に出席する姿を遠くからみているしかなかった。
だけど、今更シェリーナ嬢を無理やり自分ものにする気にはなれなかった。
だって、彼女がケインの隣で楽しそうに笑っていたから。
僕は…………俺は、あの笑顔がずっとずっと好きだった。
あの笑顔をもう一度みたい、あの笑っていたジュリエットに会いたいと思いながら死んだんだった。
今度こそ自分がシェリーナ嬢を笑顔にさせたかった。
だけど僕に会うたびにビクビクとするシェリーナ嬢に気付き、諦めるしかなかった。
彼女は記憶がないのに僕を無意識に怖がっている。
それが答えだった。
ケインの隣にいるシェリーナ、あれは前世でベルナンドの隣にいたジュリエットの姿だったのだろう。
ベルナンドの大きな愛はずっとずっとジュリエットにだけ向けられている。
地下牢にいる時、ベルナンドの部下が一度だけやってきた。
『ベルナンド皇帝はジュリエット様のところへ逝かれました』
その部下は声を震わせていたから泣いているのかと思ったら、
「陛下は愛する人のそばに逝かれて幸せなんだと思います」と笑った。
終
隣国の姫との結婚は覆らない。
ならばせめて愛する女性をそばにおきたかった。
側妃として何も責務は負わせずのんびりと暮らして欲しかった。
カリクシードの時僕は全て間違えていたと今ならわかる。
傲慢で我儘な妹のマリーナとクリシア。僕は何を見ていたのだろう。優秀すぎるジュリエットを嫌い蔑み、暴言を吐き続けた。
だけど、それでも、いつも目で追ってしまう存在だった。
僕の初恋の人。
なぜ、最後の最後に知ってしまったのだろう。
僕はジュリエットの笑顔を見てみたい。
そう思いながら死んでいったんだった。後悔しかない、あの辛い時間。
二人の遺体の悪臭に吐きそうになる。
でもジュリエットのことを考えると胸が苦しくて何度も何度も床を叩き手から血が流れた。
それでも自死だけはしてはならない、最後まで苦しみながら死ぬのが今の自分には相応わしい。
そう思い………苦しみながら死んだ。
そして今回は間違えない。そう思ったのに。
父はシェリーナ嬢との結婚を認めてくれなかった。
最後の賭けだと思い、シェリーナ嬢にとんでもないことだとわかっていて告げた。
でも返ってきた答えは「平民になるつもり」だった。流石に驚いた。
公爵家の後ろ盾もあり伯爵令嬢でもある彼女がなぜ平民になるんだ。
そして驚いていると今度はケインが
「シェリーナは俺と結婚している」などと言い出した。
婚約なら無理やり王族の力で解消できる。だが結婚になれば難しい。
貴族同士の婚姻の許可は王族が出す。それを王族の一存で取りやめさせることはできない。
ケインは僕が前世の記憶を取り戻しシェリーナ嬢を欲していることを理解して、先回りしてまさかの結婚をすでにしていた。
マリアンナは半狂乱で暴れ回った。
僕は、ベルナンドにまたしてもしてやられたなと思うしかなかった。
まさか15歳のシェリーナ嬢と16歳のケインが結婚してしまうなんて。それも王弟である叔父上に手を回し僕に気づかれないように。
僕は愛してもいない女性と結婚するしかなかった。
たまに二人が仲睦まじく夜会に出席する姿を遠くからみているしかなかった。
だけど、今更シェリーナ嬢を無理やり自分ものにする気にはなれなかった。
だって、彼女がケインの隣で楽しそうに笑っていたから。
僕は…………俺は、あの笑顔がずっとずっと好きだった。
あの笑顔をもう一度みたい、あの笑っていたジュリエットに会いたいと思いながら死んだんだった。
今度こそ自分がシェリーナ嬢を笑顔にさせたかった。
だけど僕に会うたびにビクビクとするシェリーナ嬢に気付き、諦めるしかなかった。
彼女は記憶がないのに僕を無意識に怖がっている。
それが答えだった。
ケインの隣にいるシェリーナ、あれは前世でベルナンドの隣にいたジュリエットの姿だったのだろう。
ベルナンドの大きな愛はずっとずっとジュリエットにだけ向けられている。
地下牢にいる時、ベルナンドの部下が一度だけやってきた。
『ベルナンド皇帝はジュリエット様のところへ逝かれました』
その部下は声を震わせていたから泣いているのかと思ったら、
「陛下は愛する人のそばに逝かれて幸せなんだと思います」と笑った。
終
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