上 下
14 / 55

結婚してわかったこと。

しおりを挟む
 結婚してわかったこと。



『お義母様はどこかおかしい』



 
 今までは公爵夫人になるために教えていただくために接してきた。

 だけど……最近感じる違和感。

 それは、言っていることが毎回違う。微妙に違ったりあからさまに違ったり、悪意を感じたり。

 まず、思い出したのは……

『主人はね、とても可愛がっていた10歳年下の従妹がいたの。その従妹が病気で亡くなったの……セレン、貴女はあまりにも似ていたの……ごめんなさいね、主人は貴女をレテーシアに重ねているの。
 だからどうしても貴女を自分の娘にと求めてしまっているの』

 と言っていたけど、レテーシア様は死んでいなかった。それに10歳年下ではなくて3歳年下で、……お義父様と不倫していた。

 ーーうん、これはかなり驚いた。

 ただ、わたしは確かに幼い頃の顔立ちがレテーシア様と似ていたらしい。これ大事。



 そしてエディ様と昔話をしていて聞いた話。


 イザベラ様に『たかが伯爵家のくせに生意気なのよ』と言われていたことはエディ様もお義母様も知っていた。
 それにわたしはイザベラ様に関わらないように避けていたのに、イザベラ様が態とわたしに会いに来て馬鹿にしたように笑ったりしていたのも気づいていた。
 だからエデ様は出来るだけ一人になったわたしのそばにいるようにして助けていたと言われた。

 え?おかしくない?

 だってわたしはお義母様に聞いたもの。

『ごめんなさい。イザベラはわたしの親友の子供なの。だから娘のように可愛がっていてよく屋敷に来るの。だけど勘違いしないでね。スティーブが結婚するのはセレンよ?イザベラでは我が公爵家の女主人にはなれないわ』

『そんなことはないと思いますけど……とても意思が強いお方だしスティーブ様にはピッタリだと思います……けど?』

『ふふ、何を言っているの?イザベラは大人しくてとても弱々しい子なの。あんなに気が弱かったらとてもじゃないけどこの貴族社会ではやっていけないわ』

『はあ、ソウデスカ………』

 そう、確かにそう言っていた。
 自慢じゃないけど一語一句覚えている。このことは。だってあまりにも驚いて唖然としたから。

 そして、この話初耳。
 
『それにね、向こうの伯爵はスティーブがセレンを好きな事わかってくれているわ、だからね、まずスティーブが変わりなさい』

 スティーブ様にお義母様が言ったらしい。
 わたしのお父様はスティーブ様がわたしを好きだと思っている?
 なんて訳のわからない嘘をつくの!

 だから婚約がなかなか解消できなかったのかもしれないわ!お父様ったらどうして嘘を素直に信じているのよ!

 この屋敷にわたしの味方は……エディ様だけ?

 いや、わからない。エディ様も敵?

 とにかくわたしはお義母様の前ではニコニコと笑顔でいい『嫁』でいることにした。

 結婚しないとわからなかった。

 この家族の歪んだ世界。

 お義母様が全ての権限を握っていると言ってもおかしくなかった。
 お義父様はとても優しい。だけどお家母様とは政略結婚で愛がなかった。二人の子供が生まれると愛する従妹に夢中。
 それに自分が不倫していたからお母様に対して強く出られなかった。
 二人のことはお義母様が全権利を握っていた。

 公爵夫人として優雅に微笑むその姿は淑女としてみんなに尊敬され憧れられ社交会の華と言われていた。

 だけど心はお義父様の不倫で壊れかけていた。

 わたしに優しく微笑み優しく話しかけていたのはこの屋敷に嫁がせるため。
 何度婚約解消をお父様が申し込んでも丸め込まれて帰ってきたのはお義母様がお父様を上手にあしらっていたから。

 二人の息子はお義母様の歪みに気づいているのかしら?ずっと一緒にいると、わからないのかもしれない。




「イザベラ、いらっしゃい。スティーブ、イザベラが来たわよ」

 わたしの目の前でイザベラ様を溺愛するお義母様。

 今日はスティーブ様と三人で仲良くお茶をする姿を笑顔で見せつけたいようだ。

 スティーブ様は流石に「母上、僕は忙しいので遠慮します」と断っていた。

「あら?どうしたの?今日はお仕事はお休みだと言っていたじゃない?せっかくイザベラが来たのだからいいでしょう?」
 こてんと首を横にして可愛く微笑むお義母様。

「おば様、スティーブったら照れているのよ」

 この二人、わたしに見せつけるために近くで話している。

「セレンは確か今から執事と話をしないといけないと言ってたわよね?」
 お義母様はそう言うと、クスリと笑った。

 ーーえ?わたし別に三人の仲に入りたいなんて思っていないし惨めだと感じていないのだけど。

 お義母様とイザベラ様は馬鹿にしたように笑い、スティーブ様は顔を顰めたまま黙っていた。

「わたしは執事とこれからの公爵家の予算のことでお話を聞くことになっていますので、皆様でごゆっくりお愉しみください。では失礼致します」

 スティーブ様の顔なんて全く見ることもしないで、イザベラ様に優雅に微笑んだ。

 そしてお辞儀をするとさっさとその場を立ち去った。

わたしとスティーブ様の離縁、思ったより早いかも!

やったあ!






 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたと別れて、この子を生みました

キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。 クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。 自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。 この子は私一人で生んだ私一人の子だと。 ジュリアとクリスの過去に何があったのか。 子は鎹となり得るのか。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 ⚠️ご注意⚠️ 作者は元サヤハピエン主義です。 え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。 誤字脱字、最初に謝っておきます。 申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。

あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。 願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。 王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。 わあああぁ  人々の歓声が上がる。そして王は言った。 「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」 誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。 「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」 彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。

後悔だけでしたらどうぞご自由に

風見ゆうみ
恋愛
女好きで有名な国王、アバホカ陛下を婚約者に持つ私、リーシャは陛下から隣国の若き公爵の婚約者の女性と関係をもってしまったと聞かされます。 それだけでなく陛下は私に向かって、その公爵の元に嫁にいけと言いはなったのです。 本来ならば、私がやらなくても良い仕事を寝る間も惜しんで頑張ってきたというのにこの仕打ち。 悔しくてしょうがありませんでしたが、陛下から婚約破棄してもらえるというメリットもあり、隣国の公爵に嫁ぐ事になった私でしたが、公爵家の使用人からは温かく迎えられ、公爵閣下も冷酷というのは噂だけ? 帰ってこいという陛下だけでも面倒ですのに、私や兄を捨てた家族までもが絡んできて…。 ※R15は保険です。 ※小説家になろうさんでも公開しています。 ※名前にちょっと遊び心をくわえています。気になる方はお控え下さい。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風、もしくはオリジナルです。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字、見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

処理中です...