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バタバタと時間は経って。

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 ふと気がつくとわたしの周りの生活は一変していた。

 エリノアとお父様は再婚していた。

 そして伯爵の地位をお兄様に譲ってわたしの大好きなサムエルを連れて領地へと移って行った。
 バッカムもお父様達と共に。

 わたしはお父様には会うことはなかった。
 何度か「会いたい」と連絡は来たが、無視することにした。

 でもエリノアには流石に無視は出来ない。

 エリノアとはマリアナの屋敷で会い話をした。

「セレン様……申し訳ありません。だけど少し頼りない旦那様に絆されてしまいました……まさかの妊娠には驚きましたが……わたしは旦那様を愛してしまいました……」

「大人の二人だからわたしが言うことではないわ……だけどあの頼りないお父様のお世話は大変よ?」

「愛があれば歳の差なんて……頑張ります」

「もうお父様も引退したから貴族のしがらみに縛られることもないわ。
 ゆっくり領地で子育てしてね。エリノアには幸せになって欲しい。あの人がどこまで幸せにしてくれるかわからないけど……でもお父様は優しさだけならお勧めできるわ」

「エリノアっておじ専だったのね?」
 横でアラン君をあやしながらマリノアが呟いた。

「マリノア様……旦那様のあの頼りなさが母性本能をくすぐったんです、それに良いところもたくさんあるんですよ」

 ーーへえ、あったかしら?思わずツッコミそうになる。

 ダメなところなら沢山言えるけど。

「うーん、わたしにはないわ……まぁ好きになるのはそれぞれだから」

 マリアナはなんとも言えない顔をしながら「幸せになってね」と言った。

 わたしも三人との別れはとても寂しかった。



 それでも毎日の生活は、そして仕事も続いていく。

 騎士団の事務員から何故か診療所の職員になったわたしは結局屋敷を持たずに寮暮らしを続けることにした。

 平民にはなったけど、癒しの力のおかげで収入はかなり増えた。元々持っている財産と仕事の収入のおかげで生活に困ることはない。

 スティーブ様も完全に回復してわたしの前に現れることはなくなっていた。

 彼も騎士として完全に復帰して王城で働いているようだ。

 女性からの人気は高い。

 元々クールで冷たい雰囲気だった彼が今は人当たりが柔らかくなっていた。

 笑顔が増えたとかではなく、人を寄せ付けない空気が以前よりなくなっているみたい。

 みんな変わっていくのよね。

 わたしだけが頑なにお父様に怒って、スティーブ様に怒って……

 イザベラ様は火事を起こしたことで女性が送られる収容所で罪を償うことになった。

 そこは女性にとっては過酷な場所で毎日外で重たい石を運んだりするらしい。
 休日もなく最低限の衣食住が与えられるだけの生活。逃げることができない山奥の鉱山の収容所でひたすら罪を償う毎日が待っている。

 貴族令嬢として過ごしてきた彼女には耐えられない日々になるだろう。いっそ処刑された方が楽なのでは?と思ってしまう。

 わたしは屋敷を焼かれたことで、彼女の実家の侯爵家から賠償金を受け取った。

 いつか自分の診療所を開いて女一人暮らすのにちょうどいい家でも建てよう。

 そんなことを思いながら今日も寮の先輩達に捕まり酒盛りの日々を送っている。

 ちなみにわたし、お酒って得意じゃないので適当に合わせながらその場を楽しむことに徹している。
 伯爵令嬢の時に心から打ち解けられたのはマリアナだけだった。

 だけど平民の多い今の職場と寮はみんな温かくて優しい。

 わたしは今の生活に満足しながら日々を送っていた。





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