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どうすれば。
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イザベラはセレンがいなくなってから大人しくなった。
だから彼女に何も言えないでいた。
特に変わることなく僕の家に遊びにきて話をしたりエディを交えてカードゲームをしたりして過ごした。
同じ年なので王立学院に通っているが、僕は友人のルークとテオドールと一緒にいることが多かったしイザベラといつもいたわけではない。
ただ幼馴染の気軽さでセレンに優しくなれるようにと思いイザベラにも優しくした。
セレンならこうすれば喜ぶかも、セレンにこうしてあげたい。そんな気持ちでイザベラに接していた。
それが間違いだと気がついたのは、セレンが王都に戻ってきてからだ。
セレンがうちにやって来ると耳にしたイザベラが
「3年間もスティーブを放っておきながらよくも平然と顔を出せたものね」
と言った時、セレンに対して酷い態度をとっていた時のイザベラを思い出した。
「イザベラ、セレンは僕の大切な婚約者だ。彼女に対しての態度は改めて欲しい。君は僕の幼馴染だけど、だからと言ってセレンに酷いことを言う権利はない」
「どうして?セレン様がいない間わたしはそばにいたわ。そばにいる許可を貴方がくれたんじゃないの?」
「え?違うよ。君は昔から遊びに来ていた。それは親との関係だろう?」
「違うわ。貴方がわたしを受け入れたのよ?だってあんなに冷たいスティーブが優しくなったのはわたしを好きだからでしょう?」
「は?違う。母上に女の子には優しくしないといずれセレンに嫌われるからと言われたんだ。
セレンが帰ってきた時に僕はセレンを大切にしたい。だから周りにいる女の子にも優しくすることで変わろうとしただけなんだ」
「嘘よ嘘!スティーブ様はわたしを好きなはず!」
「僕が好きなのはセレンだ。僕の初恋で何があっても大切にしたい女の子なんだ」
イザベラは怒り出して部屋のものを投げたりして暴れ始めた。
「セレン様をもし大切にしたら、あの子に何をするかわからないわ。覚えておいて。絶対に許さないわ」
「君がセレンに何をすると言うんだ?セレンは僕の大切な婚約者だ!君と婚約することもないし君を好きになることもない!」
「許さない、絶対許さない。セレンを大切にしたらセレンを殺してやるわ」
「ふざけるな!僕の家は公爵家だ。君の侯爵家より上なんだ。父上達に言ってとめてもらう」
「ふん!子供の戯言を本気で受け止めてくれるかしら?わたしは親の前ではとても大人しくていい子なの。そんなことスティーブが言っても誰も信じないわ」
「…………セレンに何もするな。手を出すな。でもどんなに脅されてもセレンとの婚約は解消されないし君を好きになることもない。軽蔑するだけだ。それでもいいの?」
「好きになってもらえないならセレンもスティーブも辛い思いをしたらいいのよ。わたしだけ辛くて悲しいなんて絶対に嫌!みんな不幸になればいいのよ!」
セレンに会ってどう話したらいいかわからず無口になっていた。
セレンを迎えに行きたくて入学式に行くと先に行ってしまっていた。
ーーよかった。まだセレンに優しくする前で。
僕は間違えた。セレンにだけ優しくすればよかったのに、他の子をセレンの代わりに優しくしてしまった。
イザベラは蛇のように僕に絡みついて離れようとしない。
そしてーーーー食堂でのセレンを見てーーー
我慢できなくて。……セレンが他の男子と仲良くしているのが。
セレンを連れて空き教室に入った。
「僕は………」
セレンの腕を離すと、思いっきり壁をドンっと叩いた。
「くそっ」
セレンが泣きそうな顔をして僕を睨んでいる。
イザベラのことを言う?言えるわけが無い。
どうしたらいい?
セレンと婚約を解消して……イザベラと?
嫌だ。
僕は狡い。
好きなのはセレン。
大きく深呼吸した。
そして大きく息を吐いた。ーーため息にしか思われないよな。
「セレン、君は僕の婚約者なんだ。だけど、そのことは学院の殆どの人が知らない。これからはあまり声をかけないでくれ」
「だったらこんな風にみんなの前で腕を掴まないで」
「これは……いいんだ。君が生意気だから説教したことにする」
「ふっ、やっぱり全てわたしが悪いんだ?」
セレンは「もうどうでもいいや」と小さく呟いた。
ーー僕はセレンから好かれることはもう無い。
自分が選んだことなのに。
だから彼女に何も言えないでいた。
特に変わることなく僕の家に遊びにきて話をしたりエディを交えてカードゲームをしたりして過ごした。
同じ年なので王立学院に通っているが、僕は友人のルークとテオドールと一緒にいることが多かったしイザベラといつもいたわけではない。
ただ幼馴染の気軽さでセレンに優しくなれるようにと思いイザベラにも優しくした。
セレンならこうすれば喜ぶかも、セレンにこうしてあげたい。そんな気持ちでイザベラに接していた。
それが間違いだと気がついたのは、セレンが王都に戻ってきてからだ。
セレンがうちにやって来ると耳にしたイザベラが
「3年間もスティーブを放っておきながらよくも平然と顔を出せたものね」
と言った時、セレンに対して酷い態度をとっていた時のイザベラを思い出した。
「イザベラ、セレンは僕の大切な婚約者だ。彼女に対しての態度は改めて欲しい。君は僕の幼馴染だけど、だからと言ってセレンに酷いことを言う権利はない」
「どうして?セレン様がいない間わたしはそばにいたわ。そばにいる許可を貴方がくれたんじゃないの?」
「え?違うよ。君は昔から遊びに来ていた。それは親との関係だろう?」
「違うわ。貴方がわたしを受け入れたのよ?だってあんなに冷たいスティーブが優しくなったのはわたしを好きだからでしょう?」
「は?違う。母上に女の子には優しくしないといずれセレンに嫌われるからと言われたんだ。
セレンが帰ってきた時に僕はセレンを大切にしたい。だから周りにいる女の子にも優しくすることで変わろうとしただけなんだ」
「嘘よ嘘!スティーブ様はわたしを好きなはず!」
「僕が好きなのはセレンだ。僕の初恋で何があっても大切にしたい女の子なんだ」
イザベラは怒り出して部屋のものを投げたりして暴れ始めた。
「セレン様をもし大切にしたら、あの子に何をするかわからないわ。覚えておいて。絶対に許さないわ」
「君がセレンに何をすると言うんだ?セレンは僕の大切な婚約者だ!君と婚約することもないし君を好きになることもない!」
「許さない、絶対許さない。セレンを大切にしたらセレンを殺してやるわ」
「ふざけるな!僕の家は公爵家だ。君の侯爵家より上なんだ。父上達に言ってとめてもらう」
「ふん!子供の戯言を本気で受け止めてくれるかしら?わたしは親の前ではとても大人しくていい子なの。そんなことスティーブが言っても誰も信じないわ」
「…………セレンに何もするな。手を出すな。でもどんなに脅されてもセレンとの婚約は解消されないし君を好きになることもない。軽蔑するだけだ。それでもいいの?」
「好きになってもらえないならセレンもスティーブも辛い思いをしたらいいのよ。わたしだけ辛くて悲しいなんて絶対に嫌!みんな不幸になればいいのよ!」
セレンに会ってどう話したらいいかわからず無口になっていた。
セレンを迎えに行きたくて入学式に行くと先に行ってしまっていた。
ーーよかった。まだセレンに優しくする前で。
僕は間違えた。セレンにだけ優しくすればよかったのに、他の子をセレンの代わりに優しくしてしまった。
イザベラは蛇のように僕に絡みついて離れようとしない。
そしてーーーー食堂でのセレンを見てーーー
我慢できなくて。……セレンが他の男子と仲良くしているのが。
セレンを連れて空き教室に入った。
「僕は………」
セレンの腕を離すと、思いっきり壁をドンっと叩いた。
「くそっ」
セレンが泣きそうな顔をして僕を睨んでいる。
イザベラのことを言う?言えるわけが無い。
どうしたらいい?
セレンと婚約を解消して……イザベラと?
嫌だ。
僕は狡い。
好きなのはセレン。
大きく深呼吸した。
そして大きく息を吐いた。ーーため息にしか思われないよな。
「セレン、君は僕の婚約者なんだ。だけど、そのことは学院の殆どの人が知らない。これからはあまり声をかけないでくれ」
「だったらこんな風にみんなの前で腕を掴まないで」
「これは……いいんだ。君が生意気だから説教したことにする」
「ふっ、やっぱり全てわたしが悪いんだ?」
セレンは「もうどうでもいいや」と小さく呟いた。
ーー僕はセレンから好かれることはもう無い。
自分が選んだことなのに。
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