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でもやはり彼とは仲良くはなれません。

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 スティーブ様を治して少しだけ話してからハッと気がついた。
 お腹が空いてるのよ。

 魔力を使うととにかくお腹が空く。

「じゃあ食堂に行くのでこれで。もう会っても話しかけないで下さい。お互い離縁して別の道を過ごしています、貴方を助けたのは患者だからで特別な意味はありません。
 イザベラ様のことは、彼女にはもちろん怒りはありますが貴方には関係ないことですので気にしないでください」

「………しかし……」

「関係ありませんから!」

 ハッキリと伝えてスティーブ様を置いてさっさと食堂へ向かった。




 もう大人だから以前のことを思い出してグチグチと言うつもりもないし、治療のことも感謝して欲しいとも思っていないし、ましてやイザベラ様の起こした火事で謝られるのは妙にムカつく。

 ーーあんたには関係ないことなの!

 それに火事の弁償はイザベラ様の実家の侯爵家と只今話し合いをしているところだ。もちろん弁護士を通してだけど。

 それに寮生活も気に入っているし、今更スティーブ様と関わり合いたくはない。

 そんなことを考えていたら、魔導士様が肩をポンっと叩いて話しかけて来た。

「今日とうとう元旦那に会ったらしいな」

 ーーうわ、地獄耳。誰に聞いたのかしら?
 確かに周りには人が沢山居たからそりゃ知ってる人もいるわよね。

「偶然ですね」

「あ奴はな、お前が治療して命は助かったが火傷の跡も酷くて生きているのがやっとだったんだ……」

「そうでしょうね、だってスティーブ様だとわからないくらい酷い火傷でしたもの」

「お前が治療していなかったら死んでいただろう。その後のあいつの並ならぬ努力は凄まじかった。本当に頑張って生き抜いたんだ。お前が助けてくれたから何があっても治すと言ってな」

「そうだったんですね……」

 かなり大変な思いをしたのだろう。

 だけどわたしの心は何も感じなかった。

「セレンに対しては酷い旦那だったんだろうが、騎士としては立派だったんだぞ。火事の中取り残された子供を助けに入って一人助けたと思ったらまた家の中に入ってもう一人も助けたんだ。だから身体中大火傷をして……セレンお前がいなければ助かることはなかっただろう」

「スティーブ様はわたしにはとっても冷たい人でした。だけど他の人にはとても優しい人でした。わたしのことがとても嫌いだったのだと思います。子供の頃から嫌われていましたから」

「セレン、確かにスティーブ殿も大概だがお前のその頑な性格も大概だと思うぞ」

「こんな性格になったのはスティーブ様とわたしのお父様のせいですよ!他の人の前ではわたしはもっとおおらかで優しいんですよ!」 


 つい魔導士様に八つ当たりしてしまった。






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