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出て行け!
なんなんだよ!
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「ったく、どこで寝ろって言うんだ!」
扉が開くのをしばらく待った。
突然俺の匂いを嗅いで浮気……浮気は……してねぇ。
うん、あれは、浮気じゃない。
頼まれたんだ。
夜が怖いから一晩一緒にいて欲しいと。
「ハア~、仕方ねぇなぁ」
トボトボと詰所へ向かう。
ここから歩いて30分ほど歩くしかない。
「あらぁ?どうしたの?」
近所の未婚の母のマリーが俺の顔を見てピンときたみたいだ。
「奥さんに追い出されたの?あんた、いい加減にしときな」
「うるせぇ」
「ふうん、うちにおいでよ。あたしも一人寝は寂しいんだ。たまには男の体にくるまって寝たいしさ」
「しっしっ!あっち行け!」
「もう愛想尽かされたんでしょ?」
「んなわけねぇだろ。うちの嫁は俺のことを愛してるんだ」
そうさ、いつも「仕方ないな」って許してくれる。
今日だって、本当は夜勤だったけど、どうしても怖いと言われ仕方なく泊まってやっただけ。
まだ2歳の子供がいて、どうしようもなく寂しい時があると言って泣くんだ。それに……
だから話し相手になった……
まぁ、ちょっと、いい感じの空気になってもう少しで抱いてしまいそうになったけど……ちゃんと堪えた……キスはしたし、おっぱいも少し触ってしまったが、そこはご愛嬌だ。
平民が王宮の騎士になるのは大変名誉なことだ。
俺はひたすら頑張った。
今の妻を娶るためにはそれが条件だった。
あいつは今平民の住む家に暮らしてるけど、本当は子爵令嬢でそこそこの金持ちだ。妻と恋愛をするのはそんなに難しいことではなかった。恋人ならよかった。
でも結婚となるとものすごく反対された。平民が貴族令嬢と結婚するのは並大抵のことではできない。
『君が王宮騎士になれれば結婚も許そう』
絶対なれないとわかっていてそんな条件を出した義父。
だけど俺は頑張った。人が嫌がる戦地にも行って戦った。
何度死戦をくぐり抜けたことか。
そしてその頑張りが王宮騎士になることに繋がった。
戦地にたまたま視察できていた第三王子が敵に狙われるところを偶然守った褒章だった。
そしてなんとか妻を娶ることができた。
それからの俺は平民と馬鹿にされながらも必死で王宮騎士として働いている。
それなのに……くそっ!!
何が出て行けだ!
俺はそれなりに稼いでいるんだ。その金を困った人のために使って何が悪い。
困った人に頼まれて家の修繕をしたり、子供達が父親がいないからと一緒に遊んで欲しいと頼まれたりして、遊んでやってるだけだ。
そう、たまたま声をかけてくるのが年寄りと母子家庭が多いだけ。
男手が足りないから仕方がないだろう。
今夜だって、前の旦那が押しかけてくるから怖いと言ってそばにいて欲しいと頼まれたんだ。
少しくらい俺の言い訳を聞いてくれてもいいだろう。
「お疲れ!」
詰所に行くと同期のドゥールがニヤッと笑った。
「嫁に追い出されたのか?」
「ああ、ちょっと、奥で眠る」
「可哀想にな」
「ほんと散々だ」
「違うよ!お前の嫁だ!お前みたいな男と結婚して。本当なら使用人達になんでもしてもらって高級な服を着て毎日美味しいお茶でも飲みながら微笑んで過ごしているはずなのに」
「俺はそれなりに稼いでる」
「ああ、俺は嫁のために使用人も雇ってやってるしそこそこ贅沢はさせてるぞ」
「ドゥールは男爵家の子息だからな」
「だが給金は同じだろう?なのにお前はその辺の女につぎ込んでる」
「違う!困った人を助けているんだ」
「で、嫁に追い出された?馬鹿じゃないのか?」
「仕方ないだろう。困ってる人を見ると放っておけない。俺もずっと苦労してきたんだ」
「へぇじゃあ嫁と離婚してやるんだな。嫁が可哀想すぎる」
………ざけんな!
俺は心の中でそう叫んだのに、ドゥールには言い返せなかった。
「………寝る!」
扉が開くのをしばらく待った。
突然俺の匂いを嗅いで浮気……浮気は……してねぇ。
うん、あれは、浮気じゃない。
頼まれたんだ。
夜が怖いから一晩一緒にいて欲しいと。
「ハア~、仕方ねぇなぁ」
トボトボと詰所へ向かう。
ここから歩いて30分ほど歩くしかない。
「あらぁ?どうしたの?」
近所の未婚の母のマリーが俺の顔を見てピンときたみたいだ。
「奥さんに追い出されたの?あんた、いい加減にしときな」
「うるせぇ」
「ふうん、うちにおいでよ。あたしも一人寝は寂しいんだ。たまには男の体にくるまって寝たいしさ」
「しっしっ!あっち行け!」
「もう愛想尽かされたんでしょ?」
「んなわけねぇだろ。うちの嫁は俺のことを愛してるんだ」
そうさ、いつも「仕方ないな」って許してくれる。
今日だって、本当は夜勤だったけど、どうしても怖いと言われ仕方なく泊まってやっただけ。
まだ2歳の子供がいて、どうしようもなく寂しい時があると言って泣くんだ。それに……
だから話し相手になった……
まぁ、ちょっと、いい感じの空気になってもう少しで抱いてしまいそうになったけど……ちゃんと堪えた……キスはしたし、おっぱいも少し触ってしまったが、そこはご愛嬌だ。
平民が王宮の騎士になるのは大変名誉なことだ。
俺はひたすら頑張った。
今の妻を娶るためにはそれが条件だった。
あいつは今平民の住む家に暮らしてるけど、本当は子爵令嬢でそこそこの金持ちだ。妻と恋愛をするのはそんなに難しいことではなかった。恋人ならよかった。
でも結婚となるとものすごく反対された。平民が貴族令嬢と結婚するのは並大抵のことではできない。
『君が王宮騎士になれれば結婚も許そう』
絶対なれないとわかっていてそんな条件を出した義父。
だけど俺は頑張った。人が嫌がる戦地にも行って戦った。
何度死戦をくぐり抜けたことか。
そしてその頑張りが王宮騎士になることに繋がった。
戦地にたまたま視察できていた第三王子が敵に狙われるところを偶然守った褒章だった。
そしてなんとか妻を娶ることができた。
それからの俺は平民と馬鹿にされながらも必死で王宮騎士として働いている。
それなのに……くそっ!!
何が出て行けだ!
俺はそれなりに稼いでいるんだ。その金を困った人のために使って何が悪い。
困った人に頼まれて家の修繕をしたり、子供達が父親がいないからと一緒に遊んで欲しいと頼まれたりして、遊んでやってるだけだ。
そう、たまたま声をかけてくるのが年寄りと母子家庭が多いだけ。
男手が足りないから仕方がないだろう。
今夜だって、前の旦那が押しかけてくるから怖いと言ってそばにいて欲しいと頼まれたんだ。
少しくらい俺の言い訳を聞いてくれてもいいだろう。
「お疲れ!」
詰所に行くと同期のドゥールがニヤッと笑った。
「嫁に追い出されたのか?」
「ああ、ちょっと、奥で眠る」
「可哀想にな」
「ほんと散々だ」
「違うよ!お前の嫁だ!お前みたいな男と結婚して。本当なら使用人達になんでもしてもらって高級な服を着て毎日美味しいお茶でも飲みながら微笑んで過ごしているはずなのに」
「俺はそれなりに稼いでる」
「ああ、俺は嫁のために使用人も雇ってやってるしそこそこ贅沢はさせてるぞ」
「ドゥールは男爵家の子息だからな」
「だが給金は同じだろう?なのにお前はその辺の女につぎ込んでる」
「違う!困った人を助けているんだ」
「で、嫁に追い出された?馬鹿じゃないのか?」
「仕方ないだろう。困ってる人を見ると放っておけない。俺もずっと苦労してきたんだ」
「へぇじゃあ嫁と離婚してやるんだな。嫁が可哀想すぎる」
………ざけんな!
俺は心の中でそう叫んだのに、ドゥールには言い返せなかった。
「………寝る!」
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